漫画やアニメの設定を、日本の現行法に当てはめたらどうなるのか? そんな素朴な疑問に答えるのがこのシリーズである。初回は、世界中で愛される猫型ロボット・ドラえもんの万能道具「どこでもドア」について。
扉を開けたら行きたい場所に着く、夢のような道具なのだが、のび太くんはどういう訳かしずかちゃん宅のお風呂場にたどり着いてしまう。きっと現行法に当てはめると、「のび太さんのエッチ~!」では話が済まないと思うのだが……。
・「どこでもドア」で……
今回この重要な問いに対して、回答頂いたのがアディーレ法律事務所の鈴木淳也弁護士だ。忙しい時間の合間を縫って、古くから繰り返されるのび太くんの挙行について、明白な回答を示してくれた。
質問:どこでもドアで、しずかちゃんが入浴中のお風呂場に侵入するとどんな罪になる?
回答:「正当な理由なく人の住居に侵入したとして、建造物侵入罪が成立します(刑法130条前段)。3年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処されることになります。
また、正当な理由なく人の浴場をひそかにのぞき見た場合は、軽犯罪法1条23号の窃視の罪が成立します。拘留(30日未満の刑事施設での拘置)又は科料(1000円以上1万円未満の金銭の支払を命じられる)となります」
なるほど、のび太くんは「建造物侵入罪」と「窃視の罪」に問われることになると。しかも、のび太くんは常習犯なので、余罪も含めると実刑は免れないと思うのだが……。ちなみにどこでもドアのついでに、鈴木弁護士に別の質問を投げかけてみた。もしどこでもドアで、海外に行ったら不法入国になるのだろうか?
質問:どこでもドアで海外に行くと、不法入国?
回答:「いわゆる密入国であり、出入国管理及び難民認定法違反となり、3年以下の懲役もしくは禁錮もしくは300万円以下の罰金、又はその懲役もしくは禁錮及び罰金を同時に科せられます。また、強制退去させられ、国籍地に送還されることになるでしょう。
日本では自費出国が可能な被退去強制者については、基本的には自費で退去するように求めており、帰国費用の工面ができない者、あるいは、特に人道的配慮から早期送還が必要不可欠と考えられる者等についてのみ、国費送還の措置を執っています」
やっぱり。どこでもドアがあったとしても、こっそり異国を訪ねるのはマズイようだ……。したがって、どこでもドアが発明されたとしても、現行法を鑑みると、手軽に使う訳にはいかないようである。
協力:アディーレ法律事務所 鈴木淳也(札幌弁護士会所属)
執筆:佐藤英典
イラスト:Rocketnews24