現在世界中で人気を博しているアニメ『PUI PUI モルカー』。モルモットが車になった「モルカー」たちが活躍する可愛い物語に、筆者も含め大人から子どもまで夢中になっている。羊毛フェルトで作られた可愛いモルカーたちの姿は、見ているだけで癒されてしまう。

そして、『PUI PUI モルカー』を何度も繰り返し見ていた筆者はこう思ってしまったのだ。モルカーが欲しい、と──。ということで、羊毛フェルトのことは何も分からないし超絶不器用だけど、モルカー作りに挑んでみた

・血を流す覚悟

手芸屋さんへ行き、モルカー作りに必要なものを店員さんに伺いながら買ってきた。最低限必要なものとして挙げられたのは、モルカーの表面となる毛と土台になる芯用の毛、そして毛を固める針とマット、眼と固定用のボンド。全て購入すると、総額約3000円ほどだった。

店員さんいわく、筆者が土台として購入したハマナカの「ニードルわたわた」1パック・たった30gで手のひらサイズのモルカーを3体〜4体作れるそう。「毛はパックから取り出すと思ったより膨らむし、針で押し固めてもそこまでめちゃくちゃ小さくなるわけではない」らしい。

羊毛フェルトでのお人形作りは「本当に針で毛を刺して固めて形作るだけ」とのこと。

これから作るモルカーの作り方を簡単に説明すると、

土台となる毛を針で刺す

土台の凹みに毛を足して刺す

表面の毛を巻いて刺す

各パーツも同様の手順で刺す

パーツをくっつけるために刺す

眼の位置を刺す

眼を入れる

以上。最後の眼入れ以外は、ただただひたすら刺すだけだ。とにかく毛を刺すだけで、モルカーは完成する。


作り方も把握したので、さっそく作ろう──と思ったのだが、いざ形作ろうとモルカーを思い浮かべてみると、意外と細部が思い浮かべられない。このまま作り始めると大失敗するのでは? そう思い……

一週間ほどモルカーとモルモット、街中を走る車を見まくった。とにかく見まくった。

そうして道を走る車が全てモルカーに見えてくる域にまで到達してから、自分の中で整理したモルカーの形やパーツの位置関係を図面に起こした。

ここまで出来たらもう、毛を刺してモルカーを形作っていけるだろう。そんな謎の自信も芽生えてきた。出来る──そう確信しながら、意気揚々とモルカーの土台となる毛をパックから約4分の1ほど取り出した。手のひらサイズのそれは、手に乗せるとすでにモルカーに見えてくる。

ふわふわとした暖かみのある毛を、モルカーっぽい形になるまで色んな方向から針で刺していくだけ。超絶不器用であっても、刺すだけなら簡単だ。しかも、モルカーの形はもう頭に入っているので楽勝。毛のかたまりに、勝利を確信しながら針を刺していく。

一生懸命に針を刺すこと約5分。平べったい脳みそが爆誕した。なんで? 

1週間かけてモルカーの形を頭に叩き込んだはずなのに何故。

モルカーっぽい前傾の俵型を目指していたのに、凹凸だらけの平べったい横長の何かになってしまった。しかし、羊毛フェルトは意外と固めてからでも手で圧縮したり、毛を足すと形が整えられそうだった。なので、とにかく凹み部分にひたすら毛を足していく。

刺すと結構すぐに固まってしまうので、どんどんいびつな形になる。固まってしまうと針も刺さりにくくなり、形を整えづらくなっていく。しかし、諦めず根気よく、手で揉みほぐしたりしつつ毛を足し、ときには自分の指をブッ刺しつつ、前傾俵型を目指して毛に針を刺していった。

毛を足して、手で押して形を整え、凹みにまた毛を足して……を繰り返して約40分後。なんとか俵型にはなった。まだ凹凸はあるが、表面にも毛を巻いていくので何とかなるだろう。何より、刺せば刺すほど変な形になりそうなのでこれ以上は刺さないことにした。

握っても大きく凹まないぐらいの固さになった土台に、モルカーの表面となる毛を巻いていく。土台の色が見えなくなるほどの厚さで巻くと土台の凹凸も目立たなくなりそうなので、勿体ながらずにたっぷりと巻いていく。

表面用の毛を巻いたら、土台の形を大きく変えないように軽く刺していく。土台と違って表面は膜のように貼るだけなので、軽く刺すだけで綺麗にどんどん固まっていく。土台が凹んでいるところは毛を足したりしていると、わりと綺麗な形になってきた。

