ロブスター、それは魅惑の食べ物。しかし、高嶺の花である。この前行ったお店でも、1尾5000円くらいしてたな。次はいつ食べられるんだろう……などと思っていたら、なんとロブスターがドーンッと1尾乗っているラーメンを1000円で提供するお店を発見した。

お店の名前は「オニソバフジヤ~プレミアム~」。モノマネ芸人の「HEY!たくちゃん」が店主を務めることで知る人ぞ知るラーメン屋だが、なぜ1000円でロブスターを提供できるのだろうか。そしてなぜ「HEY!たくちゃん」はラーメン屋を始めたのか、話を聞いてきた!

・3種の海老のハーモニー

1000円で食べられるロブスターラーメンを求めて渋谷センター街へ。そのお店は外壁にびっしりとグラフィティが描かれた、なんともストリートな雰囲気のビルに入っている。しかし、ラップバトルでも開催されてそうな見た目に反して、ビル内のテナントはほぼラーメン屋さん。

入り口でこのビルの名物・ラーメン屋の客引きに挟まれながら何とか3階まで上がると「オニソバフジヤ~プレミアム~」が現れた。お店にたどり着くまでのハードルが微妙に高い。

店内に入り、まずはお目当ての「ロブスター味噌らぁ麺(1000円)」を注文。どんなロブスターが出てくるのかソワソワしながら待っていると、ここで店主である「HEY!たくちゃん」が特別に厨房へ招き入れてくれた。広い厨房の中へ入ると、海老の濃厚な香りが迎えてくれる。

香りの元をたどれば、そこには「ロブスター味噌らぁ麺」に使われる海老油やスープたちが。海老油はオマール海老の足からダシがとられていた。

そしてスープは、これでもかというほどに海老の旨味を取り込んでいる。というのも、オーブン焼きしたオマール海老の頭、通常のオマール海老の頭に加え、甘エビの頭、さらには海老油のダシ用に使ったオマール海老の足を強力なプロセッサーで粉々に砕いたものまで入れているのだ。

そんな2種類の海老の旨味をしぼりとったようなスープに味噌が加えられ、調理が始まる。

それと同時に、オマール海老のエキスがギュッとつまった海老油で、今度は新たにロブスターが炒められ始めた。基本、ロブスターは海老油のみで炒めるのだが、使用する個体によっては肝臓などの部分が目立ち、そのままだと磯臭さが強くなってしまうらしい。

そこで登場するのが北海道のバターだ。加えることによって、臭いも調整できるのだとか。また、食材やお客さんの年齢などに合わせて微妙に調理法を変えることもあるそう。

ロブスターとともにチャーシューも炒められ、最後はガスバーナーで炙られる。匂いだけでも空腹をあおられるのに、いい焦げ色がつけられたロブスターとチャーシューを見せられてしまうと、もうたまらない。

ロブスターたちが丼に盛り付けられ、仕上げにロブスターとチャーシューを炒めながら新たな旨味を吸収した海老油が投入される。

そしてついに、「ロブスター味噌らぁ麺」の完成だ! ロブスターがロケットのように今にも飛び出しそう。1000円という値段から想像していたよりも存在感がある。

最初にロブスターからいただくと、小ぶりながらプリッとしている。その上、ロブスター自身の旨味と染み込んだスープや海老油があいまって、とてもジューシー。

スープがしっかりと絡む中太のちぢれ麺や、香ばしいチャーシューもロブスターに負けない美味しさ。

ラーメン全体の調和を考え、味噌に混ぜているものと同じ醤油を使って作られているという自家製メンマも、クセのない味わい深さ。

当然のようにスープまで全て飲み干し、あっという間に完食してしまった。美味しかった〜!

