2020年10月22日に発売された、Gakken 科学と学習PRESENTS『天体望遠鏡ウルトラムーン』。お値段は税込み2750円。こちら、端的に言うと天体望遠鏡をDIYするキットだ。

学研は天体望遠鏡キットを『大人の科学マガジン』等も含めた何らかの雑誌から定期的に出している気がするが、公式サイトによると今回はこれまでのノウハウを詰め込んで本気で作ったものだという。とはいえ2750円だし、雑誌のキットだし……という理由からそこまで期待せずに買ってみたのだが……これマジですげぇな!

・雑誌サイズ

天体望遠鏡というと、なんだかデカそうなイメージがある……というか、天体望遠鏡は実際にそれなりのサイズがあるものだが、それに対してこのキットのサイズはかなり小さい。週刊の漫画雑誌と同じB5判だ。厚さは週刊ジャンプやチャンピオン2冊分程度。


箱に書かれているスペックによると、対物レンズには52㎜のアクロマートレンズを使用し、接眼レンズは25倍と12倍がついてくるそう。アクロマートレンズとは、2枚のレンズを使用して、光を構成する色の内、赤と青の2色の焦点距離のズレを一致させることで像をクリアに見えるようにしたレンズのこと。

ちなみに一眼レフやミラーレスカメラ用のちょっといいレンズだと、アポクロマートなどを謳っているものがある。こちらは赤、青、緑の3色に修正をかけるものだ。まあ要は、アクロマートやアポクロマートと書いてあれば、それは1枚のレンズしか使用していないものよりもコストがかかっており、その分像が綺麗になる……的な認識で良いだろう。

しかも、このキットのレンズは全てガラス製である。この手のキットでは、往々にしてコストダウンのためにプラスチックのレンズが使用されるもの。2750円のキットにガラスのレンズでアクロマートとは、学研めやりおる


・組み立ては一瞬

箱を開けてみると、中から出てきたのは、絨毯のゴミを掃除するコロコロ的なやつの芯みたいなのが2本。内側は光の反射を抑えるために黒く塗られている。


そして、レンズやらアダプターやらに、説明書を兼ねたガイドブック。


最後はシール。


これを組み立てていく。メチャクチャ簡単で、パーツを組み合わせること自体は5秒くらいで完了した。ぶっちゃけ説明書を読むまでも無く、袋から出している段階で「こうするんだろうな」的なのがわかったレベル。工作が苦手な人でも余裕だろう。


もっとも難易度が高い工程はシール貼りだ。シールに目印がついており、それで対物レンズや、接眼レンズのマウントの位置などを合わせるようになっている。とはいえ、それも20秒くらいで終わるだろう。


この手軽さと安さだが、レンズの仕様でもそうだったように、しっかりすべき点はしっかりしている。一般的なカメラ用の三脚が取り付け可能な三脚穴がついているのだ。


また、付属のガイドブックの内容が中々にガチで、地球から見える月面の地名一覧や、毎年話題になる「スーパームーン」についてだったり、月に関する人類のアプローチの歴史などが簡単にまとめられている。そして、月以外の「ウルトラムーン」で観測可能な天体の紹介などもされている。それによると、土星の環や木星の衛星も観測可能らしい。


・使ってみた

というわけで、さっそく完成させた「ウルトラムーン」を持って、深夜に近所の公園へ。家にあった三脚に取り付けてみたところ……




めっちゃそれっぽい


どこからどう見ても天体望遠鏡。コロコロの芯が2本出てきたときは不安になったが、完成させてシールを貼り、三脚に乗せた姿は完全に天体望遠鏡。夜中にこれを覗いていても職質される心配は少ないだろう。

ではさっそく「ウルトラムーン」で見た月面の様子をご覧にいれよう……と言いたいところだが、発売日の10月22日夜の関東は全域で曇。月どころか雲しか見えない。しかも翌日は雨の予報で、その次も雨。次に月が見えるのは週明けではないのかという感じ。

しかたがないので、公園の端の方の街灯の根本を眺めてみることに。人の肉眼での見え方に近いとされる、フルサイズカメラの50㎜レンズでの見え方だと、3ミリとかそれくらいに見える。


まずは「ウルトラムーン」に12倍の接眼レンズをつけて眺めてみると……


どのように見えるのかをお伝えするため、スマホのカメラを接眼レンズに押し当てて撮ったところ、ピントがズレてぼやけてしまった。しかし、実際にはそこそこシャープでクリアに見えており、レンズの良さを感じる。そしてしっかり拡大されている。

次に25倍の接眼レンズをつけてみたところ……


今度はスマホがズレてうまく像全体を撮れなかったが、それなりにクリアに見えることは伝わるのではなかろうか。ちなみに像が逆さまなのは、ケプラー式だからなもよう。その辺もガイドブックに詳しく書かれている。

なんにせよ、肉眼での見え方に対してここまでクリアに拡大できるのであれば、月のクレーター程度なら観測可能なのは間違いない。ちなみに、明るい月面を観測するための、絞りの役割を果たす穴の開いたキャップもついている。

うまくスマホを固定して撮影できるようにしたら満月の時などにはそこそこ映える月の写真も撮れることだろう。税込み2750円の「ウルトラムーン」……あなどっていたが、学研の本気は本物だった。この値段でこのクオリティはガチすぎる。

現在各種ネット通販では売り切れており、転売屋によって倍くらいの値段がつけられていたりもするが、少なくとも発売日の時点では、都内の大きい本屋の店頭にて在庫はあった。気になる方は、近所の書店をチェックしたり、あるいは書店での取り寄せが可能か聞いてみてはいかがだろう。

これは良いモノだ。そういえば今月末の満月はブルームーン。「ウルトラムーン」があればブルームーン観測もはかどることだろう。晴れるといいなぁ。

参照元:学研
Report:江川資具
Photo:RocketNews24.