『アヒージョ』はバルなどの台頭によって日本でも知名度を得たスペイン料理だ。アヒージョとは本来 ”オイルが主役で具材はオマケ” のはずだが、日本人には「油を味わう」という習慣があまりない。つい具材ばかりを食べてしまいがちである。

そんな日本人の好みに合わせ、アヒージョが日本独自のアレンジをされていった結果……わが国で今『アヒージョの定義』が少々おかしなことになっている様子なのだ。あなたの認識は大丈夫だろうか?

・アキバで見つけた珍品

今回、問題となるのは秋葉原で見つけた『卓上アヒージョメーカー』なる商品だ。購入価格は2728円(税込)。


っていうかコレ……



『たこ焼き器』やないか!!!!


「大阪ではどの家庭にもたこ焼き器があるらしい」という話はかつて “ご当地びっくりネタ” として驚きをもって伝えられたものだが、その後たこ焼き器は全国で急速に普及。今では『ベビーカステラ』や『シュウマイ』といった多くの “たこ焼き器活用レシピ” が登場している。

『アヒージョ』も有名なたこ焼き器活用レシピだ。具材が追加しやすく油も無駄になりにくいという、まさに日本人にピッタリのアイデア。しかし……よく考えてみてほしい。

アヒージョとは本来「小鍋(または皿)にタップリそそいだオイルで具材を煮込む料理」のこと。間違ってもたこ焼き器のように複数の円形で仕切られていたりはしない。たこ焼き器を使ったアヒージョはあくまでも ”活用法” なのであって、 ”アヒージョそのもの” では決してないのだ。

にも関わらず、たこ焼き器に酷似したマシーンが『アヒージョメーカー』として売られている現状……これは「アレンジが本家を追い越しかけている」ということなのではないだろうか? ……えっ? 「円形に仕切られた皿でアヒージョを食べたことがある」って?


それはひょっとすると、サイゼリアの『エスカルゴのオーブン焼き』ではないか……?


サイゼのアレは『エスカルゴ皿』と呼ばれるもので、フランスでエスカルゴを焼く際に使用する皿。アヒージョとは無関係なのだ。つまり分かりやすく整理すると現在……


・『アヒージョ』はスペイン料理
・『エスカルゴのオーブン焼き』はフランス料理
・『サイゼリア』はイタリアンレストラン
・『アヒージョ』を日本風にアレンジしたら『エスカルゴのオーブン焼き』に酷似した


……という、イギリス人もビックリの非常にややこしい事態になっているのである。


・逆にたこ焼きを焼いてみた

しかしまぁ、何料理だろうとおいしければ問題ない。……ということでアヒージョメーカーの性能を確かめるべく、とりあえずたこ焼きを焼いてみることにしよう。

たこ焼き器と唯一異なるのは「ひとつの穴が大きめ」という点。通常のたこ焼きの2〜3倍ほどだろうか。うまく熱が通るか不安だったが……


メチャクチャ綺麗にできた!


サイズが大きいためか、俗に言う「中フワ外カリ感」を普通のたこ焼きよりも強く感じる。本当はアヒージョメーカーであるにも関わらず、コレはたこ焼き器として相当優秀かもしれない……!

……と思ったら、アヒージョメーカーには「アレンジ方法」として、しっかりと『たこ焼き』の名が記されていたのだった。

せっかくなのでアヒージョも作ってみると、これがなかなか絶妙なサイズ感。温度調節の必要がないし、他にも色々な使い方がありそうだ。我が国におけるカレーやラーメンだって、元々は異国の料理をアレンジしたものである。このさいアヒージョでもたこ焼きでもいいから、どんどんイイ感じに進化しておくれ〜!

Report:亀沢郁奈
Photo:RocketNews24.

▼サイズ感はこれくらい