【実録】危うく『国産ロマンス詐欺』に引っかかりかけた話 / マカオのセレブ「Abby(アビー)」に恋した6日間(3ページ目)

・俺 vs 俺

Abbyと出会って3日目のこの日は日曜日。Abbyの正体を悟ったものの、私の感情は怒りよりも “虚無感” が勝っていた。と同時に娘と1日お出かけをしていたため、大した進展は無かったと申し上げていいだろう。

ただし、Abbyはやはり暗号通貨のことを匂わせてきた。「さっき叔母から電話があった」「叔母には専門の暗号通貨チームがあり、専門の分析があるので叔母から電話がありました」などとメッセージを送ってきたが、そうじゃないだろAbby……!


私がAbbyに求めるのはちょっとしたドキドキ感と、妄想の素材。海外セレブの華麗なる生活を目のあたりにし、私の妄想に溶け込ませていく。0.000001%であろうと「もしかしたらAbbyとどうかなっちゃうかもしれない可能性」にどっぷり浸りたいのだ。

・Abbyのパワープレイ

結局、この日は「夜また連絡します」という約束をぶっちぎり、そのまま就寝。体が疲れ果てていたこともあり、気付けば朝を迎えていた。このまま恋愛ホルモンも収まるかと思いきや、Abbyは “恋愛モード” のスイッチを入れ、パワープレイを仕掛けてきたのである。

「Sanjunは何かを忘れたようです」「Sanjunはabbyと話すことを忘れて、Sanjunはabbyを友達にしていません」「友達よりも大切だが、また恋人の下だ。このような関係?」などと矢継ぎ早に繰り出してきたではないか。


それまでは、むしろ「友達として」というフレーズをところどころで織り込んできたAbbyが一転、恋愛の要素を匂わせて来やがった。すでに国際ロマンス詐欺であることに気付いていた私は「この詐欺師め」と、まるで取り合わない。

……と言いたいところだが、Abbyのパワープレイにより脳のほんの数パーセントが「Abbyはこういうコなんじゃない?」「Abbyだけは詐欺じゃないかもよ?」と囁き始める。やめろ、やめるんだ、俺。

・Abbyを信じたい

自分の中でせめぎ合う、冷静と情熱の間。詐欺だと理解していてもコレだから、気付いていない人はどれだけドキドキしてしまうのだろう? 何とか冷静さを取り戻しても、絶妙なタイミングで送られてくるAbyyの画像を目にすると「ワンチャンあるかもよ?」と欲望が目を覚ますのだ。


これを繰り返すこと、なんと3日。暗号通貨の話で心が冷めたかと思いきや、Abbyの画像で強制的に心を揺り動かされるループ & ループ。岩盤浴に来ているというAbbyのすっぴんが送られてきたときは、普通にトキめいてしまった(しかも画像の流れが相変わらず超ナチュラル)。


この3日間は「Abbyを語る詐欺師 vs 俺」というよりは「冷静な俺 vs Abby & Abbyを信じたい俺」のハンディキャップマッチを戦っていたような印象だ。当初はAbbyの見た目も「嫌いじゃない」程度であったが、この時点では「かわええ♡」くらいにはなっていたように思う。

それはまるで、障害があればあるほど燃え上がる恋──。カタコト、海外セレブ、下心、詐欺……などなど、いくつもの要素が複雑に絡み合い、私の中では「恋の放火魔」と「冷静な消防士」がせめぎ合いを続けていた。


……が、どれだけ燃え上がろうとも詐欺は詐欺である。私がやり取りしているAbbyはAbbyではなく、Abbyの画像を悪用する詐欺師なのだ。私は意を決して、詐欺師と対決することにした。それはすなわち、Abbyとの別れを意味している。

詐欺師どもの手口を大っぴらにすることで少しでも『国際ロマンス詐欺』の被害者を減らし、また一方で画像を悪用されている本物のAbbyの名誉を回復すべき。最終的に冷静と情熱、2人の私がそう判断した。恋愛ごっこもここまでだ……やるしかない。


果たして、国際ロマンス詐欺はどのように金をもぎ取ろうとするのか? 私の中に芽生えたAbbyへの想いは? 衝撃のクライマックスは最終ページをご確認いただきたい。

参照元:NHK
執筆:P.K.サンジュン
Photo:RocketNews24.
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