観光地として有名な浅草。雷門通りから仲見世、浅草寺辺りはいつも人でごった返しているが、浅草寺の裏から北にいくと観光客がグッと減る。「裏浅草」とか「奥浅草」と呼ばれるこの辺りは、店の価格も仲見世近辺ほど観光客狙いではないし、時間の流れもゆったりしていて、地元民の領域だ。
そこで地元民にオススメの店を聞いてみたところ、興味深い情報を教えてくれた。ビストロでメニューも洋食が中心なのに常連はみんなラーメンを食ってる店があるという。
・メニューにラーメンがある理由
そんな話を聞かせてくれたのは生まれも育ちも浅草の貫井(ぬくい)さん。40年間、ずっとこの近辺で育ってきた貫井さんは子供の頃から通っているばかりか、初めてラーメンにコショウを入れたのもその店なのだとか。
貫井さん「観音裏の『ビストロ福昇亭』っていう店で、元は『スカイライン』って名前だったんだよ。カレーを伸ばすのに鶏ガラスープを使ってたら、それでラーメンを作ったらウマそうって冗談みたいな話が客から出たらしくて。最初は、ミニラーメンがつく感じだったんだけど、どんどんデカくなったんだよね」
──とのこと。というわけで、さっそくビストロ福昇亭の住所に行ってみたところ、そこには小粋な感じのレストランがあった。
・メニューを見ると
小綺麗なのだが、同時にアットホームなサイズで、下町のちょっとした贅沢感がある。可愛さと言い換えても良いかもしれない。まさしく庶民も会いに行ける洋食。完全にビストロである。
──しかしながら、ランチセットを見てみると、確かにラーメンランチと書かれていた。
しかも、ラーメンランチの内容は、「チキンカツ+ライス+小ラーメン」。炭水化物がちょっこすおかしなことになっている。初めて来店した私の目からしたら、ラーメンが無理やりねじ込まれているようにしか見えないわけだが、それでも入れる理由があるというのか。
・注文してみても
それとも、全体的な差し引きで炭水化物のバランスが取られているのだろうか。あっ! ひょっとして、ラーメンと同じくライスもミニとか? そこで注文してみたところ……
ライスは普通だ……!
完全にプラスαとして小ラーメンがついてきている。チキンカツとご飯でセットが出来上がっているため、実物を見ても、やはりラーメンがねじ込まれているようにしか見えない。
・味は
っていうか、ラーメンもミニとは言え、そこそこしっかり丼だな。そこでラーメンから食べてみたところ、町中華を感じさせる味だった。
いわゆる何でもない醤油ラーメン。ただ、スープをちょっと飲んでみると、またひと口食べたくなる。家系みたいないかにも旨みを詰め込んだスープではないのだが、それでも単調さはなく、隙間のある感じが次のひと口を求めるのだ。なかなかどうして深い味である。
しかしながら、特にラーメンとチキンカツの相性が良いわけではない。チキンカツはご飯とのセットで完成しており、ラーメンはラーメンで単体で無双しているイメージ。
じゃあ、結局、ラーメンいらないのかと聞かれると、ぶっちゃけ欲しい。食べ終わった今、小ラーメンがいないと寂しい気にすらなってるんだから不思議だ。らんまみたいなヤツである。
ベルも鳴らさずにそよ風のように胸のワンルーム住みついた君なの。なお、私が行った時は本当に各テーブルごとにラーメンセットが注文されていた。
・食べられる日時
迷惑よ、だけど今夜だけいいわって気分になるこのドタバタセット。とりあえず、分量的に税込み950円が安いことは確かである。
ちなみに、店員さんに聞いてみたところ、2022年9月現在、ラーメンをメニューとして出しているのはこのランチセットのみらしい。で、ランチセットが注文できるのは火曜日から土曜日の11時30分~13時30分。月曜日は定休日で日曜日はランチなしとのことだったので、ラーメンを食べてみたい方は参考までにどうぞ。
・今回紹介した店舗の情報
店名 ビストロ福昇亭
住所 東京都台東区浅草3-31-7 福昇亭ビル 1F
営業時間 火~日11:30~14:00(LO13:30)、18:00~20:00
定休日 月
執筆:中澤星児
Photo:Rocketnews24.