東京オリンピックに参加する世界206の国・地域、難民選手団、それぞれをイメージして制作された着物がある。着物を通じて世界をつなぎ、平和のメッセージを伝える「KIMONOプロジェクト」は、東京五輪開会式でお披露目することを目指していたが……叶わなかった。

で、まあ大人の事情が色々とあったとはいえ、着物は……ある。すでに完成しているのだ。だったらオリンピック関係なしに見せてくれ! てことで、準備を進めてきたイマジンワンワールドから許可をもらったので「世界各国のKIMONOデザイン」を皆さんにも紹介したい。

・4億円以上の寄付が集まったプロジェクト

着物の柄は、各国大使館と相談のうえ、それぞれの国が誇りとする「自然・文化・歴史」をデザインし、全国各地の着物作家やアーティストが制作したらしい。1着のデザインは平等に200万円で、日本中から総額4億円以上の寄付が集まったそうだ。

これまでアフリカ開発会議(TICAD7)総理大臣主催晩餐会や、ラグビーW杯2019のオープニングなどで披露した実績があり……現在は2024年パリオリンピックへ向けて、開催都市パリをモチーフにしたKIMONOの発表を予定しているという。

──と、前置きはこのくらいにしておこう。なお今回は「着物の柄」を紹介するぞ。帯も見たい方は公式サイトをチェックしてくれ。また、私のように着物に詳しくない方にも楽しんでもらうために、制作者の解説もざっくりまとめてみた。さっそくアジアからご覧あれ!


・アジア

アラブ首長国連邦は、そびえ立つ摩天楼を描くと同時にヤシの木やラクダ、豪華な装飾品などを国旗の色をベースに描きあげた。なるほど、たしかに各国をイメージした着物なら外国の方でも似合いそう。よし、ペースを上げてドンドンいくぞ。


オマーンのデザインは、国花「スルタン・カブース・ローズ」がメイン。典礼で男性が帯刀する短剣ハンジャルには金加工が施されている。


タイは「コムローイ」が空を舞う様子や、花火がきらめく様子が黒地に幻想的に描かれている。また、タイでは生まれた曜日を大切にする文化があり、曜日ごとに守護動物があるという。それらを散りばめたそうだ。


中国の着物は「万里の長城」を巨大な龍に見立てて全体に配置。愛らしいパンダもアクセントに用いられている。かわええ〜。


ベトナムは54の少数民族が共存していることに着目し、それぞれの民族衣装に身を包んだ子供を生地全体に描き込んだという。稲作文化をイメージした柔らかい緑が平和な雰囲気を醸し出している。


・アフリカ

エチオピアは、民族衣装に見られる紋様を組み合わせて全体のデザインを構成した。それぞれの部族の豊かな色彩を取り入れ、豪華な作品に仕上げられている。


ガーナは国旗を連想させる虹や、特産であるカカオの花や実、金鷲、ニジェール川のワニも描かれている。


カメルーンはアフリカ各地の気候と地形が存在し「アフリカの縮図」と呼ばれていることから、国旗3色の……緑を熱帯雨林、赤をサバンナ、黄色をステップや砂漠の地色とした。各国の特徴が本当によくわかる。勉強になるなァ〜。


ルカチャオスが暮らすケニアの着物は、200色近い色糸を用いて1年以上かけて織り上げられた傑作。動物たちから生命の美しさと輝きを感じる。


南アフリカは、不毛の高山地帯で1年のうち数週間だけ一面 “花の絨毯” に覆われたような絶景になる「奇跡の2週間」を表現。人種差別の撤廃、人種の融和を「奇跡の花園」になぞらえて描いたという。


・アメリカ

アメリカは50州からなる国のイメージを「州の花」で表現。大統領をアメリカン・イーグルとしてデザインし、アメフトやハリウッド映画、自由の女神等を州の花の中にちりばめて描いている。


アルゼンチンは太陽、ナショナルカラーの青と白、アンデス山脈のロスグラシアレス氷河から流れ出る豊かな水資源と、イグアスの滝への水の流れを……糸の段階から計算して織り上げたという。しま模様もアルゼンチンタンゴのリズムに合わせて構成されているのだとか。


チリは「地球の歴史そのもの」と言えるほどの自然や気候が存在しているらしい。海底の躍動と波の荒々しさ、大陸の動き、海底マグマの熱感、重なり合った地層、アンデス山脈からのオーロラや宇宙まで芸術的視点で制作したそうだ。すごい迫力……!


プエルトリコは大きな波のパイプラインで情熱的な雰囲気を表現。セスペシアグランドフローラの花が全体を美しく飾り、世界遺産「エルモロ要塞」が波から見えるデザインとなっている。躍動感すげええええ!


ペルーは天と地、過去と未来、昼と夜という対比がテーマ。地上のマチュピチュ遺跡、天に舞うハチドリとフェニックス、太陽を表す虹と夜の天の川……ペルー原産の染料「コチニール」を使用して美しく仕上げた作品だ。


・ヨーロッパ

アルバニアは勇猛果敢に戦った伝説の王様「スカンデルベグ国王」の帰還がテーマ。家族が待つ様子も描かれている。伝説の王様、最高にカッコイイ。


イタリアは、アーチ越しに美しい風景を写し込むよう描かれている。全体として中世イタリアのルネッサンス時代の栄華を表現したのだとか。レオナルド・ダ・ビンチのヘリコプターが飛ぶ姿にも注目。


スペインは太陽の陽射しをスペインカラーで表現し、光の角度は首都マドリードの緯度と合わせるという絶妙過ぎるテクニックを披露。多くの専門家から高い評価を受けた作品なのだとか。


フランスのコンセプトは潔さと高潔さ。花言葉から白い百合を選んだという。自由で伸びやかで可憐な美しさを誇り、高潔で純白なフランスをイメージした作品である。


ロシアのデザインは、エルミタージュ美術館や『白鳥の湖』を踊るバレリーナと白鳥、また宇宙船ソユーズなども描かれている。文化・芸術・科学技術の大国であることを豪華に表現したそうだ。


・難民選手団

難民選手団のデザインは「祈り」が元となっている。心の中に秘めた平和の願いを表現するため、あえて裏地に模様を描くことを選択。羽衣から透ける平和への祈りを感じ取ってほしいとのこと。


・どこかで一気に披露してもらいたい

着物を制作して国際行事で披露し、平和の願いを世界中に届けようとするKIMONOプロジェクトはいかがだっただろうか。国の数だけ個性豊かな着物があるので、興味を持った方は公式サイトでデザインをチェックしてくれ。世界中の着物が大舞台で注目されることを願っている。

参考リンク:一般社団法人イマジンワンワールド
執筆:砂子間正貫
Photo:RocketNews24.
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