「ウーバー(Uber)」と聞けばほとんどの日本人は『ウーバーイーツ』を想像するが、海外では『配車サービス』を意味する場合のほうが多い。 “配車サービスであるウーバーが事業展開したものがウーバーイーツ” というのが正しい順序なのである。

私が現在滞在しているエジプトの一般的なタクシーにはメーターがなく、悪質なドライバーに遭遇すると法外な料金を請求されることもしばしば。その点、アプリ上で全てが完結するウーバーは安くて手軽で安全。旅行者たちの強〜い味方なのだ。

なお本記事は私がエジプトでウーバーを利用し、あやうく天に召されかけた全記録である。

・ウーバーは超便利

ウーバーの使い方はとってもカンタン。あらかじめアプリにクレジットカードを紐づけておき、行き先を入力。


おおよその道筋と所要時間、料金が表示されるので……問題なければ配車を確定。このへんはウーバーイーツとよく似ている。



すると、あっという間に近くのドライバーが到着するというシステムだ。私が海外でのべ100回以上ウーバーを利用した経験上、中には “遠回りされた” “ナンパされた” “観光ツアーに勧誘された” といったケースもあったものの、チップを要求してくるような悪質ドライバーに出会ったことはない。

現在多くの国では何かしらの配車アプリが普通に利用できるようになってきているので、今後海外旅行をする際は一度利用してみることをオススメする。きっとウーバーなしでは生きられない体になることだろう。


・謎の選択肢追加

ところで……私はエジプトに上陸してから、ずっと気になっていたことがある。乗車する車のタイプは地域によって “普通の車” “ちょっといい車” “大型車” などが選べるが、ここまで旅した地域では見かけなかった「ある選択肢」が追加されているのだ。


「スクーター」だと…………?


まさかウーバーでバイクが呼べるというのか……? 念のため配車アプリが普及しているスペイン在住の香月実穂記者(姉妹サイトPouch所属)に確認してみたところ、やはりバイクタクシーなど見たことはないという。

そういえば交通渋滞が激しいエジプトでは、車の間をバイクがスイ〜と走り抜けていく光景をよく見かける。おそらくバイクタクシーとは、需要と供給がマッチした地域特有のサービスに違いあるまい。

実は「バイクの後ろに乗ってみたい」という憧れをひそかに抱いていた私。軽いノリでウーバーバイクを呼んでみることにした。配車確定からわずか2分後……颯爽と登場したバイクのお兄さん! チワッス! よろしくお願いしま〜ッス!

…………って、あれっ? お兄さん、もしかしてノーヘルっスか? なるほど………………え? あ、いや、大丈夫ッス! ちなみに私のヘルメットも…………ない、ですよね……


なるほど……!



あ、「早く乗れ」って? サーセン! え〜と、足はどこに置けば…………



…………っておおぉぉぉぉい!!! 黙って発車するなよ! 危ないじゃないか! ねぇ、ちょっとお兄さん! ひとつ安全運転でよろしくお願いしまアアアァァァーーーーーーー!!!!!!!



待て、早い早い早い早い!!!!!!!!



ア、アァーーーーーーーーーーーぶつかるウウウゥゥゥゥゥン!!!!!!!!!!!



アアァァァアアアアアアアーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!


お母さーーーーーーーーん!!!!!!!!!!!!


…………


…………


…………


・偶然死ななかっただけ

私は今、この記事を書いている。すなわち “生きている” ということに他ならない。しかしながら、コレはあくまでも「偶然生きているだけ」であり、ちょっと間違えなくても普通に命を落としていた案件だ。ウーバーのこと信用しすぎてた……!

私はカメラを頭部にセットしていたが、あまりの速度に発車3分で撮影中断。後から調べたところ、どうやらエジプトにはノーヘルを取り締まる法律が無い……ようなものらしい。もしあったとしても、現状を見た身としては「無い!」と断言したくなるほどの無法地帯っぷり。

また速度に関する法律も曖昧で、この危なっかしいお兄さんの運転も特にお咎めはないようだ。

……が、法律上問題なかったとしても死ぬ可能性が減るわけではない。このお兄さん、時速100キロほどのスピードで爆走中に突如振り返り「ウチ、子供が2人いるんだけどさ〜」などと笑顔で雑談をかましてきたりする。頼むから前だけを見てくれ。

50年連れ添った夫婦くらいの密着度でお兄さんにしがみつきながら、私は「この世界線で生きてるエジプト人、一生勝てる気しねぇ……」と思った。ちょっとヘルメットをかぶるだけで生存率が爆上がりするにも関わらず誰もかぶらない国、それがエジプト。

実は目的地までわずか4kmあまりの道のりだったが、なぜか “同じ道をグルグル回る” “ツレに挨拶” などを挟み、死のドライブはトータル30分以上にも及んだ。カイロでは交通渋滞や一方通行の影響で遠回りせざるを得ない場合も多く、一概にお兄さんを責めることはできない。

が……中には悪意をもって遠回りや時間稼ぎを画策するドライバーもいて、その見極めが旅行者には難しいのだ。スマホがあれば地図アプリで確認することもできるが、バイクの場合は不可能。

……以上のことから個人的に、海外でウーバーバイクを利用することは断じてオススメしない。撮影に協力してくれたお兄さんには申し訳ないが、私は2度と乗らないだろう。ちなみに30分乗った料金は31.14EGP(約225円)。大変いい思い出になりました。ありがとうございました!

それでも「どうしても外国でウーバーバイクに乗ってみたい」という命知らずな方は、必ずヘルメットを持参のうえ挑戦してほしい。何か起きても当サイトでは一切の責任を負わないのであしからず……忠告はしたからな!

執筆:亀沢郁奈
Photo:RocketNews24.