なんでも今、地球にZTF彗星(C/2022 E3)が5万年ぶりに接近してきているらしい。5万年前といえば旧石器時代。日本列島にはまだホモサピエンスすらいないほど昔。

今を逃せば、次に見られるのは5万年後……と思いきや、今後は2度と帰ってこないと考えられているもよう。一期一会が極まっている。これは是非とも1枚くらい記念撮影しておきたい。

でもなぁ。この手のって、世のメディアどもは見える見えると騒ぐけれど、実際にはクソほども見えないのがザラじゃないっすか? 私は今回もそのパターンだと思っていました。今朝、近所のショッピングモールの駐輪場で見るまでは

・いつも難易度高い

〇〇彗星接近! みんなで見よう!! みたいな報道は定期的に世を賑わせ、SNSではなんかスゴい映えてる彗星の写真がバズったりする。

それを見て「へぇ、じゃあいっちょ見てみるか!」「年1で使うかどうかな一眼カメラも引っ張り出しちゃうぞ!!」みたいなノリで外に出て夜空を見渡すも、見えるのは精々が月とかオリオン座くらい。

じゃあメディアとかSNSの写真は何なんだ? と調べると、メディアのは天文台だかの専門機関から供与された画像。

SNSでバズっているのは、凄まじい値段とサイズと重量の立派な天体望遠鏡とスゴいカメラを担いで人里離れた場所に赴き、徹夜して撮った50枚とか100枚くらいの写真を合成した、金と手間と時間と技術と経験が天文学的なレベルで投入されている1枚

「みんなで見よう!!」みたいな雰囲気で語られても、一般人にはほぼ不可能じゃないっすか……みたいな経験、けっこうあるんじゃないでしょうか?

そして今では、彗星がどうのという報道が出ても「はいはい、どうせハードル高い系のヤツっすよね^^」みたいな冷めた感情を少なからず抱いてしまうように。

そんなあなたに朗報だ! 今回のZTF彗星(C/2022 E3)は、マジでハードルが低いぞ!! 


・余裕

もちろん、めちゃくちゃ鮮明でカラフルな姿を見たり撮影するには、それなりの装備と技術、経験が必要になる。しかし、ちょっと見る程度であれば余裕だ。

どれくらい余裕かというと、つい先日の早朝(1月30日の午前5時ごろ)に、国道沿いのショッピングモールの駐輪場から見えたくらいに余裕。

周辺は星を見るには最悪の環境だ。24時間トラックがそれなりの頻度で走ってきてヘッドライトで照らされるし、近隣は住宅街で街灯が煌々と輝いており、深夜でも懐中電灯無しに本が読める。

そんな環境だが、なんとなくワンチャンあるんじゃないかと思い、持っていた散歩用のカメラ(10年前に買った壊れかけの、もはや中古でも売れない瀕死のカメラ)を、JKとかが自撮りに使うような貧弱なテーブル三脚に設置して撮ってみたのだ。


正直言ってほとんど期待はしていなかった。電線が写り込むのも気にしなかったレベル。


しかし撮った写真をスマホでチェックすると……こいつじゃないか?


北極星や人工衛星より数段暗いが、位置が分かれば肉眼でもなんとなくボヤっと見える。双眼鏡があればけっこうイケるだろう。ZTF彗星は思っていた以上にイージーな可能性。

ということで、狙いを定めてズーム。といっても75㎜という焦点距離なので、肉眼の見え方とほぼ同じとされる50㎜に毛が生えたようなものだ。言うほど被写体はデカくならない。それでもかなりはっきり見える!


これはワンチャン、初めてのカメラで買わされがちなf値がデカいキットレンズや、お手頃な安い望遠レンズ。あるいは入門レベルの天体望遠鏡でも余裕なのでは?

そう思い、いったん帰宅して400㎜でのf値が6.3という、星(月を除く)を撮るには死ぬほど不向きな暗すぎる超望遠レンズと、ちゃんとした三脚を装備。再び戻って試したのがこちら。


すげぇ、光害がバチバチな場所でf6.3のレンズ使っても写せちまったぜ……。これはもう、それなりにズームできてマニュアル操作が可能なカメラさえ持っていれば、マジに誰でも撮影可能と言っていいと思う。

冒頭でのたとえ話のように、「年1で使うかどうかな一眼カメラも引っ張り出しちゃうぞ!!」みたいなノリのライト勢が家のベランダからチャレンジしても撮れそうだ。見るだけなら双眼鏡でもイケるだろうし、天体望遠鏡があればなおのこと余裕だろう。

ということで、5万年ぶりで再会は不可能なZTF彗星。とりあえず見る・写す程度であれば、ハードルの低さはガチだ! 家に双眼鏡やカメラがある方は、ぜひチャレンジしてみてくれ!! ただし、スマホのカメラはさすがに厳しいと思う。

参考リンク:国立天文台
執筆&写真:江川資具
Screenshot:CometBook

▼彗星の場所がわかんねぇよ! って方は、天体望遠鏡でお馴染みのビクセンが出してるComet Bookってアプリがお勧め。


▼こんな感じで、任意の日時の彗星の場所がわかる。ZTFはまだ こぐま座の近くだが、どんどん ぎょしゃ座の方に移動していく予定。


▼三脚に乗せて撮ろう。F6.3でもISO2500にSS10秒でいけた。もっと明るいレンズがあるなら、尾もはっきり写せるだろう。カメラ本体とレンズの自動手振れ補正は、どちらもオフにするのがいいぞ! これがレンズの手ブレ補正ONで撮ったやつ。


▼これがOFF。どちらも同じ設定で連続で撮ったものだ。手ブレ補正機能は小さい星を撮る際に誤動作を起こすことがある。ちなみにこの写真はピントがズレてる。一度合わせたらピントリングをガムテで固定するのがいい。