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町を歩いていると、Amazon のロゴがニヤリと笑った段ボール箱を抱えて走る配達員を見かけることがある。なにかと便利で、ついつい使いすぎてしまう Amazon。きっと配達員さんたちは、日夜この Amazonボックスを配りまくっているのだろう。

しかしその忙しさは、我々の想像を超えているもよう。なんと Amazon配達員のなかには、忙しすぎてトイレ休憩にも行けず、バッグにウンコをしながらお仕事をしている人もいるというのだ……。

・『BBC』記者が運送会社に潜入

英国で働いている Amazon配達員たちの多くが、法定労働時間よりも長く働き、その一方で最低レベル以下の賃金しか受け取っていないと英メディア『BBC』が伝えた。

1人の『BBC』記者が、Amazon配達を請負っている運送会社の一つ AHC services社に覆面潜入し、実際に Amazon配達員になって2週間働いてみたのだ。ちなみに配達員たちは、Amazonとの契約で “自営業者” とされているとのこと。

・時給が約350円だったり、「シートベルトをしなくても大丈夫」と言われたり……

すると1日最大200個の荷物を配らなければならないことから、配達スケジュールを守るためのスピード違反、トイレ休憩なしなど、様々な内情を知ることができたという。以下が、記者が体験したという一部だ。

配達員の1日の労働時間は上限11時間と法律で決まっているが、11時間以上働いた。

上司から「シートベルトをしていなくても大丈夫。なぜなら警察は、運送会社の車を止めないから」と言われた。

「トイレ休憩もとれないから、バッグの中にウンコをしたり、ボトルの中にオシッコをすることもある」と話す同僚が何人もいた。

働き始めて最初の週は、3日で93.47ポンド(約1万2600円)支払われた。トラック代や保険料などを差し引いたら、時給2.59ポンド(約350円)だった。2週目は4日働き、時給換算すると4.76ポンド(約640円)となった。

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・プレッシャーから何度も事故を起こした元配達員も

また「全てを届け終えなければならないというプレッシャーから、大急ぎで運転し、何度も小さな事故を起こした」と明かした元配達員も紹介されている。

英国の最低時給は7.20ポンド(約970円)となっているが、AHC services社が適用する配達システムに交通渋滞や休憩時間が考慮されていないことから、これらの問題が起こっていると考えられるようだ。

・Amazon「時給は約1620円で、労働時間は9時間程度のはず」

“自営業者” である配達員たちには、最低賃金法が適用されていないと伝えられているが、労働法に詳しい専門家は、配達ルートや仕事・休み時間の決定権がない配達員たちを “自営業者” と分類することはできないと指摘している。

今回『BBC』が報じた内容に対して Amazon 側は、「配達のペースからルート、休憩時間の決定権は、配達員たちに委ねられている」「配達員たちへの最低時給は12ポンド(約1620円)。別途ボーナスなどの手当も用意」「1日の労働時間は約9時間」と述べているそう。

AHC services社も「1年以上前に、このようなシステムは改善されているはず」と、今回の記者の体験レポートを否定している。

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・配達員になってみた記者が「最もツラかった&最も嬉しかったこと」

Amazon配達員として潜入取材を行った記者は、別の記事にて「最もツラかった&最も良かったこと」を以下のようにつづっていた。

「最もツラかったのは、家族に会えないことだ。家を出るときには1歳の息子はまだ起きていないし、帰る頃にはもう就寝している。ほんの短い間でも、これには参った。配達員を本業としている人々が、どのように折り合いをつけているのか想像できない」

「最も良かったのは、子供たちに贈り物を届けられたこと。サンタクロースになったような気分だった」

参照元:BBC[1][2](英語)
執筆:小千谷サチ
Photo:RocketNews24.