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かつて東西ドイツを分断する抑圧のシンボルだった「ベルリンの壁」。1989年に壁は崩壊。東西統一後、旧東ドイツ側の壁にはアートが描かれ、現在では「イーストサイドギャラリー」として主要な観光スポットとなっている。

そのベルリンの壁が危機に直面している。なんと、イーストサイドギャラリーの一部が不動産開発のために取り壊しになるというのだ。取り壊し予定日に壁の前で市民による抗議デモが行われるというので、私(記者)も現場に行ってみた

・取り壊しの理由は高級コンドミニアム建設のため
今回、取り壊しの対象となったのは全長1.3キロメートルのイーストサイドギャラリーのうち、22メートルの部分だ。取り壊しの理由は、ある不動産会社が壁と隣接する川の間に高級コンドミニアムと橋の建設を計画しているためだ。

・作業開始日に300人もの市民が集まり抗議
取り壊し作業開始日は3月1日。その日の朝に抗議デモが行われることをFacebookで知った私は、現場に向かった。すると現場には、SNSを通して抗議デモのことを知った人々が大勢集まっている。一部報道によると300人ほどの人が集まったとのこと。国内外のメディアも多く駆けつけていた。

・市民の反対デモにより撤去作業は一時中止へ
私が現場に到着した時には、すでに壁が約1メートルほど切り取られた状態になっていた。取り壊し作業は早朝に始まっていたのである。しかし、人々の抗議によって撤去作業はその後、進行していない様子。何百人という人がじっと事態を見守っていた。その後ほどなくして、警察が壁の撤去作業を一時停止することを発表。その場は歓声に沸いた。

・2日後開催された反対集会にはすさまじい数の市民が!
そして、その2日後の3月3日。イーストサイドギャラリー前にてさらに大規模な集会が行われるというので、私も駆けつけた。すると、そこにはたった2日前の抗議デモとは比較にならないほど大勢の人であふれ返っていた。小さな子どもから、若者、高齢者まで、何千人という人が集まっていたのだ。

今回の集会のために設けられた特設ステージ上では、集会を組織した団体のメンバーやアーティスト、区長などが「壁」に対する思いを熱く語り、共感する人々からの声援で盛り上がっていた。

・「ベルリンの壁」が持つ意味
今回の取り壊しに対して、ここまで市民が強く抗議している理由は、「ベルリンの壁」が今もなお特別な意味を持ち続けているからだ。

デモに参加した人々からはこのような意見を聞いた。
「ベルリンの壁はただの壁じゃない。記念碑なんだ。それを利益の追求のために破壊するなんて絶対に許されない」
「壁はベルリンの負の歴史の象徴だ。いや、ベルリンだけじゃない。ドイツの、ヨーロッパの歴史を象徴する重要な文化遺産なんだ」
「この壁は歴史そのもの。それを壊す、しかもその理由が高級不動産のためだなんて、全く信じられない!」

また、ネット上での反対運動も盛り上がっている。たとえば、ある団体がネット上で行ったベルリン市長宛の取り壊し中止を求める請願書への署名は既に7万件に達しているという。

こうした市民の反発を受けて、取り壊しは一旦延期となっているものの、いつまた作業が再開されるか分からない状態だ。今現在も多くの市民が壁の行く末を見守っている。

参照元:change.org(独文)
Report:佐藤 ゆき

▼3月1日、壁の前で取り壊しに抗議する人々。300名近くの人が集まった

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▼切り取られた壁を戻そうとする動きも

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▼多くの警察も出動。結局この日の作業は一旦中止になった

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▼3月3日、抗議集会に集まる人々。何千人という市民やジャーナリストが集まった

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▼取り壊し反対の市長宛請願書に5万1604 件の署名が集まったことを示すポスター

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▼イーストサイドギャラリーに掲げられた旗「再考せよ」

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▼小さな子どもからシニアまで、ものすごい数の人が集まった

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▼取り壊し箇所に近接する壁。
左「決して俺たちの過去が好きではないが、過去を消し去ろうとするんじゃねー!」

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▼壁が切り取られた箇所。下「資本主義VS歴史」

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▼イーストサイドギャラリーで最も有名な壁画の一つ「兄弟のキス」

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▼日本をテーマにした壁画も!

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▼毎日多くの観光客でにぎわっている

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▼コンドミニアムの建設が計画されているのは川と壁の間

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▼3月7日、切り取られた壁の部分。「川沿いは全ての人のためにある」

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▼取り壊し対象部分は多くの人の関心を引きつけている

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▼取り壊しに反対する団体によって配られているビラ

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