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プロ野球界に激震が走っている。読売巨人軍が、試合前に円陣を組み、勝敗に応じて金銭の授受が行われたというのだ。阪神タイガースでも西武ライオンズでも同様の行為が行われていたことが判明。

巨人軍は、験担ぎやモチベーションの意味があったと強調しているのだが、これは法的に見た場合に、どうなるのだろうか? 専門家に聞いてみた。

・勝敗に応じて金銭の授受

朝日新聞などで報じられるところによると、試合前に選手たちは円陣を組み、声出し役を決めて、その試合に勝てば選手1人ずつが5000円を声出し役に支払い、負ければ声出し役が選手1人ずつに1000円を支払っていたというものだ。今回意見を求めたのは、アディーレ法律事務所の鈴木淳也弁護士である。以下は同所に尋ねた質問とその回答だ。

・験担ぎとされた行為は、法的に見てどうなのか?

「勝敗によってお金がやり取りされることは賭博じゃないんですか?」

「『勝った方が明日のランチをおごる』、という程度の賭けならば『一時の娯楽に供する物を賭けた』にとどまるため、賭博罪にはならないでしょう。しかし、これまでの判例をみてみると、金銭そのものを賭けるとなると、賭博罪にあたるとされています。

もっとも、食事代金を賭けることは許容され得る可能性が高いので、即時に消費する物自体でなくてもそれと同程度の金額であれば『一時の娯楽に供する物』を賭けたといえると思われます。

競馬・競輪・宝くじなどのように、法律で認められている賭博は賭博罪にあたりませんが、それ以外であれば基本的に、賭博罪となります。

今回明らかになった巨人軍などでの金銭のやり取りに関して、『験担ぎ』や『モチベーションの維持』の意味合いを強調したとしても、形式的にみると、試合の勝敗によって金銭の得失を争っていることは明白です。

そして、勝った場合に声出しの人間が取得する金銭が数万円にもなるということからすれば、『一時の娯楽に供する物』を賭けたと解釈するのは難しいように思われます。したがって、立件されるかどうかは別として、形式的には賭博罪に当たる行為ですので、きちんと反省と改善をしてほしいと思います」

プロ野球開幕目前に発覚した、今回の問題。これからのシーズンに大きな影を落とすことにもなりかねない。いち早く全貌が解明されることを願う。

参照元:朝日新聞 [1] [2]
取材協力:アディーレ法律事務所 (東京弁護士会所属)
執筆:佐藤英典
イラスト:Rocketnews24