ここ何年も日本のサッカーにはマリーシア(ずる賢さ)が足りないと言われ続けているが、逆にマリーシアだらけなのが居酒屋の「ちょい飲みセット」である。

なにせ、 あの手この手で客のユニフォーム(財布の紐)を引っ張ってきては「1杯だけ」という断固たる決意を揺さぶってくるのだから。そのため、「ちょい飲みセット」を頼んでも “ちょい” でフィニッシュできることなんてほぼ無い

すべては居酒屋のマリーシアがエゲつないがゆえに起きること。一例を挙げると……

つい先日、私が近所の焼き鳥屋「元祖やきとり串八珍」で見つけた『ちょい飲みセット』なんて典型的だ。内容は以下の通りで、もっともスタンダードな定番セットは料理4品にドリンク1杯が付いて1100円


賢明なる読者はこの時点でマリーシアにお気づきかと思う。串2本やモツ煮込みなどを含む料理が4品も付いてくるのに、ドリンク1杯でフィニッシュできるわけがないのだ。

料理のラインナップからしてドリンクの追加オーダーを誘っているのは明らか。以前に紹介した「塚田農場のちょい飲み」と同じパターンなのだが、今回の場合は薬味の量からしても誘っている……ような気がしなくもない。


マリーシアがビンビンである。もうこの時点で私は心が折れたので、料理が全て揃う前にビールを飲んだ。

本来は、料理がすべて揃った状態の写真を撮ってから飲み食いをする。というか仕事なので「そうすべき」なのだが、何だかどうでもよくなってしまったのだ。


その後、追加で頼んだ大ジョッキがちょっと減った頃に料理が全て揃ったものの、たった数分の間で「写真を撮らなきゃ」という意識さえもビールの泡とともに消えてしまった。これがマリーシアの恐ろしさである。



しかし、本当に恐ろしいのはここからであった。私がなんとかマリーシアへの抵抗を試みていたとき、隣に座っていたお客さんが「ここって鶏唐揚げも美味しいんですよ」と話しかけてきたのだ。

飲み屋でよくある展開であるが、出来るだけ “ちょい” で収めることを目標にしている私としては困る。というか、恐れていた事態である。なぜなら……


ブレーキが効かなくなり、勧められるがままに頼みまくってしまったからだ。「鶏唐揚げ」の後に「ピーマン チーズ豚巻き」「レバー的なヤツ」など色々と注文し、締めに「焼きそば」まで。

ちなみに、焼きそばはメニューに載っておらず、その店舗では裏メニュー的存在らしい。これがまた実に美味いのだ。新発見だった。


なにより、今この瞬間が間違いなく楽しい。フレンドリーな雰囲気といい、料理の味といい、お酒といい、不満なんて一切ない。あろうはずがない。

強いて気になる点を挙げるとしたら、どうやら想定の4倍近いお金を使ってるっぽいということ。しかも仕事を忘れて楽しんでいたので、ブレた写真が多めな上に、結構な写真を撮り漏らしている。


だが、よくよく考えればそんなことは些細な問題だろう。隣の人と一緒に楽しい時間を過ごせたという事実の前では、どうでもいいことでしかない。

予算の4倍くらいお金がかかろうが、写真がクソだろうが、撮り漏らそうが。一体なんだというのか。知るかボケ。


──と、店にいるときに思っていた自分を、今は殴りたいと思っている。


参考リンク:串八珍グループ「店舗一覧
執筆:和才雄一郎
Photo:RocketNews24.

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▼これに加えて……

▼キャベツ&ハーフサイズの1品(今回は鶏ハムをチョイス)に……

▼串2本が付くのが「ちょい飲みセット」

▼ちょい飲みとは関係ないが、このようなハーフセットがあると基本的に “おひとりさま” の私はとてもありがたい