なぜ人間の体表には毛が生えているのだろう、いらないのに。なぜ頭髪は年齢と共に消えていくのだろう、必要なのに。このアンバランスな事実は多くの人間をフンガイさせる。天邪鬼な毛根は、人類の不器用さを端的に表しているようだ。

さて、ムダな前置きが長くなった。実は筆者、ヒゲ脱毛をしている。その期間は2016年末からなので、2年半を超えた。ヒゲ脱毛を経験した結論を言うと、ある程度快適になった一方、「一定期間内の完全な脱毛は難しいのでは?」とも感じている。

そこで約2年半の脱毛経験者である筆者から、ヒゲ脱毛を考えている読者へメリットと注意点をご紹介したい。また露出の多くなる本格的な夏を前に、全身脱毛を考えている人へ提言もできれば幸いだ。

さらに記事の最後に、ロケットニュース編集部へ大変な怒りもぶちまけているので、ぜひお付き合いください。


・ヒゲ脱毛のビフォーアフター

筆者は母親譲りの肌の白さと、父親譲りのヒゲの濃さのせいで、昔から悩んでいた。

大学に入る頃には、「毎日剃らないと青ヒゲが目立つ」という状態だった。友達には「夕方になって肌を触ると、新芽の息吹を感じる」と自虐していた。これらはヒゲにお悩みの方なら共感していただけるはずだ。

それからもヒゲに悩み続け、25歳を過ぎた2016年末、筆者は決断した。「ヒゲ脱毛しよう!」。施術院を訪れた筆者はさんざん悩み、いくつかあるコースの中から十数万円を支払って「4年間無制限で通い放題」を選択。それから憎きヒゲをレーザーで焼き尽くし根絶やしにするべく、約2カ月に1度のペースで施術院に通い続けた。

その結果、ヒゲがかなり薄くなった。

周りから「ヒゲ薄くなったね!」と言われたことはない。しかし自分では「かなりの変化」だと思っている。脱毛する以前より鼻下が薄くなり、あごの部分も(いびつだが)減り始めている。

筆者のビフォーアフターをご紹介したところで、読者に向けてヒゲ脱毛のメリットとデメリットをご説明したい。


・ヒゲ脱毛のメリットは4つある

ヒゲが濃いと毎日10分をムダにする。なぜか。電動シェーバーやカミソリなどで念入りにヒゲを剃らなくてはいけないからだ。濃ければ濃いほど時間が長くなり、24時間しかない毎日を圧迫する。

それが1日の終わりの風呂場での行為ならば「そんなもん大したことないだろう?」と言えるかもしれない。しかし濃い人は寝ている間に茂ってしまうため、翌朝また剃らなくてはいけない。つまりヒゲの濃い人ほど、誰もが忙しい朝に5分から10分の時間を取られてしまうのだ。

ところがヒゲ脱毛をすると、その煩わしさから解放される。もちろん筆者は完全に脱毛されたわけではないが、「今日はまあ剃らなくてもいいか」という選択ができるようになった。こんな余裕、脱毛する前はありえなかった。本当に素晴らしいことだと感謝している。

また筆者の場合、ヒゲが濃かったときはニキビが頻繁にできていた。ところがある程度ヒゲが減った今では、お肌のトラブルが以前より少なくなった。このあたりは医学的な知識が必要なので詳しい言及を避けるが、それなりの効果があることも実感している。

さらにヒゲが薄くなったので、人前に出るとき、誰かと一緒に写真を撮るとき、億劫じゃなくなったことも大きい。ヒゲ脱毛をすると周りが変わるのではなく、自分の内面が変わることもぜひ知ってほしい。

最後は金の話だ。ヒゲ脱毛のために十数万円を支払った筆者だが、実は節約にもつながっているように感じる。というのも、ヒゲが濃ければ濃いほど、高性能な電動シェーバーやカミソリが必要になる。筆者の場合は、ブラウン製の電動シェーバーを購入した。値段は2万円ほど。財布が痛かった。

もし完全脱毛を達成すれば、こういった出費の機会は極端に減る。ヒゲは一生の付き合いであることが多いので、「十数万円の脱毛代はむしろ安い」と感じている。


・問題は完全脱毛への道のりが思ったより長いこと

ここまで4つのメリットを述べたところで、筆者は現実的な話もしたい。

まず大前提として、ヒゲ脱毛の主流である「レーザー脱毛(=レーザー照射でヒゲの毛根を焼く)」や「ニードル脱毛(=針で毛根に電気を流す)」は、医療だ。つまり医療ミスが起こりうる。多くの施術院は安全面に万全の配慮を施しているだろうが、このリスクはしっかりと頭に入れておこう。

