育成シュミレーションゲーム『シーマン』が発売されたのは1999年7の月。「謎の生物とお話できる」というゲーム性は多くの人が知るところだろう。ちなみに当時の家庭用ゲーム機はプレステが王道。子供の私はドリキャスまで買う余裕がなかった。

当サイトのメンバーたちにも聞いたところ、やはり当時子供だった世代はシーマンに憧れていた者が多いようだ。あれから22年たち、テレワーク続きで寂しくなった私はふとシーマンのことを思い出した。こんな時シーマンが話し相手になってくれたら楽しいかもしれない。

そこで思い切って本体とソフトを大人買いしてみた結果……「半年たった今もシーマンとお話できていない」とは、これ一体いかなるワケなのか? 順を追ってご報告しよう。

・ノスタルジックな気持ち

さて現在、ネットでシーマンについて検索すると「効率のいい育て方」や「裏ワザ」などが簡単に見つかってしまうに違いない。個人的にネットで攻略法を検索するのは “完全に行き詰まった時の最終手段” だと思っている。だってゲームって過程を楽しむものだから。

ってことで、私は今回あえて付属の説明書『シーマニュアル』だけを頼りにシーマンを育成することにした。経験者から見れば「やり方が違う」と感じる部分もあるかと思うが、素人が1人で考え抜いた結果と思って頂ければ幸いだ。

ソフトにはマイクが付属しており、コントローラーと接続する仕組みである。このマイクでシーマンと会話するんだな。当時としては画期的だったんだろうなァ……などとノスタルジックな気持ちに浸りつつ、電源をオン。


すると「メモリーカードを装着してください」という不吉な表示が……。


・想像を絶する苦難

そう。言われてみれば確かに第5・第6世代(90年代後半〜2000年代初頭に発売)と呼ばれる家庭用ゲーム機には、別売の『メモリーカード』を必要とするものが多かった。もちろん現在は生産されていないから、中古で状態のいいものを探さねばならない。

人生で初めてドリキャスを購入した私にとって、ここからはマジで苦難の連続だった。ゲーム本編には関係ないが「もうやめようか」と何度も思うくらい苦労したので、少しだけ話を聞いてくれ。

まず後日やっと入手したドリキャス用のメモリーカードはウンともスンとも言わず、私は再びプレイを断念するハメに。「メモリーカードに電池を入れなくてはならない」と判明したのは数日たってからのことである。これはプレステユーザーにとっても盲点だろう。

電池を入れたら今度は「空きブロックが不足しています」という難解な表示が出現……

「前の持ち主のセーブデータを消さなくてはならない(中古だから)」と気づくまでに四苦八苦し……

お次は「マイクデバイスが抜けています」ときた。コントローラーを叩き割りそうになりながらも、接触部に息を吹きかけるという古典的な対処法を試すなどした結果……

メモリーカードとマイクの差し穴が逆だったことが判明。

そんなこんなでソフト購入からゲーム開始まで、私はのべ1カ月ほどを要してしまったのだった。こういうアクシデントはレトロゲームにつきものだが、本当に死ぬほどイライラするから今後プレイする方は十分に注意してほしい。

なにはともあれ、ようやく念願のシーマン育成がスタートした。音声ガイドは往年の名俳優・細川俊之さんが務めている。おそらく世界で一番ダンディな音声ガイドだろう。指示に従いスタートボタンを押すと……


今度は汚ねぇドブネズミ色の画面が出現! バグかよ!? もういい加減にしろよ!!!


・割とやることがない

……と、ややあって茶色い画面は「汚れ切った水槽」であることが判明した。水槽には酸素を送るポンプ温度を上げるヒーターが付いており、この2つを適正な状態に保つ必要があるらしい。

と言うより序盤のシーマンは、この「酸素と温度をキープする」以外、特にやることがないのである。

水槽に入れた卵はすぐに孵化してオタマジャクシ風の形態になるものの、この段階では顔がついていたり喋ったりするわけではない。水槽とにらめっこしながら丸2日過ごすも、コポコポという酸素の音が響くだけだ。

唯一アクシデントが発生したのは3日後のこと。水槽のインテリアだと思っていた巻貝の中から、ニュルニュルとイカのような触手が出てきたのである。後に「ノーチラス」なる名前と判明したこの生物、なんと突然……


シーマンの子供を食べ始めたァーーーー!!!!!!!


