もはや味のバランスがどうこうの問題じゃない……と、そのうどんを初めて見たときは思った。なぜなら、「うどん」の上にトンカツ&とり天&牛肉が乗っているのだから。いくら何でも油ものが多すぎる。

関西出身である私にとって うどんのダシは繊細なものであり、そのダシの良し悪しで うどんの味が決まると思っている。なので、先述のうどんを見た第一印象は「視覚的インパクトに全振りしただけのメニューだな」って感じだったのだが……。

・JR秋葉原の駅構内で見つけたうどん

もう少し詳しく説明しよう。私が先のうどんを発見したのは、JR秋葉原の駅構内。電車を降りて改札を抜けようとしたら、1枚のポスターが目に飛び込んできた。


そこにあったのが『肉肉肉うどん(並・930円)』。販売店は「本場さぬきうどん 親父の製麺所 秋葉原店」で、秋葉原の店舗限定のようだ。たしかにこれ系のうどんは秋葉原でウケそうである。見た目も派手だし、SNS映えするだろう。

ビジネス的に上手いのは分かる。ただ、味を追求するという点では悪手では? そもそも、見た目のインパクトだけを追い求めて味が二の次になっているのでは? というか、絶対そうだろう。

……と思いながらも、それら主張の強い具材を抱えたダシがどうなっているのか気になった私は、入店して「肉肉肉うどん1つ」と店員さんに伝えた。


待つこと約5分。予想通りのビジュアルをしたそいつが目の前に現れた。


なるほど。これは肉祭りだ。問題はその祭りがうどんの上で行われている点で、結果として何も悪くないダシが大迷惑をこうむっている気がする。

被害状況を確認すべく、具材を1つ1つ口に運んでみた。まず、うどん自体はコシがある系ではないものの、つるつるで良し。また、肉肉肉の一角である牛肉は甘目の味付けで文句なしに美味しい。


一方で、トンカツ&とり天はマズいわけじゃないけれど、どこかチープな感じがする。コンビニのホットスナックっぽいと言おうか。


で、肝心のダシである。これはもう肉肉肉のせいで繊細さが失われて死んでいると思いきや……


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> バターの風味が最高! <
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そう、このうどんの場合どうしても肉肉肉に気が取られてしまうが、実はバターが乗っている。そしてそのバターが全体のまとめ役を担っていたのだ。


おかげで、ともすれば油っぽさが際立ってしまいそうなダシが、濃厚でいい感じのバランスを保っている。言ってみれば、このうどんの主役はトンカツでも牛肉でも鶏天でもなくバター。それほど、バターの存在感は大きかった。

そういえば、以前に当サイトのP.K.サンジュンが丸亀製麺の「あさりうどん」はバターがあって完結すると言っていた。同じことが、肉肉肉にも言えるのだろう。

というわけで、最初は単なる飛び道具くらいにしか思ってなかったうどんだが、食べてみるとそうでもなかった。普通に美味しい。気になる人は是非。お店は駅構内の1階「Tokyo Food Bar」の中にあるぞ。

執筆:和才雄一郎
Photo:RocketNews24.