以前の記事で、東京・新宿駅西口でチアリーディングを続ける齊藤彩さんが引退することについてお伝えした。彼女は2009年8月からこの活動を開始し、2015年1月30日をもって引退したのである。5年半もの月日のなかで、彼女は一体どんな成果を残すことができたのだろうか?
「ニッポンのビジネスマンを応援する」をテーマに掲げ、たったひとりで始まったこの活動。最終日はあいにくの雪模様であったにもかかわらず、全日本女子チア部の活動を応援する多くの人やテレビ取材が駆けつけた。彼女の最後の勇姿を見送ったのである。
・3社のテレビ取材
2009年12月に私(佐藤)が取材した当初は、ほとんどメディアにも取り上げられることもなかった。それでも彼女は平日午前9時頃からチアリーディングを続けていたのだ。それが30日には、彼女たちが到着する前から、テレビ局3社の取材クルーが控えていた。
・たしかな成果
なぜ人知れず活動しているときから、取材してくれなかったのだろうかと疑問を持たずにはいられない。だが、それでもテレビを動かすことができたのも、活動の成果のひとつといって良いかもしれない。この日に限らず、何度かのテレビ出演をはたしていることも、活動のたしかな成果ではないだろうか。
・あいにくの雪模様
できることなら晴れやかな天候で、最後の日を迎えて欲しかった。しかし、東京は前日から大雪の予報が出ており、当日それがくつがえることはなかった。降りしきる雪が、所々積もり始めているなかで、齊藤さんと朝妻久実さんはいつもと同じように、新宿駅を通りすぎていく人たちにエールを送ったのである。
・打算なき励まし
さすがにこの降雪のなか、彼女たちのチアリーダー姿はとても寒そうに見える。いや、実際寒いに違いないだろう。寒さで手足も思うように動かなかったかもしれない。しかし、見ているうちに心から温かい気持ちになることができた。
それはきっと、彼女たちが混じり気のない気持ちで人を応援する気持ちを持っているからではないだろうか。打算なく「励ましたい」と思っているからこそ、この長き活動を継続できたように思う。
・本当に励まされていたのは……
だが、引退する齊藤さんは最後のあいさつで意外なことを言った。「励ましたいという気持ちで続けてきましたが、本当に励まされていたのは、私でした」と。この言葉に彼女の真摯で謙虚な姿勢が垣間見える。この気持ちがあったから、多くの人に応援されてきたのかもしれない。
・ありがとうとは言いたくない
そしてもうひとつ、印象的だったのが、パートナーとして活動を続けてきた朝妻さんへの言葉だ。「私はクミッチェル(朝妻さん)に『ありがとう』って言いたくない。だって、私がお願いして一緒にやってきた訳じゃなくて、クミッチェルが自分で選んで加わってくれたから」。
きっとパートナーであり仲間であるからこそ、「ありがとう」という言葉では言い尽くせない気持ちがあったはずである。それでも齊藤さんの感謝はひしひしと伝わってきた。
齊藤さんの全日本女子チア部としての活動は終了だ。5年半も続けてきた活動のバイタリティをもって、彼女はこれから何かをやってくれるに違いないだろう。これからの活動が楽しみである。空に舞った雪のひとひらが、まるで名残を惜しむように融けていくのが見えた。
Report:佐藤英典
Photo:Rocketnews24
▼彼女たちが新宿駅西口に到着すると、アッという間にテレビ取材に囲まれてしまった
▼そしていつものように元気にチアリーディング
▼最後は齊藤さんに抱えきれないほど花が送られた。これからは朝妻さんがひとりで活動を続けることになる
▼これからの齊藤さんの活躍が楽しみだ