2019年9月20日から11月2日にかけて開催中のラグビーW杯。ここまで日本代表は開幕2連勝を飾り、勝ち点9でプールAの首位に立っている。強豪のアイルランドに勝利したことでイケるんじゃないか──そんな雰囲気が漂っているが、安心するにはまだ早い。

なにせ、決勝トーナメントに進めるのは5カ国のうち上位の2カ国のみ。プールAは大混戦の様相を呈しているからだ。

・ラグビーW杯特有の勝ち点方式

まずは日本、アイルランド、ロシア、サモア、スコットランドの5カ国で争われているプールAの状況について簡単に説明しておこう。10月1日現在、前述したように首位は日本。それから勝ち点6のアイルランド、勝ち点5でスコットランドとサモア(得失点差でスコッドランドが3位)が追う。ロシアは2戦2敗で勝ち点0の最下位だ。

勝ち点9の日本が頭1つ抜けているように見えるが、混戦になっているのはラグビーW杯特有の勝ち点方式にある。サッカーであれば「勝ち3・引き分け1・負け0」とシンプルだが、ラグビーW杯は少々異なる。場合によっては負けても勝ち点を獲得できるのだ。以下、その詳細である。


勝利 → 勝ち点4
引き分け → 勝ち点2
敗戦 → 勝ち点0
4トライ以上 → 勝敗にかかわらず勝ち点1
7点差以内で敗戦 → 勝ち点1


すべてを満たせば最大勝ち点5を獲得できる。なお、全試合を終えて同じ勝ち点で並んだ場合は、「直接対決の勝者 → プール戦全体の得失点差 → プール戦全体のトライ差数 → プール戦全体の得点数 → プール戦全体のトライ数 → 抽選」で順位が決められる。

で、勝ち点1がなかなか曲者。アイルランドが日本戦で引き分けの可能性がゼロじゃないなか、ボールを蹴り出して試合を終わらせて負けたのも「勝ち点1」にこだわったから。つまり、アイルランドは残すロシアとサモアとの試合に勝つ自信がある……日本戦でリスクを冒して引き分けを狙うよりも、確実に勝ち点1を積み上げる方針に転換したのだ。

・日本優位だが……

そして9月30日に行われた「スコットランド vs サモア」の結果で、プールAはより混戦ムードとなった。初戦でアイルランドに敗れたスコットランドが34−0でサモアを完封。4トライ以上を挙げて勝利したことで勝ち点5を獲得した。

とはいえ、日本優位は変わりない。続くサモア、スコットランドに勝利すれば無条件で突破が決まる。考えたくはないが仮にスコットランドに敗れるとしたら、特殊な「勝ち点1」が明暗を分ける可能性もある。

・運命のスコットランド戦となるか

勝ち点1を巡る展開にしないためにも勝利することが何より大事。おそらくアイルランドは勝ち点16まで積み上げてくるはずなので、日本はサモア戦に勝つのはもちろんのこと、スコットランド戦にも負けられない。

思い返せば、スコットランドは4年前のW杯で10−45と大敗した因縁の相手。疲れや過密日程が敗因ともささやかれたが、またしても日本代表の大きな壁となって立ちはだかる。自国開催の今回、雪辱を果たすときだ。

グループステージで3勝1敗の好成績ながら、独特の勝ち点方式で呑んだ涙はもういらない。まずはサモア戦に集中。決して楽観視できる相手ではないが、日本代表は勝ち点5を上乗せしてスコットランドとの最終戦に臨みたいところだ。

執筆:原田たかし
Photo:RocketNews24.
イラスト:稲葉翔子