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漫画やアニメの設定を、日本の現行法に当てはめたらどうなるのか? 以前の記事で、ドラえもんの万能道具のひとつ、「どこでもドア」について、日本の現行法に当てはめた場合の法的判断をお伝えした。

では、同じくドラえもんの定番道具「タケコプター」の場合はどうなるのだろうか? 仮にタケコプターで飛行して、野球場の上から試合を観戦したら、法的に問題があるのだろうか? 専門家に尋ねてみた。

・タケコプターで野球観戦したら……

今回の質問に対してお答え頂いたのは、アディーレ法律事務所の鈴木淳也弁護士である。鈴木弁護士は法律の専門家であると同時に、気象予報士の資格も有する、ちょっと変わった経歴の持ち主。鈴木弁護士は、この難問にどう答えるのだろうか?

質問:入場券を購入せず、タケコプターで空から無料野球観戦すると罪になるの?

回答:「建物の上空に入っても、建造物侵入罪とはならない可能性が高いです。この場合は、野球場の上空ということになりますが。もっとも、タケコプターは “回転翼航空機” として航空法の適用を受ける恐れがあります

航空法では最低安全高度の定め(航空法81条)があり、最も高い障害物(建物等)の上端から300mの高度を下回って飛行してはならないとされています。したがって、事実上は観戦することは難しいのではないでしょうか。もし観戦をした場合は、50万円以下の罰金に処される(航空法154条)こととなるでしょう。

う~ん、残念。そもそもタケコプターで飛ぶこと自体に、法的な問題がありそうだ。では、仮に飛行に問題がなかったとして、野球観戦をしていた場合、こんなケースも考え得るのではないだろうか。

質問:タケコプターで飛行中にホームランボールでケガをしたら、球場の責任は問えるの?

回答:「場外ホームランが通行人に当たり、怪我をしたような場合は、損害賠償義務が生じ得るでしょう。しかし上空観戦者は想定されておらず、安全配慮義務違反が問われることはありません。したがって、責任追及は難しいのではないでしょうか」

たしかに、「球場の上を人が飛んでくる」こと自体が考えにくいので、そのような事態を想定した責任を問うことは難しいだろう。少なくとも、先の質問の回答にあるように、「航空法では最低安全高度の定め(航空法81条)」がある以上、タケコプターでの飛行が許可されても、野球場に近づくことはできないかもしれない。

タケコプターの実用化が現実的なものになったとしても、自由に飛び回るのには、法整備が必要になってくるのではないだろうか。

協力:アディーレ法律事務所 鈴木淳也(札幌弁護士会所属)
執筆:佐藤英典
イラスト:Rocketnews24