皆さんは普段、どのようにしてお茶漬けを食べているだろうか。いきなりプライベートなことを聞いてしまって申し訳ないが、おそらくはインスタントのお茶漬けのりや、何らかの具材をご飯に投入し、そこへお湯をかけて食べる……そんなパターンが多いのではなかろうか。

これからご紹介するお茶漬けは、きっと皆さんを普段とは違う世界へ連れて行ってくれるはずだ。なにせ日本茶の専門店が、お店の茶葉をたっぷりとご飯にふりかけ、ドリップした新茶を注いで作った一品である。お茶屋の放つガチ茶漬けの威力を、ぜひご覧いただきたい。

・いかにお茶屋が本気か

やってきたのは、三軒茶屋にある世界初のハンドドリップ日本茶専門店「東京茶寮(とうきょうさりょう)」。

今このお店は期間限定でお茶漬けスタンドとしても営業していて……

通常時に提供している静岡産や鹿児島産などのさまざま煎茶に加え……

うなぎ、鮭、ほたて、梅の4種類のお茶漬け(各500円)を注文することができるのだ。

そして注目すべきは、お茶漬けのお湯をハンドドリップ煎茶に変更できるオプション(150円)。お茶漬けにふりかかっている茶葉とドリップに使われる茶葉の、二重の風味が味わえるというわけだ。しかも前者の茶葉は碾茶(てんちゃ)と呼ばれる抹茶の原料、後者は今年4月に収穫された鹿児島の新茶「茂(しげる)2号」である。

素材と手間暇、両方が高次元に突入している。ガチ以外の何物でもない。

「東京茶寮」の店舗サイトには、お茶漬けスタンド開業の経緯がつづられている。要約すると、「お茶を使わない “だし茶漬け” が主流の今、本格的なお茶漬けを提案したい」とのこと。まさしくお茶のように熱い想いが背景にあるのだ。


・いかにお茶漬けが美味しいか

さて、ドリップのオプションはもちろん追加するとして、4種のお茶漬けのうち何を選ぶか。一生悩める選択ではあったが、苦悩の末に王道の鮭茶漬けをチョイス。

ほどなくして、木製のお椀(わん)に入り、気品すら漂わせてお茶漬けが登場。その横に置かれたドリッパーには、こしたあとの茶葉の青々とした色が満ちている。

雅(みやび)と形容するほかない光景だ。食べる前に鑑賞しておきたいとさえ思わせられる。

緑豊かなお茶漬けは何とも美味しそう。大ぶりの鮭の切り身もとても美味しそう。我慢できないので鑑賞は終わりだ。いただきます。

一口食べた瞬間、さまざまな感覚が湧き上がり、流れるように移り変わっていった。「苦い」「でもさわやか」「美味しい」「良い香り」「何だこれ美味しい」と、眼前の椀の奥深さに心を揺さぶられる。

最初に感じたのは、抹茶特有の苦さだ。とはいえ、お茶会のお抹茶がそのまま入っているような味では決してない。清涼感のあるさっぱりとした苦さで、お茶漬けのさらさら感に寄り添うものになっている。

茶葉自体も優しい食感で食べやすい。そして苦味だけでなく確かな旨味もしみ出していて、ふっくらしたご飯と合わさり、良質なお茶漬けを形作っている。

極めつけは、ドリップされた新茶の香り高さだ。ふんだんにご飯にまぶされている茶葉の風味に、新茶の新鮮な香気が加わると、味覚と嗅覚が舞い上がってしまう。お茶漬けという家庭の軽食が、料亭の美食の域にまで昇華しているように感じられる。

柔らかに身がほぐれる鮭も実に名脇役。ほどよい塩気とお茶の苦味が、互いを引き立て合っていてたまらない。


・いかにぜいたくで貴重な体験か

無心に舌鼓を打っているうちに、気付けばいつの間にか食べ終わっていた。もう少し噛み締めておけばよかったが、こんなにお茶漬けに魅せられたのは初めてだったので仕方ない。ぜいたくな体験であったことを少しでも伝えられていれば幸いだ。

お茶屋が本気で作るお茶漬けはこれほどすごいのかと、最初から最後まで心が沸きっぱなしだった。紛れもなく常識を変える一品である。

「東京茶寮」でお茶漬けが楽しめるのは7月31日までの期間限定。各日お米がなくなり次第、営業も終了するとのこと。この貴重な機会を逃すことなく、皆さんにもできるだけ早く熱い革命を体感してほしい。

・今回紹介した店舗の情報

店名 お茶漬けスタンド 東京茶寮
住所 東京都世田谷区上馬1-34-15
営業時間 平日 13:00〜20:00(L.O19:30) / 土・日・祝 11:00〜20:00(L.O19:30)
定休日 月曜日(祝日の場合は翌日休み)

Report:西本大紀
Photo:Rocketnews24.

▼悩ましい4種のお茶漬け。テイクアウトもできるそう

▼お茶漬けと茶葉、雅すぎるコンビ

▼鮭のしょっぱさがちょうどよく、たまらなかった

▼サービスのドリンクも当然お茶

▼宮崎産の「やまなみ」という茶葉を使った水出し茶らしい。どこまでもお茶づくしのおもてなし