ゲームセンターのクレーンゲーム。ぬいぐるみやフィギュアなどのキャラクターグッズが定番だが、ときには見たこともない珍妙なプライズ(景品)がセットされていることもある。

ある日の筆者が見つけたのは缶詰だった。

半透明の缶で、中はタプタプと水で満たされている。そして入っているのは本物の貝……!? 一体なんだコレは……!


・「宝石の海 双子の真珠」

缶には「宝石の海 双子の真珠」「真珠取り出しキット」と書いてある。双子真珠、つまり2粒の真珠が採れるのだという。プライズ専用品というよりは、観光地のお土産店にありそうだ。

缶切りのいらないイージーオープン式で、ツナ缶ほどの見慣れたサイズ。中はほんのり黄色く染まった液体で満たされており、フェイクではない本物の二枚貝が収められている。まさか中身は海水か?

貝のかけらと思われる黒いカスも浮いていて、なかなかインパクトのあるビジュアルである。

なお、クレーンゲームなのでプレイ中には当然失敗もある。「ガコン!」と盛大に落下する様子を見て「生きている貝だったら、かわいそうだな……」と思ったのだが、そんなわけはなかった。


意を決して開封すると、ムッと立ち上る生臭い海の匂い……!


ということは、まったくない。表記を見ると蒸留水と医療用アルコールらしく、清潔な水である。黄色く見えたのは、缶が透過していただけだった。

蒸留水を捨てて取り出してみると、本当に貝だ! 付属のヘラで貝をこじ開け、真珠を探すんだな。


筆者はこれまでの人生で、たとえ食用でも生の貝を割ったことはない。貝類はちょっと苦手なのだ。よく見ると口のような隙間があったので、そこを手がかりにしてみる。

ヘラを差し込めばテコの原理で簡単に開くかと思ったが、実際はびくともしない。

真珠貝といえば、頭に浮かぶのはマーメイドが寝ていそうな貝殻のベッド。しかし、現実にはやすやすと口を開けるわけではないらしい。これが貝柱の力か……!

フチに沿ってゴリゴリとヘラを入れていくが、それでも開く気配はない。小さいのにすごい強度だ。ヘラの方が折れそう。

力をかけると、メキメキメキッと貝が割れるような感触が指に伝わる。意外にも真珠の取り出しというのはエクストリームなアクティビティだ。あとちょっと……!


パッカーン!


真珠がっ、真珠が飛び出してきた!


もうひとつの真珠は身の中に埋まっていたが、簡単に取り出せた。


カラーはふたつともシェルピンクで、説明書きによると「縁結(えんむすび)成就」のお守りとのこと。真円よりは楕円形に近いが、つるりと滑らかな触感だ。

実際はエンジェルブラック、ロイヤルパープル、スノーホワイト、クリームイエロー、シェルピンクの5色があり、ご利益が異なる。「何色が出るかはお楽しみ」なのだが、よりによってピンク2粒とは、筆者の今後の人生は愛と縁に恵まれまくるだろう。

残った貝は、もちろん食べられない。それにしても本当に、真珠って貝の中でできるんだなぁ……。


いや、もちろん宝飾品のような厳密な製法ではないだろう。だって100円だったし。


過去に北海道で「可愛がって育てるぞ!」と買ったマリモが後に人工物だと知った経験もあるから(本物の阿寒湖のマリモは国の特別天然記念物)、あくまで「疑似体験キット」だと思った方がいい。

でもやっぱり感動した。貝が苦手な筆者からすると、正直「グロテスクな生き物」に分類される生物の中で、こんなにもキレイなものができるとは……。

しかし卓上はひどいことになったので、掃除のしやすいところで開封することをオススメする。


なお、今回とまったく同じではないものの、「真珠缶」「真珠採集キット」などの名称で似たような商品が存在する。やはり玩具として、あるいは水族館などのお土産として販売されているようだ。1回100円のクレーンゲームでゲットできた筆者はラッキーだったのかもしれない。未来には幸運が待っていそうだ。


執筆:冨樫さや
Photo:RocketNews24.