皆さんは「ホヤ」を見たことがあるだろうか?

おおよそ地球上の生き物とは思えない、まるでエイリアンのような見た目をしているのだが……実は東北を中心に食べられているごく普通の食材。しかも結構美味しいらしい!

偶然にもスーパーで売られているのを発見したので、イチから捌いて食べてみようじゃないか!

・はじめに

まずお断りしておくが、今回の記事にはたくさんのホヤの写真を載せている。

正直に言うと、ホヤのルックスは気持ち悪い。もちろんホヤが大好物という人はたくさんいると思うし、そういう人にとって今回の記事は「美味しそう!」という感想になるはずだ。

しかし初めてホヤを見る方にとってはグロテスクとしか言いようのないシーンが多々あるだろう。筆者自身 捌きながら何度「ギャーーーー!」と絶叫したかわからない。家族からは「そんなに怖いならなんで買ったの?」と聞かれたぐらいだ。


そのためこの先はグロ耐性がある、もしくは心の準備をしている読者のみが読み進めてもらえると幸いだ。


・魚でも貝でもない謎の生き物

こちらがホヤ。


素人目には生きているのか死んでいるのかすらわからないが、立派な海の生き物だ。Wikipediaによると “尾索動物亜門(びさくどうぶつあもん)ホヤ綱(こう)に属する海産動物の総称” ということで、魚でも貝でもないらしい。

まるで海藻みたいに岩に根を張って暮らしているが、プランクトンを餌として食べ、卵で増えるのだそうだ。うーん、謎過ぎる……。


頭のてっぺんには入水孔と出水孔と呼ばれる口を持っている。


実は今まで何度かスーパーで見かけたことがあったが、買っていなかった。理由はただひとつ。

ズバリ、気持ち悪いからだ。


しかし筆者もライターの端くれ。もっと未体験に飛び込む姿勢を持つべきだ。好奇心を失った時、それすなわち廃業。そう言い聞かせて初挑戦するに至った。

あと、味は美味しいって聞いたからね。

ちなみにお値段は税込162円だった。こんなに大きいのに拍子抜けするぐらい安い。


・大絶叫の解体作業

ということで、まずはホヤと触れ合ってみよう。勇気を出して手に持ってみると、

ブニブニしている!?


いや違う。表面の皮は硬く、中身に柔らかいものが入っているのだ。ちょうど果物のライチのような触り心地かもしれない。

……そう感じると急に気持ちが落ち着いたような気がした。なるほどライチか。ライチなら怖くないや。


平常心に戻ったところでさっそく捌いていこう。

まずは根元を切り落とし、中の液体をボウルで受け止めるらしい。

「包丁を突き刺した時に動いたらどうしよう?」と心配していたが、幸い既にホヤは息絶えていたようだ。大人しく刺されてくれた。


ところが、事件は直後に起こった。

「ビュワッ! ビュビューッ!!」


包丁を抜いた場所から勢いよく液体が噴き出してきたのだ。あろうことか、液は撮影用のカメラと……筆者の目に直撃した。


うわぁっァァアアア~~!!!!

少なくともここ数カ月の間で一番情けない悲鳴をあげていたはずだ。よりによって顔。それも、目とは。

一瞬「たかがメインカメラをやられただけだ!」という言葉が頭をよぎったが、ショックのあまり口に出すことができなかった。もしかしたらホヤの最後の抵抗を受けたのかもしれない。


顔を拭いて、続けよう。相変わらずホヤからは液体があふれ出続けていたが、


なんとか根元を切り離すに至った。

パッションフルーツの輪切りみたいだ。


ここまで来ればあとは簡単。縦に半分に切って、


皮を剥がす。

皮の形にデコボコした身が出てきた。


ワタを切り取って、


ホヤから出てきた液で洗い、

(あまり言いたくない表現だが、体液で身を洗うなんて。まるで血で血を洗うような作業じゃないか?)


キッチンペーパーで拭き取れば……


か、完成だぁ~~~~!


と、ここでふと衝撃的な事実に気が付いてしまった。

ホヤの可食部、小さすぎないか?

捌く前は片手いっぱいのサイズがあったのに、中身は手の先にチョコンと乗るほどの身が2枚だけ。


あんなに頑張ったのに、たったこれだけしか食べられないのか……。

人間のエゴだとわかっていても寂しくなってしまった。次回食べる機会があるならば、少なくとも3つ以上は買った方が良いだろう。


・ホヤは海の味!?

それではいよいよ食べてみよう! 刺身OKのホヤだったので、そのまま生でいただくことにした。


醤油につけて、


おそるおそる口に運ぶ。


お味はどうだ……?


……ん、あれ?


思っていたよりもずっと美味しい!


苦み・塩っけ・甘み、旨みが感じられ、例えるならば「マイルドな海」といった味がする。貝にも似ている柔らか&ポリポリとした食感は初めて体験するものだ。

珍味の域は出ないような気もするが、十分美味しい食べ物として楽しめる。好んで食べられていることがよくわかる美味しさであった。

なお後ほど調べたところ、新鮮なホヤであれば磯臭さがないということ。臭さは感じなかったと思うが、東北からは遠く離れたスーパーで購入している。ひょっとすると今回のホヤが新鮮でなかった可能性はあるだろう。

もっと新鮮ならば、一体どれぐらい美味しいんだろうか? いつか東北で本場のホヤを食べるのが楽しみになってきた。

執筆:高木はるか
Photo:RocketNews24.
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