現在、日本中でトイレットペーパーが入手困難となっている。当編集部でも、間も無く在庫ゼロを迎える者のなかにはもうインド式で乗り切るしかないと覚悟した人もいるくらいだ。

さて今回のトイペ不足は「新型コロナウイルスの影響で日本からトイレットペーパーが消える」というデマから不安に駆られた市民が一斉に買い占めに走ったため起きたものだと言われている。デマが引き起こしたパニックといえば、こんな事件もあった。根も葉もない噂から金融機関で取り付け騒ぎが置き、倒産しかかったと言われる「豊川信用金庫事件」である。

・デマが原因で金融機関が破綻寸前に

1973年、愛知県にある豊川信用金庫事件。詳しくは教科書や本などでも解説されているが、ザックリおさらいすると



豊川信用金庫が倒産するという情報が流れる

不安に駆られた預金者が預金をおろそうと殺到、取り付け騒ぎに。

倒産の情報は全く根も葉もない噂だった。

警察の調査により、噂の根源は3人の女子高生と判明。

しかもデマ発生源が悪意をもったものではなく、通学中のたわいないおしゃべりだったというのが驚き。噂を聞いた大人も不安と善意からあっという間に情報を拡散させ、結果として1週間ほどで20億円以上の預金が引き出されたという。

それまで問題なく運営されていた金融機関が、デマにより短期間で本当に倒産しかかったのだ。

・事件の話を嫌になるほど聞かされた

……という話を、子供の頃、私は親からこれでもかというほど聞かされていた。なぜ親が何度も豊川信用金庫事件の話をしたのかは不明だが、当時、小学生ではあったがメチャクチャ怖いと思ったのをよく覚えている。

ディズニー映画『メリー・ポピンズ』で見た銀行の取り付け騒ぎのシーンが印象的だったこともあり、とにかく「デマ怖い」「いい加減なこと、真偽がよくわからないことは人は言っちゃいけない」「悪気はなかったじゃ済まされないこともある」と深く胸にきざんだものだ。

・トイペのデマも語り継いでほしい

さて話は戻って、今回のトイレットペーパー品薄の件。舞台はTwitterでデマに何か意図があったのかなかったのかは不明だが、微妙にリアリティがある話に、多く人が不安に駆られたことだろう。

いまもトイレットペーパーがなくて困っている人や施設もあれば、ただでさえマスク不足で大変ななかドラッグストアなど取扱店のスタッフの心労たるや想像するだけでも胸が痛む。

さらにそこに人の足元を見るような転売ヤーが登場してカオス。いろんな人が本来ならのなかったはずのストレスにさらされてしまったのではないだろうか。「デマによるパニック」のひとつとして語り継ぎたいものだ。もう教科書に載せてほしいレベル。

良識のある人なら「デマを流さない」というのは言わなくてもわかっていること。私たちが注意しないといけないのは真偽がよくわからない情報を安易に拡散させないということだろう。しょーもないことに振り回されるのはもうたくさんですよね。

執筆:沢井メグ
Photo:Rocketnews24.