もう全部こいつでいいんじゃないかな……。一通りいじって出てきた率直な感想がこれ。2019年6月下旬に富士フィルムから発売予定の1億画素越えのモンスターカメラ「GFX100」の話です。
こちら2019年5月25日から26日にかけて開催された「FUJIKINA 2019 東京」にてお披露目されたばかり新製品。開発発表は2018年のフォトキナでなされていましたが、タッチアンドトライの機会は今回が初。撮影データも持ち帰り&公開OKということでじっくり見てきたのですが、マジで別次元でした。
・基本はしっかり
この手の大きな特徴を持った新製品って、何かを犠牲にしてる場合が多いと思うんですよ。それでも良いっちゃ良いんですが、汎用性は下がってしまいますよね。結局その特徴が刺さるユーザーにしか受け入れられないみたいな。
でも「GFX100」にはそういうところがない……。本体に5軸手振れ補正が搭載されていて、マグネシウム合金製ボディでタフネスもしっかり。気温もマイナス10度から40度まで対応で、防塵・防滴仕様。メモリーカードは2枚差し。
タッチパネル式で、3方向へのチルトが可能なメインモニター。ハンドリングはNikonやCanonなどのデジタル一眼レフカメラ(DSLR)を彷彿(ほうふつ)とさせる感じ。ファインダーは現在もっとも高性能なもののうちの1つだと感じましたし、瞳AF搭載で反応速度も最速ではないものの必要十分です。
バッテリー2個にメモリーカード込みで約1400グラムということでミラーレスカメラとしては重量級ですが、この程度なら許容範囲じゃないでしょうか。そもそも、「GFX100」が中判カメラだということを考えれば破格の軽さでしょう。
・中判ってなに?
特別カメラをいじらない方にとって「中判」は聞きなれない言葉だと思うのでここで簡単に説明を。ご存知の方は飛ばしてください。さて、スマホやミラーレスなどデジタルカメラには全てフィルムの代わりにセンサーが搭載されていることは、なんとなくご存知でしょう。
実はそのセンサーの大きさには規格があります。いまや誰もがお持ちのスマホに搭載されているカメラ。このセンサーが大体1 / 3型とか呼ばれるヤツで4.8ミリ×3.6ミリという大きさ。
そこからいろいろこまごまとコンパクトデジタルカメラ用のサイズがあるけど飛ばして……見た瞬間に「なんかガチだな」となる大きさのカメラに搭載されているセンサーの中でも、小さめなのがマイクロフォーサーズ。17.3ミリ×13ミリというサイズで、スマホのカメラよりもだいぶ大きいです。
オリンパスやパナソニックのカメラが大体この規格でしょうか。その次に大きいのがAPS-Cで、一般的には23.6ミリ×15.8ミリ。マイクロフォーサーズよりも一回り大きく、SONY、Nikon、Canon、ペンタックス、富士フィルムなどいろいろなメーカーから出ています。
そして一般的な普及率なども含めて「最上位」的な位置にいるのが35ミリフルサイズ。略して単にフルサイズと呼ばれるこの規格は36ミリ×24ミリで、APS-Cよりもふた周りくらい大きい。実はフィルムと同じ規格でもあります。
カメラの描写性能は基本的にセンサーの物理的な大きさの影響を大きく受けるので、大きければ大きいほど優れたものになる傾向があります。ただし、小さい規格はズームしやすかったり小型化しやすかったりと利点があるので、カメラという道具としての優劣はつけられないという側面もあります。
それでもセンサーだけを並べて性能を比較した場合、光を受ける面積が物理的に広いことのメリットは圧倒的です。画質だけを追求するならセンサーサイズは大きいに越したことはないでしょう。
じゃあ中判とは? 中判はメーカーによってばらつきがありますが、富士フィルムの場合は43.8ミリ×32.9ミリ。そうです、フルサイズよりも2回りくらい大きいのです。
フルサイズが最強っぽいことをさっき言いましたが……あれは嘘だ。スペック的には中判が最強です。ただし……この規格はごく一部のカメラマニアやプロが使っているものの、普及率はダントツに低いのです。
理由はズバリ、サイズと値段。中判センサーを搭載したカメラはとにかく大きくて重い。なかなか手持ちで気軽に振り回せる物ではなく、お値段もとんでもないことになっています。強いけど実質ノーカンみたいな?
