
美味しいけど見た目は気持ち悪いものってあるよね。例を挙げるとナマコ、エスカルゴ、青カビチーズ、ホルモンなどなど。
──今回ご紹介する『ホテイウオ』、通称『ゴッコ』もそのひとつ。初めて食べた人を讃えたくなっちゃうタイプの外見を持つ、北海道の怪魚だ。
先日魚屋さんで丸ごと売っているのを発見したので、さばいてゴッコ鍋を作ろうとしてみたところ……とある工程で、子供のころに遊んだ絶叫系パーティゲームを思い出すことになってしまった!
・北海道の怪魚『ゴッコ』
こちらが『ゴッコ』。冬が旬の魚で、北海道や青森など 主に北の地域で食べられる魚である。
筆者が訪れた魚屋ではオスのゴッコを税込580円で売っていたが、メスであれば倍ほどするらしい。
まずはじっくり観察してみる。申し訳ないが、筆者にとっての第一印象は「ブルブルして気持ち悪い!」というもの。
ぬめりが強い粘膜をまとっていて、皮の質感は魚というよりもオオサンショウウオみたい。
口の中には細かく鋭い歯が並んでいる。
腹側にはリクガメの手足みたいな模様の吸盤があり、潮に流されないよう岩場に貼りついて過ごしているらしい。
ヒレは透明感があってプルプルとしたゼラチン質。
ヌルヌルするからうまく掴めないのだが、全体的に手でブチッと簡単にちぎれそうなぐらいに柔らかい。どうやって厳しい自然界で生きているのか不思議になるような魚である。
見慣れてくると、愛嬌のある間抜け面が可愛い気もしてきた。……が、とてもじゃないけど美味しそうには見えないなぁ。
・ゴッコをさばいてみよう!
まずは皮のぬめりを取り除く。お湯に入れると粘膜が白くなって剥がれるので、冷たい水で洗い流そう。
キッチンペーパーで水を拭き取る……と、大変なことに気が付いた。
火が通った皮が縮み、先ほどまでブルブルと柔らかかったゴッコの体は、パンパンに空気を入れたゴム毬のように膨れ上がっていたのである!
あんなに愛嬌のある顔だったのに、まるまると太った鯉をホルマリン漬けにしたようじゃないか。
人相……いや、魚相変わり過ぎだろ。
気を取り直し、硬くて食べられない口を切り落とす。
弾力のある皮は「ブリン!」という感覚と共に切れた。断面はR指定が付きそうなほどにグロテスクだったので、とても正面からお見せすることはできない。
続いて吸盤を切り落とす。パンパンに膨らんだ腹に包丁を入れた瞬間、勢いよくなにかが飛び出してきた。
どうやら浮袋らしいのだが、驚いた筆者の思考は急スピードでゴッコから離れ、子供のころに遊んだとあるゲームを思い出していた。
パーティゲームの一種であるそれは、針が付いた装置に風船をセットし、徐々に膨らんでいく風船を次の人に渡していくというもの。風船が割れた時に持っている人が負けだ。
筆者は当時からすでに大変なビビリだったので、自分のところで割れるかどうかよりも、いつ割れるかわからない風船がとにかく怖かった。幼い筆者の恐怖心は風船と共にムクムクと膨らみ、いつも破裂の瞬間を直視することができなかった。
──ゴッコの腹は、まさに風船が割れたような状況だった。次々と飛び出してきた内臓に「ハワァァァ~~~!」と情けない叫び声をあげ、震える手で肝をキャッチした。
なるほど。いざ手に取ってみると、肝はテラテラと大きくとても美味しそうだ。急に冬を実感した瞬間である。
続けてエラを切りとり、水洗いして血合いをとったゴッコをそのままぶつ切りにする。
さらに湯引きをすれば……下ごしらえの完成!
初めてなので絶叫することになってしまったが、3枚におろさず骨ごとぶつ切りにするだけでOKと考えると一般的な魚よりも簡単にさばけるのかもしれない。
また今回のゴッコはオスだったが、メスの場合は大きな卵を抱えているのだそう。
せっかくの卵が噴き出てしまってはもったいないので、先にお腹を開いて内臓を取り出した後、お湯につけてぬめりを取るパターンもあるんですって。
・ヘルシーで旨いゴッコ鍋
下ごしらえしたゴッコは、醤油やみりんがベースの鍋にして食べてみた。
口に入れた瞬間からプリプリ、チュルチュルとしたぶ厚い皮が旨い。例えるならば豚足のような食感だが、肉とはちがって脂っこさは一切なくアッサリとしたお味だ。
その証拠に、食べ終わった後のスープにはほとんど脂が浮いていない。
皮以外の身の部分ももちろん美味しい。ゼラチン質っぽさもありながらも非常に柔らかく、ホロホロとした食感だ。
肝や白子も臭みがなくクリーミー。北海道の冬の味覚として親しまれているだけあって、食事中はかすかに残っていた恐怖心も、食べ終わる頃になると「美味しい」の感情に塗りつぶされていたほどだ。
だけど……もしも再びさばく機会に恵まれたなら、今度は先に内臓を取り出しておこうかな。
執筆:高木はるか
Photo:RocketNews24.
高木はるか




















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