中学生のころ、クラス一丸となって練習した合唱曲『モルダウの流れ』。そう……あれは合唱コンクールにおける3年生の課題曲だった。1年と2年の課題曲は覚えていないが、『モルダウ』は歌詞まで暗記している。なぜなら3年生の意地にかけて練習したもんね〜!

当サイトのメンバーたち(40歳前後)にアンケートを取ったところ、ほぼ全員が「中学校で『モルダウの流れ』を歌った」と回答。ただし最年少のあん すず記者(27歳)は「歌った覚えがない」とのことだ。最近の中学生は『モルダウの流れ』を習わないのかな?

中学生の知り合いがいないので確かめようもないが、ともかくミドル世代にとって『モルダウの流れ』が思い出深い曲であることは確か。憧れのモルダウ川を目にしたとき、人はどんな思いを抱くのだろう? 私は今回、本物のモルダウ川を拝みにチェコへ飛んだ!

・チェコの首都プラハ

ってことで、モルダウ川へやってきました。モルダウ川(ヴルタヴァ川)は首都プラハのド中心を流れるチェコ最大の川だ。

初めて見るモルダウ川、美し〜〜〜!!!!


『モルダウの流れ』の歌詞には「緑濃き丘」「古城は立ち」といった描写があるが、プラハ中心からモルダウ川を望むと、実際に緑濃い丘やお城(プラハ城)が見られる。『モルダウの流れ』はまさに、この場所のことを歌った曲なのだ。感激だなァ〜!


カレル橋のたもとには『モルダウの流れ』の作曲者・スメタナ(1824〜1884)の像が! 150年前にこの場所で作られた曲が、遠く海を越えた日本の中学生に歌い継がれている。音楽って本当に偉大だよなァ〜!


さっそく私もスメタナ氏の隣で、モルダウの流れに思いを馳せることにしよう!


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・何も出なかった

15分ほどモルダウ川を眺めてみるも、記事を締めくくれるほど気の利いた感想が出てこない。さらに思いを馳せるため、スメタナ像からほど近い『スメタナ博物館』を訪れてみた。

入館料はたったの50コルナ(約282円)。日本語ガイドを貸していただいたばかりか、「暇だから」と受付のマダムが案内役を買って出てくれたぞ。チェコの人って優しいね!

熱心に見学していると、マダムが『モルダウの流れ』を大音量で流してくれた。モルダウ川を眺めながら聴くモルダウ……これ以上の贅沢があろうか。多くの楽曲を残したスメタナだが、チェコでも一番ポピュラーなのは『モルダウの流れ』だそうだ。

館内はスメタナが実際に使用した楽器や、ゆかりの品などが多く展示されている。クラシック好きなら必ず訪れるべきだろう。


・ “過ぎし日” について考えてみた


…………う〜む。スメタナ博物館は確かに素晴らしかったが、どうも気の利いた感想が浮かんできそうにないな。仕方がないのでとりあえず、モルダウ川のほとりで『モルダウの流れ』を歌ってみることにするか。ええと……


ボヘミアの川よ モルダウよ 過ぎし日のごと 今もなお……


過ぎし日…………か。そういえば『モルダウの流れ』を練習していた中3のころ、世間では携帯電話が急速に普及し始めていた。クラスの中でも数人がケータイを入手したが、厳しい教育方針の我が家では夢のまた夢である。

そこでケータイをゲットするべく、私がとった作戦はこうだ。まず部活を3つ掛け持ちする。大会前になれば日が暮れても練習が続くバスケ部と演劇部。それから私は美大志望だったため、受験勉強の一環でもある美術部だ。

しだいに両親は「帰りが遅い」と文句を言いはじめる。すかさず「ケータイを買ってくれればいつでも連絡が取れるよ」と私。そうした攻防が続くこと半年……ついに両親は折れ、私は念願のケータイをゲットしたのであった! まさに知恵と忍耐の勝利ッ!

が……私はこの一件に関して、今でも腑に落ちないことがある。それは1つ年下の妹も、私と同じタイミングでケータイをゲットしたことだ。ちなみに私の知恵と忍耐によって『おこづかい制』が導入された時も、彼女は同じタイミングでおこづかいを受給している。

自分が努力して勝ち得た恩恵を、妹が一切の苦労なく享受することが許せなかったあの頃。しかし時が流れて思うのは「あの悔しさがあったから今の私がある」ということ……それは妹もまた同じだろう。帰りたいような帰りたくないような、あの過ぎ去りし日……。


……なぜわざわざチェコでこのエピソードを思い出したのかは不明だが、モルダウ川の導きであることは疑う余地もない。いつかあなたもモルダウ川を訪れたなら、過ぎし日のことを思い返してみてほしい。『モルダウの流れ』を歌ったあの頃のことを……。


水清く青きモルダウよ わが故郷を流れ行く



若人さざめくその岸辺 緑濃き丘に年ふりし



古城は立ち 若き群れを守りたり



やさしき流れよモルダウよ 光り満ち



わが心にも常に響き 永久の平和をなれは歌う



たたえよ故郷の流れ モルダウ


〜fin〜


執筆:亀沢郁奈
Photo:RocketNews24.