また脱毛は保険適用外なので、そもそも施術代が高い。筆者は「4年間無制限で通い放題」なるコースを選択したが、これはトータルで見るとお安くなるからだ。施術院によって違うが、多くは1回数千円の費用を要する。

さらに施術は基本的に痛いので、麻酔にあたる「笑気ガス」を勧められるのだが、こちらもけっこうお高い。筆者は節約のため笑気ガスを避けたのだが、施術時は毎回冷や汗をかいて耐えている。「どうにか耐えられる程度の拷問」という感じだ。とても辛い。

そして最大の問題は、体質や選択する施術等にもよるが、なかなかヒゲが減らなくて頭を悩ます人が多いこと。筆者もある程度ヒゲが減ったが、実はここ半年、まったく効果を感じなくなった。

以前、施術院の看護師さんに理由を聞くと、「ほほや首まわりのような薄い部分は、比較的簡単に脱毛できる。けれど鼻下やあごの部分はヒゲが濃いため、完全な脱毛までに時間がかかる」と話てくれた。契約期限である2020年末まで残り1年半弱。筆者は「もしかすると間に合わないかも」と危惧している。

このようにヒゲ脱毛はメリットがある一方、注意点もいくつかある。ネットで検索すれば詳しい解説が出てくるし(ステマ記事が多いから気をつけて!)、多くの施術院で「お試し」があるので、そのときに疑問をしっかり解消しよう。


・1度のレーザー照射で完全脱毛は難しい!

最後に、全身脱毛を考えている人にもアドバイスしたい。先述のように、ヒゲ脱毛には時間のかかる部位がある。それは全身のムダ毛も同じだ。

筆者は専門家ではないので、詳しい解説は避けてニュアンスだけお伝えしたい。以前、施術院で聞いた話によると、体表に見えている体毛はそれがすべてではないそうだ。「毛の生える準備をしている毛根」が一定数皮ふに眠っていて、表面上を脱毛しても、一定期間経てば再び生えてくる。

筆者は以前、お試しですね毛の一部を脱毛した。たしかにしばらくは照射部分がハゲたのだが、今ではフサフサである。

毛の濃い部分ほど「脱毛しては生えて、生えては脱毛して」という繰り返しの闘いになる。筆者が2カ月間隔で施術院に通っているのは、そういった理由があるからだ。

体のどの部分を脱毛するのかによって、脱毛期間や費用が変わってくるだろうが、少なくとも今から全身のムダ毛処理を行っても、夏に間に合わないはずだ。ムダ毛が気になる人は、なるべく早く「脱毛するかどうか」しっかり調べて考えて、結論を出そう。


・完全脱毛しないと、周りは誰も気づかない……

この記事を書くにあたって、筆者はロケットニュース編集部に写真の確認をお願いした。

「このような写真を使って記事を書きたいと思います。いかがでしょうか?」

すると、編集部からこんな返事が返ってきた。


申し訳ありませんが、

どのように脱毛して、どのように変化したのか、

編集部全員がまったく分かりませんでした……。



……


………


はあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ(絶叫)!?!?!?

この毛の減り方が分からんとか、あんたらのぽっかり開いた目の節穴に、抜けたヒゲをごそっと入れたろうかぁぁぁあああああ(激高)!!!!!

目ん玉ちくちくいわして後悔させたるわこのボケェェェえええええ(号泣)!!!!!


いやでも本当に真面目な話をすると、たいていの人は脱毛に気づくことはない。何度も言うが筆者自身、「あれ? ヒゲが薄くなりました?」なんて言われたこと、この2年半で一度もない。

妻や彼女の服装の変化に気づけない鈍感な男のように、部下の微妙な心境の変化に気づけない職場の上司のように、他人の脱毛など、たいていの人には目に映らない変化だ。

完全脱毛を果たしてようやく「あれ? この人、以前と印象が違うな……」と実感してもらえるのではないか。

それにしても……そんなにハッキリ言う? この2年半の努力がかすむような一言に、どうにも記事の説得力が欠けるようで泣けてきた筆者でした。読者のみなさん、脱毛は本当によく考えましょう……うぅ……(嗚咽)。

Report:いのうえゆきひろ
Photo:RocketNews24.

▼ちなみにこれは筆者が中学卒業のときの写真だ。

▼改めて「老けてる子どもやな~」と思いつつ、「27歳の今も老けてるな~」と気づいて、世間の美貌格差を痛感してへこんだ。