本日2020年8月14日の金曜ロードショーは『となりのトトロ』だー! 何度も放映されているが何度見ても名作。この時期のスタジオジブリ作品には、そういったエバーグリーン(Evergreen)な魅力が詰まっていると言えるだろう。

しかし、ちょっと飽きちゃったなーという人は、絵コンテを見てみると新たな発見があるかもしれない。『となりのトトロ』の絵コンテには、結構劇中では語られない秘密が書かれているのだ。エンディングのサツキとカンタってこんなこと話してたんか……!

・出会いは最悪

や~い! お前ん家ー!! おっばけやーしきー! 何度見てもサツキとカンタの馴れ初めは味わい深い。そんな初々しい2人も、物語が進むにつれ次第に打ち解けてくる。迷子になったメイを探すシーンでは、サツキはカンタのことを「カンちゃん」と呼んでいる。

なんだこのくすぐったい感じは。ちなみに、このシーンでカンタはサツキのことを「サッ(ツ)キー!」と詰まって呼ぶのだが、これは宮崎駿監督の指示のようで、絵コンテのセリフには「サッキー(サツキではない)」とハッキリ書かれている。

・カンタの行動の謎

で、同シーンでカンタは「俺かわりに七国山に行ってやるから、お前は家に戻れ」とサツキに言う。しかし、謎なのは、エンディングでカンタがばあちゃんと一緒に道を歩いていることだ。カンタ、お前サツキに男見せて七国山行ったんと違うかったんか? 口だけか?

そんなカンタの行動の秘密がエンディングでのサツキとの会話で紐解ける。劇中では、エンディングテーマが流れており、会話の声は消えているこのシーン。絵コンテによると、2人は以下のように話している。

サツキ「ありがとうカンちゃん」

カンタ「へへ……パンクしちゃって病院まで行けなかったんだ」

(スタジオジブリ絵コンテ全集3『となりのトトロ』から引用)

──そこで、映画の絵を確認すると、確かに田んぼの中でばあちゃんとメイが抱き合うシーンで、カンタのチャリの前輪がベコべコだ。えげつないほどパンクしている

・挫折を知ったカンタ

小学生の無鉄砲さを考えるに、おそらく、パンクした後も七国山に向かって漕ぎ続けたに違いない。少なくとも小学生の頃の私ならそうするだろう。

しかし、カンタは「無理だ」と途中で気づいて帰ってきた。エンディングのカンタは挫折を知った後なのである。そのためか、私にはカンタが男の顔をしているように見えて仕方がない。カンタ……お前、ようやったのう。

・トトロ語

さらに、絵コンテには大トトロの気持ちなども書かれている。まずは、メイが初めて大トトロと出会うシーン。寝ている大トトロにメイが話しかけ、「トトロ」と名前を聞くシーンだが、この時トトロは全く名乗っちゃいなかった

メイ「あなたはだあれ? マックロクロスケ?」

大トトロ「ネムイヨーッ」

メイ「グワァァァアアア!(トトロの真似)」

大トトロ「あんたもネムイの?」

メイ「トトロ!! あなたトトロっていうのね」

大トトロ「わかりません」

メイ「やっぱりトトロね」

(スタジオジブリ絵コンテ全集3『となりのトトロ』から引用)

──続いて雨の中のバス停でのシーン。メイを背負うサツキの隣にトトロが目を見開いて立っている。この登場シーンのトトロはひと際何を考えているかわからず、未確認生物感があって私が子供の頃は若干不気味さを感じていた。しかし、絵コンテによると、この時トトロは、頭に乗せた葉っぱから鼻の頭に落ちる雫に見惚れているのだそうな

サツキ「トトロ?」

大トトロ「なんだっけ? トトロって……」

(スタジオジブリ絵コンテ全集3『となりのトトロ』から引用)

──相変わらず、自分がトトロだと分かっていないトトロ。さらに、サツキが傘を渡した後、傘と雨粒でトトロが遊ぶシーンのリアクションについては以下の意味があるようである。

数滴の雨粒の後の二カーッ → これはステキな楽器だ……
トトロが跳ねて大量の雨粒の後のヴォロロロロー! → 感極まってる

──続いてトトロが出てくるのは、庭に撒いた木の実の芽を出すシーンだが、ここは特に鳴き声の意味が書かれていない。ただし、駒に乗って「ヴォロロロロ」と叫んだ後、地上すれすれをすり抜けて風が起こるシーンには「そうです大トトの声こそ風なのです!!」と書かれている。このシーンはトトロ的には遊んでるようだ。

・ラブコメ化

そして、最後にトトロが登場するのが、メイが迷子になった後。サツキが大トトロに助けを求めるシーンだ。この時トトロは泣くサツキを見て、二カーッと笑った後「ヴォロロロロー!」と叫ぶ。

クライマックスの盛り上がりもあって、私はこのシーンをずっと奇跡が起こって気持ちが通じたトトロがサツキに「任せて」的なことを言ってるのかと思っていた。しかし、絵コンテによると、この時のトトロの気持ちは……

大トトロ「かわいい~~」

(スタジオジブリ絵コンテ全集3『となりのトトロ』から引用)

──言われてみたらトトロの頬が少し赤くなっている。カンタとサツキだけかと思いきや、まさかのトトロも絡んできているなんて。もはや『となりのトトロ』はラブコメと言っても過言ではあるまい。高校生になった3人を見てみたいところである。キャラの立ち位置と気持ちだけ整理すると『ちはやふる』みたいになりそうだ。

・純粋に美しい絵コンテ

もちろん、今回ご紹介した事実は、マニアにとっては周知のことかと思う。だが、初めて絵コンテを見た私は『となりのトトロ』の新たな楽しみ方を発見することができた。

まあ、そうでなくとも、宮崎駿監督の細かい動きの分かる絵コンテは美しく、純粋に見ていて楽しいのでオススメである。いやあ、色んな楽しみ方ができる『となりのトトロ』って本当にいいもんですね。

執筆・イラスト:中澤星児
Photo:Rocketnews24.