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私(佐藤)がロケットニュース24で記事を執筆するようになってから、丸5年が経過した。まさか5年もの長きにわたって、記事を書き続けられるとは、その当時想像もしていなかった。ライターとして活動する間に、多くの人と出会いさまざまな出来事を経験させていただくことが出来、本当に有難いと思っている。

私の最初に執筆した記事が公開されたのは、2009年8月3日。実はそれと同じ頃に、奇抜な活動を開始していたひとりの女性がいた。彼女の名前はサイトウアヤさん。彼女は同年8月1日から東京・JR新宿駅で「ニッポンのビジネスマンを応援する」をテーマに掲げ、毎朝チアリーディングを行っていたのである。そんな彼女が、この1月で活動を引退することになったそうだ。もしも時間のある人は、彼女の活動を見届けて欲しいと願う。

・孤軍奮闘

激しく人が行きかう駅で、チアリーディングをする。言葉にすると、容易に見えるのだが、簡単なことではない。慌しい朝の時間、誰も見向きもしないというのに、何の意味があるのだろうか? まるで罰ゲームのようにさえ感じるこの行動を、彼女は長らくたったひとりで続けていた。活動開始から1年後に朝妻久実さんがパートナーとして参加するまで、孤軍奮闘して、ひとり応援を続けていたのである。

・「言われたことだけやっていれば……」

彼女は取り立てて肝が据わっているわけではなく、単なる目立ちたがり屋という訳でもなかった。どちらかといえば、自分の主張をハッキリ伝えることができず、その昔会社では上司に自発的な主張もできないような存在で、「私、こう思うんです」とさえ言えなかったのだ。

もしかしたら、その一言が自分だけでなく周りにもメリットを生み出すかもしれないというのに、「言われたことだけやっていればいい」というその言葉を鵜呑みにしていた。

・経験ほぼなしで1500人を動員した男

あと少し勇気があれば、伝える意志があれば。そんな自分の殻を打破できず、あと一歩の勇気を持てないことを悔いる気持ちがあったようである。そんなときにある会社の社長に出会い、強烈なインスパイアを受けて行動に出たのだ。

その社長は、当時ほとんどイベントの開催経験がないなかで、1500人もの動員に成功してイベントを大成功に導く。その姿を目の当たりにして、自分らしい方法で何かを始めようと決意し、毎朝新宿駅でチアリーディングを開始した。

・『こち亀』にも取り上げられる

地道な活動はメディアに取り上げられることになる。海外メディア「CBS」に取材を受けたり、ビートたけしさんと松本人志さんがホストを務めるバラエティ番組に出演。さらには、国民的な人気を誇る漫画『こちら葛飾区亀有公園前派出所』に登場したのである。

彼女の活動は着実に広まり、多くの人に認知されることとなっていった。

・たったひとりのチアリーダー

その活動も1月30日で最後になる。彼女は彼女にしかできない、たった一人の家族を応援することを、これからの生活の中心にするそうである。いままでチアリーディングで勇気をもらっていた人は少し寂しくなるかもしれないのだが、これからは伴侶を支えるチアリーダーとしてがんばることだろう。

言葉では、「日本を元気」とか「がんばろう」とかいう人が大勢いる。その実は商売のタネにされていることさえもある。サイトウさんのように見返りを求めず活動している人が何人いるのだろうか? 少なくとも私は、ロケットニュース24に携わり始めて大変心もとないなかで、勇気付けられたひとりである。

執筆:佐藤英典
Photo:Rocketnews24

▼サイトウさんの活動について伝えたCBSニュース

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