あまり大きな声でお話する内容ではないのかもしれないが、私、P.K.サンジュンが “ヤツ” の存在に気付いたのは20年ほど前だっただろうか。くしゃみをした時、また「オエッ」とえずいたときなどに稀に口からポロリと小さな小さな2~3ミリの黄色いツブが飛び出してくるのだ。

なぜそうしたかはわからないが、ニオイをかぐとツブの臭いこと臭いこと! 特にツブを潰したときに発するニオイはまさに “悪臭” そのものである。俺の体からこんなに臭いものが出てきた……!! そしてそのツブは今でも時折、ひょっこりと現れる。おい、お前は誰なんだ?

・ごく稀に出現するツブ

ツブと出会ってから20数年、私はこれまで誰ともツブの話をしたことがない。ツブの出現頻度は決して高くなく、忘れた頃にやってくる程度。ツブのことを隠していたというよりは、ニオイの割にその存在感が薄すぎて、純粋に忘れてしまうのだ。とはいえ、ツブの正体はとても気になるところだ。

私が推測するに、ツブの住みかは鼻の奥の奥の方、ノドとの境にあると思う。もしくはノドの裏側とでもいうべきであろうか? 普段は「いるな?」と感じることはなく、何かの拍子に存在に気付いても取り出すことは極めて困難。それこそ「カーペッ!」を繰り返してもツブが出てくる可能性は高くない。

・耳鼻科の先生に聞いてみた

で、つい先日のことである。娘の付き添いで耳鼻科に行ったところ、わずかに時間が空いた。なぜかツブの存在を思い出し「耳鼻科の先生なら正体は知っているのではないか?」と考え、突発的に質問をした次第だ。そして先生はアッサリとツブの正体を教えてくださった──。


──先生、全然関係ない質問していいですか? 本当に全然関係ないんですけど。

「はい、どうぞ」

──あの、娘じゃなくて私なんですが、たまに鼻の奥の奥の方からツブが出てきませんか? 黄色いときもあれば白いときもあるんですけど、くしゃみをしたりするとたまーに出てくるメチャメチャ臭いツブです

「あぁ、膿栓(のうせん)ですね」

── の、のうせん……っていうんですね。

「膿むという字に栓抜きの栓と書いて “のうせん” と読みます」

──あれがたまに出るんですが、何か体が悪かったりするのでしょうか?

「いえ、人間なら誰でも出来ます。特に問題ありません」

── そうなんですね。そもそもアレは何なんですか?

「一言でいえばウィルスの死骸ですね」

── ウィルスの死骸……!

「空気中には様々なウィルスがいることはご存じですよね? 人体に無害なものもあれば有害なものもあります。そのウィルスが鼻や口を通して侵入しようとするとき、防波堤になるのが扁桃腺(へんとうせん)です」

── わかります。

「膿栓は扁桃腺で食い止められたウィルスの塊で、人体に影響はありません。ただし、死骸は死骸なのでニオイは強烈です」

── なるほど。膿栓が出来ないようにする予防はないのでしょうか?

ありません。ただし、乾燥すると膿栓が多くできる傾向があるので、特に冬場はこまめに水分補給をした方がいいでしょう。それでも膿栓が出るということは、扁桃腺がウィルスを防いでくれた証拠ですから、そこまで深く考える必要はないですね」

── もしかしたら自分だけかと思っていたので安心しました。

「あまりにも膿栓が大きくなりすぎて自分でも口臭に異常を感じたら、それは耳鼻咽頭科に相談してください。ピンセットなどで取り除きますので」

・人体に影響はない

膿栓。あいつの正体は膿栓という名のウィルスの死骸であった。先生いわく人体に影響はないそうだが、気になる方はこまめに水分を補給するといいかもしれない。ただし、それでも100%膿栓を防ぐことは不可能らしいので、あまり気にしすぎず「扁桃腺が頑張った証拠!」くらいに考えておいた方が精神衛生的にはいいだろう。

というわけで、長年の謎だった黄色いツブの正体が判明した。あれだけ臭いのに、膿栓が出てくると必ずニオイをかいでしまうのは何故なのか? しかも数年に1度レベルの超大物と出会うと妙に嬉しくなるのは何故なのか? おそらく私が変態だからではなく、それも人体の神秘なのであろう。

Report:P.K.サンジュン
Photo:RocketNews24.