どうでもいいことかもしれないが、私は「右利き」だ。右手で箸を持つし、右手で文字を書く。そんな私は、小学生の頃から左利きの同級生に対して、憧れと嫉妬が入り混じった複雑な感情を抱いていた。彼らの左手で文字を書く姿がアーティスティックに見えたからである。

──時は流れて2020年春。外出自粛要請が続いている今こそ「左手で文字を書くチャンスなのでは」と確信した私は、約1カ月前から練習を開始。30日が経過してどのくらい上達したのか報告するぞ。「両利き」に憧れている方はぜひ参考にしていただきたい。

・本をノートに書き写す

ちなみに、右手を使えば左脳が活発になり、左手を使えば右脳が活発になるという。細かい説明は省くが、左脳派は研究者に多く、右脳派は芸術家に多いらしい。やはりアーティスティックなのだ、左手使いは。右脳を鍛えてアーティストになるぞ。

練習方法は簡単。本を1冊選んで、朝食後に1ページずつノートに書き写すだけ。今回は外出自粛中に放浪気分を味わうべく、高橋歩さんの『ラブ & フリー』を選んだぞ。

んで結論から言うと、最初の何日かは左手が思うように動かずイライラしてしまったが、慣れてくると朝イチの作業で頭がスッキリするようになった。もしかしたら写経と同じ効果があるのかもしれない。

・右手と左手の違い

さて、左手で文字を書こうとすると、どうしてもフニャフニャになってしまう。直線もまともに引けないのだ。なんでも右利きの人は、左から右へペンを “引く” のに対し、左利きの人は “押す” ことになるため、力の入れ具合がわからず「ミミズ」のような線になるらしい。

練習をスタートして5日目、なんとなく “読める文字” になってきた。力加減も慣れてきたため、フニャフニャな線が目立たなくなったぞ。ただ、反対方向に「はね」てしまう初歩的なミスもあり。なぜだ左手、どうして反対側にはねてしまうんだ。

・「はね」と「はらい」

2週間が経過した頃には “ほぼ右手” レベルの文字が書けるようになっていた。ただまあ、かなりゆっくりと書けば、である。何が難しいかといえば「はね」や「はらい」時の、ノートからペンを離す瞬間の力加減。スッと力を抜くと変な方向にはらってしまうのだ、うーむ。

結局、その後も「はらい」には苦労しているし、左手の練習を積めば積むほど「右手の偉大さ」を実感する。右手でスラスラ文字が書けると「右手さんスゲェェ!」と思わずうなってしまうのだ。高速かつ精密な動きをする右手先輩の実力を完全にナメてたな。

そんなこんなで1カ月が経過。まだ朝イチの書き始めは文字が固く、徐々に左手の力が抜けてキレイな文字が書けるようになる。同じ文字を3つ比べると違いが分かりやすいだろう。また、最初の頃よりストレスなく書けるようになり、文字を書くのが楽しくなったぞ

・成長が楽しい

──というわけで、左手の「フニャフニャなミミズ文字」が1カ月の練習で、ある程度きちんとした文字を書けるようになった。意味は無い……かもしれないけど、趣味ってだいたいそんなもんだよね。もっと練習して「両利き」を目指そうと思う。

Report:砂子間正貫
Photo:RocketNews24.