どうもみなさん、こんにちは、こんばんは、ロケットニュース24のP.K.サンジュンです。私は東京生まれ千葉県育ちの在日韓国人40歳、つい1カ月ほど前「馬鹿な韓国のせいで普通に生きづらい」という記事を執筆、公開しました。

予想通り、四方八方から矢が飛んできましたが、それよりも好意的な意見や励ましの声を遥かに多くいただきました。──ザス。今回はその記事に寄せられたコメントの中から「どうして娘に日本姓を名乗らせないのか?」という質問にお答えしたいと思います。時間がある超ヒマな人だけ読んでくださいね。

・どちらを名乗るべきか?

みなさんの周囲に在日韓国人はいますか? ちょっと話は飛ぶんですが、個人的な体感だと東京より北に行くとグッと在日韓国人の数は減っていきますね。なぜなら、かつて日本に渡ってきた私でいうと祖父の世代の人は、下関から船で上陸しているからです。

もちろん90%以上が食えなくて日本に来たワケで、職を求めて下関から九州方面へ南下するグループと、大阪・東京を目指し北上するグループに分かれるんですね。北上グループも多くの場合は東京で何とかなったのでしょう。それが東京より北に行くと在日韓国人の数が減る理由です(あくまで個人的な推理)。

なぜこんな話をしたかというと、比較的身近に在日韓国人がいる人とそうでない人は「名前」に関する捉え方が大きく違うからです。当然、最終的には個人の価値観に依存するんですが、あなたは在日韓国人が「日本姓(いわゆる通称名)」と「韓国姓」どちらを名乗る方が自然だと思いますか?

・通称名の起源

日本で生きていくなら日本姓を名乗るべきだ、という意見もあることでしょう。逆に韓国人なのだから日本姓を名乗るようなややこしいことをするな、という声もあるに違いありません。インターネットの世界で仕事をしている私のもとには、両者の声が飛んできます。

そもそも通称名は、朝鮮が日本の支配下にあった1939年に「朝鮮人は全員、日本風の名前にしなさい」という「創氏改名」という政策の名残です。つまり、当時の朝鮮人は日本にいなくても全員日本姓だったんですね。もしくは朝鮮半島が日本だった、と言ってもいいかもしれません。

※ こうした歴史のことを書くと「日本姓はむしろ与えてやった権利だ」とか、逆に「日本に名前さえ奪われた」とか言ってくるバカがいますが、そういう話ではありません。ただ、日本に住んでれば勝手に日本姓が名乗れるワケではなく、歴史的な流れがあることを知ってください。

・日本に残った朝鮮人たちはどうしたのか?

さて、朝鮮半島に住むほぼ全員が、戦後は日本姓を捨てました。当然です、彼らからすれば解放されたワケですから。では、日本に残ることを決断した人たちはどうしたでしょう? 結論から言うと「人それぞれ」です。というか「その家それぞれ」といったところでしょうか。

本当の動機については、その家の人に聞いてみるしかありませんが「日本で住むなら日本姓」というシンプルな考えもあれば「韓国姓だと差別されるのではないか」という考えもあったことでしょう。逆に「日本に住んでも韓国人なのだから韓国姓を名乗るべきだ」と考えた人もいたハズです。

※ 差別と書くと「差別なんかない!」とか「日本に比べてアメリカは……」とか言ってくるバカも多いです。私自身はゴリゴリの差別を受けた経験はありませんが、関東大震災の際には「朝鮮人が井戸に毒を投げ込んだ」と噂が立ち、多くの朝鮮人が殺されたそうです。

これは太平洋戦争にも行った妻(日本人)のおじいさん(生きてれば100歳くらい)にも聞いた話で、おじいさんは「あの時、日本人は朝鮮の人に悪いことをしちゃったんだよ……」と仰ってました。私自身はそれについて恨みもありませんし「悲しい歴史だな」くらいにしか思ってませんが「差別を恐れるマイノリティ」の気持ちはわかります。

