東京からもほど近い埼玉県八潮市。そこに知る人ぞ知るクレーンゲームの聖地があるらしい。

なんでも数百台のクレーンゲームが店内を埋め尽くし、有名YouTuberも来店。世界一を名乗る姉妹店に対し、「宇宙一」を名乗っているらしい。

これはクレーンゲームファンとしては行ってみるしかない。いざ宇宙一のクレーンゲームセンター「エブリデイとってき屋 東京本店」へ!


・約450台のクレーンゲームが並ぶ圧巻の店内

店内に一歩足を踏み入れると、お祭り広場のような賑やかなエントランスホールに10円ゲームが並ぶ。ほかにも100円で8回プレイできる低価格機もあるという。

子どもでも安心して遊べる価格設定は、かなり好評なんじゃないだろうか。運営する株式会社東洋 広報部 金井さんによると、休日には駐車場に車が入りきれないほど混雑するという。


そしてメインフロアには


どこまでも


どこまでも


どこまでも続くクレーンゲームの列!


その数およそ450台! ちょうどパチンコ店をイメージしていただくといいかもしれない。両側にずらっとゲーム機が並んだ通路が、平行して何本も走っている。

プライズ、つまりゲームの景品はさまざま。オーソドックスなキャラクターグッズから、イヤホンなどのガジェット、ぬいぐるみ、菓子、食品などが所狭しと並んでいる。メーカーや発売日やブランドに規則性はなく、あえて宝探しのように無秩序にしているようにも思われる。

一度「あのプライズどこにあったっけ?」と見失うと、元の場所に戻るのが大変なほどだ。大手ゲームメーカーの、真っ白なLEDに照らされて整然と筐体が並んだゲームセンターの対極にあるといえる。

変わったものでは、アイスが入っていたり、本物の宝石が入っていたり、ボタンではなくハンドパワー(赤外線センサー)で動かす機体なんてものも。

2階には、広報の金井さんおすすめの「もったいないキャッチャー」のコーナーが。賞味期限が近かったり、切れていたりしてもまだまだ食べられる食品が集められたエリアだ。SDGsを意識している。

店内をよく見ると、パーキングメーターのような小さな機械が付属したゲーム機がある。この機体でプレイすると、プライズをゲットできたかどうかにかかわらずチケットが発行される。チケットが貯まると景品と交換できる「もってき屋」というサービスだそう。

磁気カードを購入すると次回以降も続けて貯められるので、大きな景品を狙うこともできる。つまり、ゲームで失敗して悔しい思いをしても、別の形で還元されるユーザーフレンドリーな仕組みだ。

上手く獲れないときの救済措置になっていて素晴らしい! とにかく楽しく遊んで帰って欲しいという熱意が感じられる。


・目を疑うプライズ

などと感心しながら歩いていたら、ゲームセンターの風景にはおよそ似つかわしくない、あるものを発見した。こ、これは……


パイナップルーーー!


サツマイモ、リンゴ、ニンジンなど生の野菜や果物が入っているマシンがある。「八百屋かよ!」とツッコみたくなるが、クレーンゲームで野菜を獲るというのも、そうそうできない経験だ。ちょっとやってみよう。

ジャガイモ一発ゲット! 不規則な球体で、表面がザラザラしているジャガイモは簡単だった。どっしりとした立派なジャガイモだ。

大きなジャガイモを握りしめ、ゲームセンターの中を歩く筆者。なんだこの画(え)は……。


※この後、持ち帰り用のビニール袋をいただきました。


ふと周りを見ると、ニンジンもタマネギもある。なるほどそうか……すべてを理解した。これは、今夜はカレーにしろと。そういうことだな!

ジャガイモに比べると表面がツルツルしているタマネギ。ちょっと苦戦したが、2~3回でゲット。

全体的に設定は優しく、やり方さえ間違わなければ誰でも景品が獲得できるようになっている。アームが弱かったり、角度が浅かったりといった意地悪な設定はされていない。

ニンジンは、持ち上げるのではなくショベルカーですくうように少しずつ引き寄せるタイプ。一度では獲れないやつだ。ちょっとずつ前にずらし、なんとかゲット。

食品コーナーにご飯があったのは先ほど確認済みだ。スプーンのついたアームで、数センチずつ引いて取り出し口に落とす。ここでスプーンが登場するのもカレーを暗示しているかのようだ。


残るはカレールウだが……少々困った。


「レトルトカレー」なら店内に数えきれないほどある。なんなら、その場で温めて食べられるように食器や電子レンジまで用意されている。しかし「カレールウ」になると、とんと見かけないのだ。何度も店内をグルグルするが見つからない。ここまで野菜を揃えたのに、企画断念か……


と思ったら、あったー! 粉タイプのようだけれど、これはたしかにカレールウ!?

