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ベッキーさんの不倫騒動は一向に収束する気配がない。2016年1月7日発売の週刊文春に第一報が掲載された後、お相手川谷絵音さんとのLINEのやり取りが明るみになり、さらに1月28日発売の同誌最新号では、2人の会話の一部が掲載された。

相次ぐLINE会話の流出。一体誰がどうやって流出させたのだろうか? 古いiPhoneでアカウント同期すると、会話を監視できる可能性があるようなのだが、それにも増して気になるのは、プライバシーの侵害にならないのか? 法律の専門家に意見を求めた。

・流出とプライバシー

今回も質問に答えてくれたのは、テレビCMでお馴染みのアディーレ法律事務所である。以下は弁護士への質問とその回答だ。

問:「LINEの流出が繰り返されていますが、法的な観点から見た場合、LINEの会話や画像が流出するのは、プライバシー侵害にはならないのですか? またプライバシー侵害だった場合に、訴訟問題にはならないのですか?」

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弁護士の回答:「まず、プライバシー侵害について説明させていただきます。裁判所の考え方によれば、プライバシー侵害は、(1)私生活上の (2)いまだ他人に知られていない事実で (3)通常公開されたくないものを 本人の同意を得ずに公表したような場合に成立します。

合理的な理由がないのに、本人に無断でこういったプライバシーに関する事実を公表することは、不法行為(民法709条)として、民事上の損害賠償(慰謝料) 請求や差し止めの対象となる可能性があります。LINEの会話や写真も、プライバシーに関する情報が多く含まれていることから、こういったプライバシーに関する情報を公表した場合、プライバシー侵害にあたる可能性はあります。

ただ、慰謝料等の金額は、認められても数万円程度と相場は低いのが現状で、一般の方が裁判まで起こすケースはごく稀といえるでしょう。訴訟を起こすこと自体は当然できます。

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次に、この場合「名誉毀損」が成立するケースもあり得ます。名誉毀損とは、法的には「事実を示してその人の社会的評価を下げること」とされています。皆さん、名誉毀損と聞くと、「ありもしない事実無根の事柄を公表する、またはその人を誹謗中傷する」ようなケースをイメージされる方も多いようです。

しかし法的には、「真実であろうが虚偽であろうが、その人の社会的評価を下げるような事実を不特定多数の人間に公表」すれば名誉毀損が成立します。実際にあった本当のことを書いても、それがその人の社会的評価を落とすような内容であれば、名誉毀損になってしまうのです。たとえば、

「◯◯さんちの奥さん、××中学校の先生と浮気しているんだって」

という内容をネットに書き込みした場合、仮にそれが真実であっても名誉毀損にあたる可能性があります。LINEの会話や写真の公表も、その内容によっては、不倫をしているなどの不名誉な事実の公表に当たる可能性があります。その場合も慰謝料や差し止めが請求できる可能性がありますが、訴訟を起こすことになるかどうかはプライバシー侵害のケースと同様です。

ただし、公務員や有名人、芸能人については、一定の情報が皆さんに知られることが前提となっている以上、一般国民とは違った視点が必要となってきます。公務員の場合、公務に関する事実であれば、正当な目的で真実を公表していれば、たとえ名誉毀損にあたるような事実であっても、公表していい、罪に問われないとされています。

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それでは、芸能人の場合はどうなのでしょうか。芸能人のLINEの情報については、当然、芸能人であっても純粋なプライバシーや名誉は守られるべきですから、これをむやみやたらに流出された場合、プライバシー侵害や、名誉棄損にあたる可能性もあるといえます。

しかし、芸能人という職業柄、例えば不倫をしたという事実については、これをスクープされるのはいわば当然で、自業自得、ともいえます。報道の自由や、報道内容の価値が尊重される結果、不倫している事実がわかるようなLINE情報は、この内容が真実であった場合には、流出しても基本的には「違法」という評価にはならないでしょう。

この意味では、芸能人は、一定程度プライバシーが制限されるという表現ができると思います。

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仮に、何ら根拠に基づかない虚偽の記事を暴露されたということであれば、名誉棄損の主張や、出版等の差止め、場合によっては謝罪文の掲載等を求めることもできるかと思います。

一方、「言い訳できない客観的証拠(LINEの会話、写真など)」が流出された場合に、その量がさほど膨大ではなく、「当の本人たちもおよそ真実と認めている」のであれば、プライバシー侵害や名誉棄損という判断にはなり難いと思われます。

プライバシー侵害や名誉毀損の全般にいえることですが、そもそも、人に知られたくない事実が問題になっているケースであり、これを裁判にすることによってさらに事実が明るみになったり、大事になったりすることが懸念されます。不倫の場合であれば、かえって不倫の事実を詰める事態になりかねませんので、訴訟問題にまでは発展しないと思われます」

参照元:週刊文春WEB
取材協力:アディーレ法律事務所
執筆:佐藤英典
イラスト:マミヤ狂四郎