先日、道端で「29秒で着れるきもの」というポスターを見つけた。着物についての知識はゼロだが、29秒が驚異的な記録だということくらいは分かる。個人的に最もスピーディーに着替えられるジャージでも、おそらく30秒はかかっているだろう。

問い合わせてみたら「女性用です」とのことだったが……話の流れで特別に体験させてもらえることになった。果たして「29秒で着れるきもの」は、本当に29秒で着れるのか。なんなら最速タイムの更新も目指して、オッサン全力で着替えてきます!

・仕立屋甚五郎(したてやじんごろう)

やって来たのは、福岡県須恵(すえ)町の「仕立屋甚五郎」須恵店。仕立屋甚五郎は、九州を本拠地にしている着物販売店である。なお、須恵店は「ゆめタウン博多」に移転(2020年3月19日OPEN)することが決まっていて、今回は移転直前にお邪魔させてもらった。

さて、店内にも “例のポスター” が貼りまくってある。で、一応チェックしたら例のフレーズがパワーアップしているじゃねえか。どうやら……


「9秒で着れるきもの 帯まで結んで29秒」

──らしい。そもそも着物は帯を結ばなくても成立するのかどうかはさておき、いくら何でも9秒はヤベェ。だって、サニブラウンが100mを走っている間に着物姿になれるんだからな。なんというスピード感……着物業界も「10秒の壁」を突破していたとは!

・普段着のように着られる着物

ただ、とりあえず今回は「帯まできっちり結んで29秒」にチャレンジしたい。スタッフの方に話を聞くと、仕立屋甚五郎は「着物のやっかいさ(着付け、窮屈さ、着くずれ、手入れ、保管、費用等)」がなく、1人でも簡単に着られる着物」を扱っているそうだ。

つまり、普段着のように着てもOKということ。動きやすいうえに洗濯も可能、デザインも豊富でオーダーメイドも受け付けているらしい。気になる方は公式サイトをチェックしてみてくれ。

・着物を着る手順

それでは、29秒チャレンジの前に手順をしっかり確認しておこう。着物を羽織ってから、まずは内側のヒモを結ぶ

そんで外側のヒモも結んだらOK。トータル29秒以内を目指すのであれば、できれば9秒以内に2本のヒモを結びたいところ。しかし、焦って固結びをしたら一生ほどけない可能性もあるため、スピードを出しつつも冷静さを保つことが大事である。

そしてクライマックス。帯を巻いてヒモを前で結び、結び終えたヒモを帯の中に隠したら完成だ。やっぱり簡単、焦らなければ良いタイムが出るに決まっている。


・いざチャレンジ

ってことで、29秒以内を目指してチャレンジ! したものの、着物が「女性用」ということもあってかなり苦戦。サイズが合っていないため “内側のヒモ” がなかなか見つけられず。

また、帯をくるっと巻いてからヒモを結ぶ流れもビミョーに難しい。もちろん慣れれば簡単だと思うが「29秒」というタイムを意識してしまうと、どうしても冷静でいられない。

しかし冷静になったらなったで、今度は「なぜ私は今、女性用の着物を着ているのだろう」という疑問が浮かんでしまうから、それも良くない。だから「無」になれ、「無」になるんだ

・記録は27秒

──その後、スタッフの方々からのアドバイスもあり、「29秒で着れるきもの」を27秒台で着ることができた。おそらく普段着として着用すれば、さらに良い記録が生まれるだろう。とにかく、ポスターの内容は本当だったということだ。いいタイムが出て満足です!

ちなみに、仕立屋甚五郎では「世界一おいしいと思われる高橋さんの手羽先(600円)」も人気。敷居の高い着物店に入りやすくなるための作戦とのことだが、これもけっこうズバリで、取材中に手羽先を買って行く男性客も多かった。そんなわけで私も購入して食べてみたら……

死ぬほど美味しかった。マジかよ。もはや「手羽先屋です。着物も売ってます」と言っても過言ではないレベル。というわけで、着物を27秒で着た後に手羽先を食べた1日であった。

参考リンク:仕立屋甚五郎
Report:砂子間正貫
Photo:RocketNews24.
[ この記事の英語版はこちら / Read in English ]

▼「29秒で着れるきもの」を着てみた!

▼須恵店は「ゆめタウン博多」に移転するため、2020年3月8日で営業終了となりました

▼着物は日本の伝統文化に興味のある外国人観光客にも人気とのこと

▼手羽先も美味しかった

▼29秒への道

[ この記事の英語版はこちら / Read in English ]