私事で恐縮だが、筆者は優柔不断である。優柔不断な人間が日常的に困るのは食事の選択だ。何を食べよう。あれもいいし、これもいい。どうしよう。そんな迷路に頻繁に迷い込む。Uber Eatsを前に小一時間頭を抱え、そのうち空腹も収まって虚無に陥るようなことがままある。
が、ここで朗報である。2023年1月16日、筆者を含む食事選択弱者を支援する画期的な商品が、あのドミノピザから発売された。その名も「バーガーピザ」。名前の通り、ハンバーガーとピザが融合したものらしい。つまりこの商品一つで、両方を一挙に堪能できるというのだ。
優柔不断かつジャンクフード好きな筆者は、かつて実際に「ハンバーガーも食べたいしピザも食べたい」という岐路に立ったことがある。いずれを切り捨てたかはもはや定かでないが、あの時確かに流した涙を、今こうしてすくい取ることのできる存在が現れたと思うと感慨深い。
一方で、急に「バーガーピザ」と言われても斬新すぎて想像し辛い。ドミノピザは「バーガーとピザの美味しさを合わせた新常識の商品」と謳っている。筆者と同じく優柔不断かつジャンクフード好きの人間が考案した可能性が高いが、本当にそんな離れ業を実現できたのか。
真相を確かめるべく注文を試みたところ、「バーガーピザ」には「ビッグダックバーガー」「ドミ “ノス” バーガー」「チェダーベーコンバーガー」「D‘s(ディーズ)絶品チーズバーガー」の4種類の味が用意されていた。
このうち「ビッグダックバーガー」について1人用のセットメニューが販売されていたため、今回はそれを頂くことにした。直径18cmのパーソナルサイズのピザに、サイドメニュー2品とコカ・コーラ500mlが付属しているものだ。価格は1770円だった。
そして届いた実物は、見た目だけで言えば、普通のピザと全く変わらなかった。2枚のピザ生地で具材を上下から挟んだような料理が登場したら泣きべそをかいていたが、さすがにそこまで無秩序なことは起こらなかった。
バーガーの名を冠するとはいえ、あくまでピザの体裁は守られている。仕掛けがあるとしたら、つまり味の方だ。いかなるマジックが潜んでいるやら。そんな心持ちでかぶりついてみると、口内で炸裂したそのマジックは、筆者の脳を震わせた。
チーズバーガーだ。口の中に、チーズバーガーがいる。某大手チェーンの、いやもう間を置かず白状してしまうとマクドナルドの、チーズバーガーの味わいなのである。間違えようもない。なにせ多くの人がそうであるように、筆者もあの店のチーズバーガーには親しんでいる。
ワイルドで大味なビーフパティ、べたつくほど濃厚なチェダーチーズ、ピクルスの酸味が絡んだバーガーソース。なるほど、よく観察してみれば、見慣れたメンツが場所を変えただけで勢揃いしている。無論そっくりそのままではないが、極めて高い再現度だ。
目の前にあるのはピザなのに、明確にチーズバーガーを感じている。認知が沸き立っているのがわかる。頭がおかしくなりそうだ。普段ピザを食べている時は脳の働きがほぼ停止しているだけに余計だ。しかし美味しい。美味しいのである。
チーズバーガーの味がするならチーズバーガーを食べればいいではないかと言われそうだが、そうではない。このピザとそれの間には大きな差異があって、何かと言えば食感、つまり生地である。
カリッと焼き上がっていながら柔らかな弾力、加えて豊かな香ばしさを含んだピザ生地とチーズバーガーの味がマッチングした時、その化学反応は独特の魅力を創り出す。これが何ともクセになる。手が止まらなくなる。
まさしくピザとバーガーの両方を食べているような、あるいはその相互作用から生まれた「どちらでもない新しい何か」を食べているような。いずれにせよ料理として高い次元に達しているのは間違いなく、この商品にしかない価値は十二分に認められる。
これ以上文章をこね回すより、実際に食べてもらった方が早いだろう。当記事の役割は所詮橋渡しだ。興味の湧いた方は、ぜひ「バーガーピザ」という世紀の発明にアクセスしてみてほしい。新感覚が味わえるはずだし、あなたの日常のどこかにハマる新たなピースとなるはずだ。
筆者も少なくとも当分は、この魅力に取りつかれたままだろう。しかしこのピザばかり食べていては何かとまずい。ああどうしよう。優柔不断な人間はこれだから。いや、筆者は悪くない。結局のところ、魅力的なものが多い世の中が悪いのだ。
参考リンク:ドミノピザ 公式HP、PRTIMES
執筆:西本大紀
Photo:Rocketnews24.
[ この記事の英語版はこちら / Read in English ]