こちらもスプーンつきのアームで引き寄せるタイプ。運などに左右されず、何度かやれば確実に獲れるやつだ。この勝負、もらった。

ところがどうだ、なかなか上手くいかない。アームが遠すぎると景品が動かず、近すぎると景品の表面をなぞってしまう。景品に厚みがなく、引っかけられないことが原因だ。


プレイヤーをあざ笑うかのようなマシンに、筆者は秘策を打ち出した。500円の投入だ。

アーケードゲームをやる人ならご存じかと思うが、1プレイ100円の機体でも、500円を一度に入れるとボーナスがつき、6プレイできたりする。もし6回を使い切る前に景品を獲得できたとしても、返金はない。

しかし、人間というのは欲深いもの。「もし4回目で獲れたら100円損しちゃうじゃん!」という損得勘定が働き、最初から500円を投入できる勇者はなかなかいない。

しかし筆者は入れた。絶対に負けられない戦いがここにはあるからだ……!

当たる位置が悪いと景品はその場から動かない。無情にも景品の表面をすべるアーム。


景品に触れた状態でアームが動き、かえって遠くに押しやってしまうことさえあった。


もうここまでいくら使っているんだ。1000円? 2000円? どんだけ高級カレーだよ。これなら銀座でカレーが食べられるんじゃないか?

ラスト1回……景品は、あとひと押しで取り出し口に落ちそうなところまで迫っている。ボタンを押す指が震える。

筆者の目にはアームの動きがスローモーションのようだ。どうだ……どうなんだ……!


すかっ


………………


………………


………………


………………なお、この後さらに数百円を投入して筆者はカレールウを入手した。総額いくらになったのか、途中から計算すらしていない。少なくとも1000円札を3回両替したとだけ言っておこう。あとは豚肉があればいいな……と思ったが、さすがに精肉はなかった。


今回ご紹介した「エブリデイとってき屋」は、過去に行田店で “クレーンゲーム台数世界一” としてギネス記録認定されたこともある正真正銘の専門店。

低価格でプレイできるマシンの設置や、景品獲得しやすい優しいゲーム設定、「クレーンゲームアドバイザー」の存在など、まさにクレーンゲームの楽しさを伝導する聖地だ。

車が便利だが、駅からバスで来店することも可能とのこと。クレーンゲームが好きな人はもちろん、そうでない人も一度「獲れた!」という経験をすればきっとファンになるはず。ぜひ訪れてみて欲しい。


・今回ご紹介した店舗の詳細データ

店名 エブリデイとってき屋 東京本店
住所 埼玉県八潮市上馬場460-1
時間 10:00~22:00
交通 東武伊勢崎線「草加駅」、つくばエクスプレス線「八潮駅」からバスまたはタクシー



・……余分の後日談

……ここからは余談だ。勢いでカレーの材料を集めたはいいが、困ったことになった。実は筆者は宿に泊まらず移動を繰り返す、車中泊旅の途中だったのだ。つまり調理できる場所もなければ、ろくな調理器具もない。なんでカレーを作ろうなんて思ったんだ。

ともかくやってみよう。幸いにもRVパーク(宿泊や自炊が可能な車中泊スポット)に滞在中だったので水道はある。ボウルやタワシはないので、ネットで水洗いだ。

過去記事でご紹介した「おひとり様グリル鍋」を使うため、材料はすべてダイスカットにした。包丁のほか、キッチンバサミを使うのは省スペース調理のライフハック。「炒める」という下準備もできないので、蒸し焼きのような形で加熱。

あとはカレールウを投入! もちろん計量スプーンなどないので目分量だ。


完っ成っ! レンチンご飯を温めることだけはどうしてもできなくて、帰宅後に持ち越しだ。


肉もなく、油で野菜を炒めることもなく作ったカレーだが、意外に美味しい! 「中辛」ながら、なかなかにホットでスパイシー。加熱しながらアッツアツを頬張るのは、外食やテイクアウトでは味わえない美味しさだ。想像よりもずっと満足! 作ってよかった!!

素敵なカレーをありがとう「エブリデイとってき屋」! その勇姿を永遠に「エブリデイとってき屋」!

なお残った食材は「野菜の輪切り蒸し焼き」という斬新な料理に姿を変え、美味しく頂いた。まぁ、匂いの残りやすい車内、タマネギを焼いたりカレーを作ったりしたらどんなことになるかはご想像にお任せする。


参考リンク:エブリデイとってき屋 東京本店
執筆:冨樫さや
Photo:株式会社東洋、RocketNews24.
[ この記事の英語版はこちら / Read in English ]