・モノマネ芸人にしてラーメン屋店主

さて、ここからはラーメンについて話を伺った。ご存じの人も多いように、店主の「HEY!たくちゃん」はモノマネ芸人だ。アゴ部分が切り抜かれた似顔絵を用いた「アゴモノマネ」をしている姿を目にしたことがある方も多いかと思う。「芸人さんなのになぜラーメン屋を?」と思いきや、そこにはモノマネ芸人ならではの理由があった。

なんと、ラーメンリポートの仕事中に「ラーメンの鬼」佐野実氏のモノマネをするようになったことがきっかけなのだ。役に入り込んでしまう「HEY!たくちゃん」は、趣味でラーメンを作り始めた。

やがて夜だけ既存のラーメン屋さんで佐野氏のモノマネをしながらラーメンを作るようになり……気づけばラーメン作りを突き詰めて、ついにはお店を出すようになったとのこと。凄すぎる。

ラーメン作りの場でも、「佐野氏ならこうするだろう」などと考えてしまうこともあったとか。ちなみに佐野氏とは師弟ではなく、あくまでお友達。お店をやるにあたってラーメンの味や心構えなどは、北浦和にある「娘娘(にゃんにゃん)」に惚れ込んで通いつめ、少しずつ吸収していったよう。麺やメンマのルーツは娘娘だそうだ。

そして失礼ながら、「なぜロブスターなどの高価な食材を扱うのか」も伺ってみた。すると……


「自分にできることを活かして、普段なかなか食べられないものと出会う場を提供したかった」


とのこと。独自のルートを使い、お店だからこそできる大量仕入れでロブスターやカニなどを安く入手。お客さんが手の届く価格で食べられる場を提供したかったというのだ。

実際、お店に来た小さなお子さんがロブスターと出会い、目を輝かせていたなんてエピソードも。しかし、もちろんそこには「現在ないポジションを生み出していく」という狙いもあるようだ。

「HEY!たくちゃん」自身は北海道出身で味噌ラーメンや甲殻類に馴染みが深いが、東京では味噌ラーメンを専門にしているお店が少なく「味噌ラーメンといえば絶対ここ」と皆が口を揃えて言えるような存在がまだない。

間違いなくマッチする「味噌と甲殻類」をひっさげ、カツカツながらも素材や調理法にこだわり「東京の味噌ラーメンの代表店になる」という野心を抱いているという。

渋谷センター街は場所名だけ聞くと好立地だが、ビルの入り口にはビル内にある別のラーメン屋の客引きがいる。つまり、お客さんが「オニソバフジヤ ~プレミアム~」へ行くにはその客引きたちをかきわけ、さらに3階まで上らなければならないというハードルがある。

そのため、まずは「入り口の客引きをかき分けてでも、3階まで上ってでも食べたい」と思わせるラーメン作りを心がけているそうだ。

見た目のインパクトだけで終わるのではなく、食材やお客さんを見て少しづつ味付けや調理法を調整するなど、キメ細やかな思いやりで作られていくラーメン。確かにそこには、入店までの多少のハードルを乗り越えてでも食べたくなる魅力があった。

・エビもカニも

「オニソバフジヤ~プレミアム~」には、今回筆者がいただいた「ロブスター味噌らぁ麺」の他にも「蟹味噌らぁ麺(1000円)」や、ロブスターや蟹を用いたドロッドロに濃厚なスープのつけ麺もあるようだ。

「世界に1杯しかないラーメンを提供し続けたい」と力強く笑う「HEY!たくちゃん」。他にないようなラーメンが気になった方は、ビル名物の客引きをかき分けてでも行ってみて欲しい。

・今回訪問した店舗の情報

店名 「オニソバフジヤ~プレミアム~」Twitter @heytakuchan2、Instagram @heytakuchan2
住所 東京都渋谷区宇田川町24-6 渋ビルヂング3F
営業時間 11:30~15:00、17:00~21:30(オープン後しばらくは変則営業のため、営業時間はツイッターまたはインスタグラムで要確認)
定休日 火曜日・木曜日

Report:伊達彩香
Photo:RocketNews24.