中華料理は言うまでもなく、フレンチやイタリアン、韓国料理にインド料理……と日本にいても世界中の料理を味わうことができる。ここ数年はパクチーブームの勢いでタイ料理の人気が高いようだが、私(P.K.サンジュン)は「次に来るのはメキシコ料理」だと確信していた……つい先日までは。

メキシカンはライムの酸味とチリの辛さが織りなす “すっぱ辛さ” が特徴的な料理で、タイ料理の特徴とドンピシャで当てはまる。「これは来るぞメキシカンブーム!」と思っていたが、実際にメキシコ旅行に行ってみて考えが変わってしまった。結論からいうと日本でメキシコ料理が流行る確率は低い。それには大きく3つの理由があるからだ。

・料理自体は美味しい

メキシコ料理と聞いてあなたは何を思い浮かべるだろう? おそらく「タコス」や「ブリトー」など、トルティーヤを使用したメニューを思い出す人も多いハズだ。私もメキシコ滞在中はタコスを食べまくったし、そして実際にどのタコスも非常に美味しかった。

だがしかし、どの料理も私が思い描いていたメキシコ料理とは何か違う。以下で述べる3つの理由と併せながら説明したい。

・その1:「思ったより素朴な味の料理が多い」

例えばあなたがメキシコ料理を食べに行くとしよう。果たして何を求めて店に足を運ぶだろうか? これはタイ料理に置き比べるとわかりやすいが、和食ではなかなか味わえない「パンチ」や「刺激」を求めてはいないだろうか?

私の場合はそうだった。刺激に満ちたすっぱ辛い料理を食べてテキーラをグイッ! これが私がイメージするメキシコ料理だったのだが、実際のメキシコ料理は意外と優しい味わいの料理が多く、もっと言えば素朴ですらあった。

それはそれで問題ないが、薄味の多い和食がある中、日本でわざわざメキシコ料理店に足を運ぶ理由にはなりにくい。「メキシコ料理は実はそんなに刺激的ではない」、これが1つ目の理由だ。

・その2:「味付けの自由度が高すぎる」

では、私がイメージしていた “すっぱ辛さ” は何だったのだろう? 実はコレ、お客さんが各自で味付けしていると判明した。私が入店したメキシコ料理店では100%の確率でチリソースとライムが出てきたから、メキシコ料理は基本的に素朴な味わいで「あとはお好みで味付けして食べてね」という料理なのだろう。

言うなれば味付けの自由度の高い料理だが、いかんせん日本人には向いていない。日本食はせいぜい刺身に醤油、フライにソースをかけて食べるくらいで、多くの料理は味が決まっている。それは中華料理やタイ料理も同様で、毎度のように自分で味付けするメキシコ料理は日本にマッチしないと感じた。

・その3:「味覚の違い」

4泊7日のメキシコ滞在中に私が食べた料理のほとんどは、偽りなく「美味しかった」と言える。……が、1つだけ「モーレポブラーノ」だけはどうしても美味しいと思えなかった。

「モーレポブラーノ」とはチョコレートや唐辛子、ナッツで作られた真っ黒いソースのことである。ガイドブックには「メキシコ料理の最高傑作」とまで書かれていたため非常に楽しみにしていたのだが、フォークを持つ手が震えるほど美味しくなかった。

「もしかしたら行った店がたまたまハズレだったのでは?」とも思ったが、その他の料理は美味しかったのでその可能性は低い。食べる人が食べれば美味しい料理であることはもちろんだが、私は「モーレポブラーノ」を食べ「味覚の違いがあるのかな?」と思わずにはいられなかった。

当然「たかが1週間の旅行で何がわかる!」という声があることも重々承知している。今後メキシコ料理が爆発的にヒットする可能性だってあるだろう。今回の記事はあくまで一個人の意見であり、メキシコ料理を否定するものではないことは記述しておきたい。

ちなみに、当編集部のYoshioは数年前にメキシコで「モーレポブラーノ」を食べて以来、あまりの美味しさに感動し日本でメキシコ料理を食べ歩いていた時期があるそうだ。私は甘苦いソースがどうしても入っていかなかったが、そこまで言うならもう1度食べてみたいと思っている。

タコスを始め、ほとんどの料理が美味しかったメキシコ料理。ただ上述した3つの理由から日本で流行するのはしばらく先だと感じた次第だ。個人的にはもっとメキシコ料理店が増えて、タコスもポソレも気軽に食べられる環境になれば嬉しいが。

執筆:P.K.サンジュン
Photo:RocketNews24.

▼こう見えて全く辛くない。

▼思ったよりも素朴で、自分で味付けをするのがメキシコ料理だ……たぶん。