話は飛びましたが「日本姓を名乗るか?」それとも「韓国姓を名乗るか?」は、99%親に依存します。そしてどの親も我が子にベスト、もしくはベターな選択肢として「日本姓」か「韓国姓」を与えているんですね。子供の未来を左右する名前、しかも国というセンシティブな問題を含む我が子の名前を真剣に考えない親など存在しません。


・どちらも自然

なので、先述の「在日韓国人が日本姓と韓国姓どちらが自然か?」の私なりの答えは「どちらも自然」ということになります。「韓国姓名乗れよ」というのもナンセンス、「なんで日本名じゃないんですか?」というのもナンセンス、私からすれば「その家のことなんだから放っておいてやれよ」といった感じです。

ただし、私の経験や周囲の話を聞くと、結果的には「最初から韓国姓を名乗った方が楽」な気がしますね。本人の意志とは関係なく、日本姓を名乗っているとどうしても “隠してる感” を無意識に持ってしまい、そこに葛藤や悩みが生まれることもあるのでしょう。

なので、私は娘に韓国姓を名乗らせました。間違っても「韓国人としての誇りを持つように」なんて願いは込めていません。だって私にそれが1ミリもありませんから。あるとすればマイノリティとして日本で生まれ育ち、日本の良いところと韓国のちょっぴり良いところを学びつつ、面白おかしく生きて来れたことですかね。性格は決してよくありませんが。

また、理解してくれた妻は日本人、娘も日本籍ですが、私が「朴(ぱく)」ならいずれ気付きますよね。もし自分と母が「田中」で父親だけが「朴」だったら、娘は勝手に「隠さなきゃいけないのかな?」というメッセージを受け取ってしまうと思うんです。

前の記事に書きましたが、日本で生きていくうえで日本人と違いがあることは、受け止め方次第でアドバンテージになり得ます。特にこのご時世、すぐにポジティブに消化できる人は少ないと思いますが、それでも人と違うことは個性になり、きっと娘の人生を豊かにしてくれることでしょう。


・もう1つの理由

もう1つ、私は幼い頃から韓国姓でしたが、面と向かって韓国のことをどうこう言われたことは1度もありません。たったの1度もですよ? ネットだと年がら年中なのに、リアルだと40年間で0回なんですね。そういう意味で娘に韓国姓を名乗らせることが「結果的に娘を守る」と判断しました。

韓国人絡みの名前の話になるとすぐに「ソニンさんは本名を名乗ってますよ!」と突撃してくるバカがいます。私から言わせれば、ソニンさんがエラいとか立派とかの話ではなく、それはそれ。だからといって日本姓を名乗る人を攻撃する理由にはなりません。

だって、同じ名前を何十年と名乗っていたらどんな名前であれ愛着が湧くのが自然だと思いませんか? それって他人が「おかしい!」とかいう問題ですか? もう1度言いますが、国籍を問わず子供の未来を案じない親なんていないのです。その家の意志を尊重してあげましょう。

やや話はとっ散らかりましたが、なんとなく私の言いたいことは理解していただけましたでしょうか? 「韓国」「在日」と聞くと条件反射的に「だったら帰れよ」とか言っちゃう人は思考が前進していません。ずっとそのまま、成長がないんですよね。逆に、過剰に韓国を擁護する人たちもまた然りです。

自然、フェア、思慮深さ──。私の愛する日本、そして日本人はこの3つの精神に長けているハズです。そして私も日本で生まれ育ったおかげで、それらを大切にして生きています。きっとその精神は娘にも引き継がれていくことでしょう。

執筆:P.K.サンジュン
Photo:RocketNews24.

▼ちょっと前に書いた「バカな韓国のせいで最近普通に生きづらい」という記事はこちら。

▼母方の祖父が7歳の頃、日本に渡ってきた話

▼2歳の娘を「保育園に迎えに行ってから寝かし付けるまでの話」はこちらをどうぞ。