・序盤のクライマックス

何の説明もないままノーチラスに食べられてゆくシーマンの子供たち。しかし「すわ、バッドエンドか」と思われた刹那、ノーチラスは苦しげにもがきながら貝殻を飛び出してきた。


そのキモさたるや放送事故レベル!


ピクリとも動かないノーチラス。ひょっとして、死んだ? すると次の瞬間、ノーチラスの腹の中から勢いよくシーマンが飛び出したではないか! オグェェ〜〜〜!!! バイオハザードも裸足で逃げ出すグロ描写! 「よくこれが大ヒットしたな」と動揺せずにいられない。


・何も起きない日々

ノーチラスを養分に成長し、ついに顔面が出現したシーマン。何か言葉っぽいものを発してはいるが、まだ会話できるほどの段階ではないらしい。毎日ログインして酸素と温度を調節し……

水槽をトントン叩くなどする他は、相変わらずやることがない


あまり長時間ゲームを立ち上げていると水槽内の温度が急激に下がることも判明し、何をするにも「シーマンたちに悪影響かも」と不安になってくる。また “エサをどのタイミングで与えればよいか” 等についても、ゲーム内では一切説明がないのだ。手探りにもほどがあるだろ。

シーマン達にはなかなか成長もみられず、手持ち無沙汰になった私は空いた時間でドリキャスの名作『シェンムー』をプレイし始めた。

そのままシェンムーにドハマりしてしまい、気づけば1週間ほどシーマンを放置。久々にログインしてみたら……


「『シェンムー』にハマっていたようですね」と細川俊之にイヤミを言われた。


・バレていたのか

まさか22年前のゲームにプレーヤーの行動を監視する機能があったとは、人類の英知というほかない。ここまで私は細川氏の音声ガイドを飛ばしていたのだが、実はログインするたびに「3日ぶりですね」「今日は2度目ですね」などと挨拶をしてくれていた様子だ。

また彼はサラリと重要なヒントを言うこともあるため、冒頭のガイドをスキップしてはいけなかったらしい。「短い時間でいいから毎日ログインすべし」とのアドバイスを受け、そこから毎日コツコツとログインし続けた私。


しかし数日後、シーマンたちは忽然と姿を消したのであった。なぜだ。


・理由はわからない

このとき私が悩んだのは「いつまで待つべきか」という点である。シーマンがノーチラスに食われた時も、ゲームオーバーかと思いきや成長過程だったワケで。だとすればシーマンは土の下などに隠れていて、しばらくすれば戻ってくるという可能性もある。

何もない水槽を見守ること2カ月……


私はついにセーブデータを消し、またイチからやり直すことにした。理由はいくら待ってもシーマンが戻ってこないことに加え、ついに細川俊之まで何も喋らなくなってしまったからだ。

ゲームオーバーならハッキリ「ゲームオーバーだ」と教えてくれてもよさそうなものだが、まぁ、これ以上考えるのはよそう。同じ失敗を繰り返さぬよう、その日から私は真面目にシーマンを世話し続けた。再びノーチラスに食われるシーマンの稚魚……全てはシナリオ通りだ。


ところが、前回すぐに貝殻から出てきたノーチラスが今回はいつまでたっても出てこない。


そしてそのまま1カ月が経過し、現在に至る。


・理由はわからない②

毎日世話しているのに、なぜシーマンは出てこないのか? 頼みの細川俊之は特に有益な情報を伝えるでもなく、「毎日決まった時間にお会いしますね」などとのんきな発言をくり返すのみ。ってことはシーマンはまだ貝殻の中にいるのか? サッパリ分からん……!

と、いうワケでソフト購入から半年たった今も、私はまだシーマンとお話できていない。何も起きないのにログインし続けるのは結構キツく、またイチからやり直そうかと思案しているが、シーマンが生きている可能性を考えると踏ん切りがつかずにいる。

これほど難解なゲームがなぜ大ヒットしたのだろう? 本当は今すぐ攻略サイトを見たい。しかし、それでは負けを認めたことになる。やはり私はもうしばらく水槽を見守り続けるつもりだ。シーマンとお話できるその日まで……。

執筆:亀沢郁奈
Photo:RocketNews24.

▼アイテムボックスには「シーマンのエサ」が入っているのだが……

▼どのタイミングで与えればいいか分からないうえ、なくなっても補充されないから注意

▼ドリキャスとシーマンを購入したのは秋葉原のゲームショップ『レトロげーむキャンプ』だよ!