一連の新型コロナウイルス騒動は未だ収束の気配を見せず、様々なイベントや興業が中止を余儀なくされている。そんななか日本相撲協会は通例の大相撲大阪場所を今月8日(日)から、史上初の “無観客” で開催することを発表した。
大相撲における「懸賞」とは、企業や団体がその取組みの勝者に賞金を提供するもの。その対価として企業側は宣伝の場を得る……つまりは「土俵を懸賞旗が回る」おなじみの光景へと繋がるわけだ。
CMに力士が起用されることでおなじみの『永谷園』が本場所に懸賞をかけていることは、相撲ファンならずとも広く知られるところである。今回永谷園は無観客での開催が決まった大阪場所においても、平常通り懸賞をかけることを発表。賞賛の声が多く上がっているのだ。
・この件の何がスゴイかって
無観客と懸賞との関係性についてピンとこない方のために、この永谷園の決断がいかに「英断」であるかを簡単に説明しておこう。ここで重要なのが懸賞旗はあくまでも “会場にいる観客に向けた” 広告であるという点だ。
テレビで大相撲中継を見ている視聴者が懸賞旗を目にする場合、それはあくまでも「たまたまカメラに映った」だけである。中継のカメラはあえて懸賞旗を映すことをしないし、現に会場へ行けばテレビ中継に映らないタイミングで登場している旗もたくさんあることが分かる。
また会場では「この取組みには◯◯から懸賞があります」等といったアナウンスが流れるが、これが中継の音声から流れることも偶然である。中継において重要なのは取組み解説であって、会場アナウンスはただのBGMなのだから。
つまり無観客は、企業側にとって「宣伝効果があまり期待できない」ということに他ならない。にも関わらず莫大な懸賞(1本につき7万円。永谷園の場合1取組に複数本かかることが多い)をかけるという心意気がいかばかりか、少しでも理解いただければ幸いだ。
・永谷園の人にきいてみた
感動のあまり無意識のうち永谷園の「お客様相談室」へ電話していた私だが、快く今回の経緯を教えてくれたのは広報の方。
──無観客での本場所開催が決まったとき、永谷園では協議がなされたのでしょうか?
「どういった形で懸賞を出そうかという話し合いはありました。ただ “出すのをやめよう” という選択肢は、もともとなかったというふうに聞いています」
──どういった思いで方向性を決められたのですか?
「 “こんな時だからこそ力士の皆様の励みになれば” と考え、これまで同様に懸賞旗を掲出することとしました」
──懸賞の本数は?
「これまでの場所と同様で考えています。好取組を中心にその都度検討かけさせていただいています」
・全力で宣伝したい
電話を切るやいなや、私は会社最寄りのコンビニへ直行した。もちろん永谷園製品を買うためだ。
ところが……広報の方に聞いたオススメの「松茸の味 お吸いもの」はおろか、永谷園の代名詞たる「お茶づけ海苔」、なさそうでありそうな「麻婆春雨」や「チャーハンの素」も置かれていなかった。お茶づけは絶対にあると思ってた……!
「カップみそ汁」だけは5種類が販売されていたため、とりあえず全種類を購入しておくことに。
大阪場所15日間のチケット払い戻し金は10億円超とも報じられている。これは国技の危機であり、国技はみんなで守るものだ。その先陣を切った永谷園の決断を意気に感じる国民は今こそ「永谷園のお茶づけ」を食べ、応戦するべきなのではなかろうか。
今回の件を受け、人生で最高に「永谷園の商品を買おう」という意欲の湧いた私。この記事を書き終えたら大きめのスーパーへ行き、しこたま買い込むつもりだ。ある意味「宣伝しないことが宣伝になった」といえるのかもしれない。
Report:亀沢郁奈
Photo:RocketNews24.
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