表面の毛が土台から浮かないぐらいしっかりと固定されてきたら、モルカーのお口を凹ませていく。やり方は単純に、凹ませたいところが思い通りに凹むまで針を刺すだけだ。1回1回凹み具合を確認しながら刺していると、モルカーのお口っぽくなってきた。

お次は窓となる毛を薄く乗せ、モルカーの表面に刺して定着させていく。色の違う毛を刺してしまうと誤魔化しようがなくなるので、窓の真ん中の方から慎重に針を刺す。物凄く気をつかう作業だ。

窓の形を整えるように、窓の端は特に慎重に針を刺していく。針で刺した点で窓枠を描くように刺すと、綺麗に窓っぽい形で毛を固定していくことが出来たよ。

窓が出来たらお次は耳だ。耳は窓と違って立体なので、ボディのように土台を作ってから表面用の毛を巻いて作ることにした。耳用の小さな土台を刺して固めるのは、針の狙いを固定し辛くて意外と大変。耳作りだけで指を3回刺したほどだ。

耳の表面に巻いた毛の根本(ボディと接続する部分)を固めきらないようにして、その毛足をボディにくっつけて刺し固め、耳を取り付けた。針を刺す向きで耳の向きが調整出来るので、意外と誤魔かしが効く楽な工程だった。

耳と同じように小さな土台を作って表面用の毛を巻き、下アゴパーツも作って取り付けた。ついでにお口の線もくっつけた。お口の線はこより状にした細い毛を軽く刺すだけで固定でき、とても簡単。難なく出来た。

いよいよモルカー作りも終盤。タイヤも耳と同じく、土台を作ってから表面用の毛で覆って作成していく。

取り付けも耳と同様に、ボディとの接着面に毛足を残して刺し固めてくっつけるだけ。要領を掴んだのか、難なくこなせた。

タイヤのホイール部分は窓と同じ感覚で、薄く毛を乗せて中心から刺し固めていき、端を丁寧に刺して形を整えれば上手く出来た。基本的にどの部分も「刺す」作業のみなので、作っている間にどんどん経験値を積んで慣れてきた気がする。

タイヤをつけ終わり全体を確認すると、もうほぼほぼモルカーが完成していた。心なしかお耳が大きかったり、タイヤが傾いていたりもするような……と一瞬気になったが、本物のモルカーも色々な子がいて、よく見ると結構個体差もあるので気にしないことにする。

いよいよお人形の命ともいえる、眼を入れる作業に入る。モルカー作りの最後にして最難関かもしれない。モルカーを描いてみて思ったが、目の位置が少し違うだけでモルカーっぽく見えなくなるのだ。

とにかく慎重に、モルカーの眼を入れる位置にくぼみをつけていく。この辺りかな、という位置に少しづつ少しづつ深く針を刺し、眼のパーツの足が入り込む深さまでくぼませる。

そうして眼を入れる穴を作ったら、速乾性のボンドを中に注ぎ……


眼を入れたら、モルカーの完成!


ぐちゃぐちゃの土台が出来上がったときは涙を流しそうになったし、片手では足りないほど針で指を突き刺し、血を流した。そんな約6時間の集大成だ。大きなまん丸お目々、コロンとしたボディ。少しお耳が大きすぎる気もするが、可愛いモルカーに見える。

上から見るとお口の形が可愛く、後ろから見たらポテッとしたお尻が可愛い。約6時間前には平べったい脳みそのような土台だったのが嘘のようだ。

横から見たときには車っぽい前傾のなだらかな曲線を描くようにしたかったのだが、少しガタッとなってしまっている気もする。が、眺めているとどんどん愛着がわいてきて可愛らしく見えてきたので、気にしないことにしようと思う。

他の方から見たらどう見えるか分からないが、6時間もずっと向き合って作り上げたせいか、筆者には完成したモルカーがめちゃくちゃ可愛く見える。この記事を書いている今も、ディスプレイの隣にいるモルカーとたまに目を合わせてはニヤついてしまうほどだ。

超絶不器用でも自分のモルカーが欲しい、という方には是が非でもモルカー作りに挑戦してみて欲しい。血を流すかもしれないが、きっと後悔はしないだろう。

参考リンク:『PUI PUI モルカー』公式HP
Report:伊達彩香
Photo:RocketNews24.

▼我ながら、めちゃくちゃ可愛く描けた気がしてます。

▼このとき結構本気で泣きそうだった。

▼いまだに車が全部モルカーに見えます。