・手持ちで振り回せる中判
で、今回出た「GFX100」はそんな中判ながらも、サイズも使い勝手もフルサイズのカメラと大差ないからヤバいのです。しかも画素数は1億越えと、たとえ中判でもシャレにならないモンスタースペック。5軸手振れ補正は中判だとおそらく史上初。
「FUJIKINA 2019 東京」ではモデルさん相手に撮影可能でしたが、個人的に最後に使った一眼レフのNikon D4を思い出しました。重さとかサイズ感がちょうどそれくらいなんですよね。軽いのでドローンにつけて飛ばすなんてことも。中判ミラーレスで空撮だなんて未来ずら……!
電子式ファインダー(EVF)の見え方については先に述べたとおり。軽く歩き回るモデルさん相手なら遅延は感じませんでした。あとはAFも含めて乗り物系でどこまでやれるか……。なおEVFは取り外しが可能ですが、先代の「GFX50S」や「GFX50R」との互換性はありません。
・かゆい所に手が届きまくりなUI
ソフト面でのユーザーインターフェース(UI)の作りこみも凄かったです。一番気に入ったのは天面のサブモニター。各種設定が一目瞭然なんですが、カスタマイズ性がヤバい。どのくらいって、ほぼ全ての表示項目をカスタマイズできます。
バックライトもボタン1つで即座に点灯可能。視認性に関して困ることはないでしょう。また、表示をダイヤルのアニメーションにすることも出来るのですが、これが良い。直感的に操作できるのはやはりダイヤルなんですよね。見た目だけなんですが、嬉しいポイントです。
動画については筆者が全く詳しくないので詳細はスルーさせていただきますが、1つだけ。撮影時のISO感度やシャッタースピード、フィルムシミュレーションなどの設定を、静止画用と動画用でそれぞれ個別に保存できるようになっていました。
これ結構強いんじゃないでしょうか? 動画モードと静止画の設定が共有なせいで切り替えてもすぐに撮影に入れないため、両方やる人はカメラ2台持ち……なんてケースありますよね。「GFX100」なら1台でいけます。
唯一気になった点は、縦グリップの持ちにくさ。なんだか微妙に小さいし、どうして表面がツルツルしてるんでしょうか? 気を抜くと滑って落としそうでした。グリップ向上のために滑り止め用のシールとか貼りたくなる……というか貼って。
・「中判が普通」な未来の幕開け感
ちなみにお値段そのものは132万3000円とそこそこ。でもカメラ沼に沈み続けている方からしたら、なんだかんだで注ぎ込んでいる額でしょう。正直これまでの中判カメラは「フルサイズで十分」だったり「出費に見合うほどじゃない」って感じでインパクトが足りなかったと思うんです。
でも「GFX100」は「全部売ってこっちに乗り換えるのもアリかも」と本気で思えてくるスゴさがありました。うっかり機材を売却して購入に備えないように、買わない言い訳を探すのが大変なレベル。
ぶっちゃけ初代α7シリーズ以来のゲームチェンジャーだと感じました。さすがにα7がフルサイズを普及させた時のように、中判の一般化が進んだりはしないでしょう。でも「中判もよく見る」的な方向に常識がシフトしていく起点になるくらいの実力はありそう。
参考リンク:GFX100、FUJIKINA2019
Report:江川資具
Photo:Rocketnews24.
▼高感度性能もヤバいんですよ。強引に試してきました。シャッタースピードを1/4000に設定して、ISO102400で撮影。縮小すれば常用できると思いません?
▼ISO400、f2.0、1/240 で割と普通に撮影したこちらの写真。こうして見ると普通です。これを等倍にすると……
▼ここまで見えます。恐るべし1億200万画素のパワー。見えすぎて撮られるのが怖い。寄って撮るとファンデーションの粉末とか産毛まで見えてしまいます。
▼天面サブモニターのバックライトをつけたらこんな感じ。結構光ります。
▼キットカット貰えました。
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