ありがたいことに、私が執筆している「女ひとり飲み」には、読者のみなさんからたくさんのリクエストが届く。

もちろん、いただいた内容にはすべて目を通している。そのうえで、自分のスケジュールや行きやすさなどを考え、優先順位をつけてできる限り足を運ぶようにしているのだが、すべてが順調に記事になるわけではない。

ときには、ちょっぴり苦い思いをすることもある。

今回は「女ひとり飲み」の番外編として、ある読者リクエストをめぐる一連の出来事をお届けしたい。

・取材が実現しなかった店

リクエストはおなじみのチェーン店から地域限定イベント、人気の個人店や老舗など様々いただいている。

とくに個人店や老舗などを記事で紹介する場合、事前に撮影や掲載の許可を取る必要がある。

しかし、問い合わせをしても返事がなかったり、警戒されて取り合ってもらえなかったりすることは珍しくない。

昨今はSNSの治安も決して良いとはいえず、迷惑行為の被害に遭う飲食店もある。突然「メディアで紹介したい」と連絡が来れば、警戒するのも当然だと思う。


今回リクエストをいただいたのは、串焼きが自慢だという、とある大衆酒場。

食通かつ酒の猛者である読者が太鼓判を押す店だ。きっと良い店に違いない。

このお店はSNSが活発に更新されていたため、まずはDMで撮影・掲載について問い合わせてみた。


ところが、10日以上待っても返信はない。


相互フォローではなかったため、DMがリクエスト欄に入り、気づかれていない可能性もある。そこで今度は店へ電話をかけ、事情を説明することにした。

電話口では「DMを確認して、そちらで回答します」とのこと。

ひとまず話は伝わったようなので、私も企画の概要を簡単に説明しようとしたのだが、その途中で突然通話が切れてしまった。


……おっと?



間違えて切れてしまったようにも感じたし、営業中で忙しかったのかもしれない。

後者だった場合、これ以上の問い合わせは迷惑になると判断し、こちらから折り返すことはせず「DMで回答する」という言葉を信じて、そのまま連絡を待つことにした。

しかし、その後も電話がかかってくることはなく、数週間が経過してもDMへの返信はなかった。

撮影・掲載の許可が確認できない以上、通常の読者リクエスト記事として紹介することはできない。残念ではあるが、今回は取材の相談を取り下げることにした。


しかし……。



せっかく読者が教えてくれた店なのだ。取材ではなく、あくまで一般客として、自腹で飲みに行ってみることにした。

なお、本記事に掲載している画像はすべて、実際に撮影した写真などをもとにAIで生成・加工したイメージである。

実際の店内や料理をそのまま写したものではないので、あらかじめご了承いただきたい。


・やや因縁の店へ潜入

そんな経緯があったため、店へ向かう足取りは正直ちょっと重かった。

もしかすると、かなりクセの強い店なのではないか。入った瞬間に冷たい対応をされるのではないか。

いやいや、電話が切れたのも、返信がなかったのも、何か事情があったのかもしれない。

読者がすすめてくれたからには、きっと良い店に違いない。


さまざまな想像を巡らせながら入店すると、外観も内装も「これぞ大衆酒場!」といった雰囲気。

店内はかなりにぎわっており、口コミどおりの人気ぶりがうかがえた。


案内されたのはカウンター席。私の左右では、常連らしきお客さんたちが楽しそうに談笑している。

店員さんは比較的若く、フレッシュな印象だ。常連客とも必要最低限のみの会話で、内輪だけで盛り上がるような雰囲気ではない。いい意味で適度な距離を保ちながら、テキパキと接客していた。

客層も老若男女を問わず幅広い。

私と同じようにひとりで飲んでいる人もいれば、グループで楽しんでいる人もいる。まだ社会人になって間もないように見える若い男性客たちが、ボトルを入れて盛り上がっている姿もあった。思ったより居心地いいじゃねえか……!


・読者の太鼓判は本当だった

メニューに目をやると料理もお酒は比較的リーズナブル。

そして、肝心の料理の味はというと……。

1本ずつ丁寧に焼かれた串焼きは、どれも大ぶり。手頃な価格ながら食べ応えがあり、焼き加減も申し分ない。

刺身系の一品も新鮮で、お酒がどんどん進むうまさだった。これは、読者が太鼓判を押すのも納得だ。


入店前には少し身構えていたものの、実際に店内で受けた接客に気になる点はなかった。

料理はおいしく、価格も良心的。店員さんと常連客の距離感もほどよく、初めて訪れた私がひとりで座っていても、居心地の悪さは感じない。

総合的に見ても、とても良い店だと感じた。


・タイミングって大事

電話は、たまたま切れてしまっただけかもしれない。

DMも、当初はリクエスト欄などに入り、確認されていなかった可能性がある。

実際に利用した限りでは、「対応の悪い店」という印象は受けなかった。むしろ、読者がすすめてくれた理由に納得できる店だった。

ただ、事前に撮影・掲載の許可を得られなかった以上、読者リクエストとして通常どおり紹介することは難しい。なんとも歯がゆい結果である。


──と、ここまで書いたところで、なんと先方からDMが届いた。

取材の取り下げから数週間経過し、私が一般客として店を訪れた後のことだった。

内容は、「また面白そうな企画があれば声をかけてください」といったもの。タイミングがいいのやら悪いのやらだ。

あと少し連絡のタイミングが違っていれば、通常の記事として紹介できていたのかもしれない。飲食店への取材とは、なかなか難しいものである。


・今回は残念だったけれど

それでも、自分だけでは見つけられなかった店を教えてもらえることは、本当にありがたい。

すべてのリクエストを記事にできるとは限らないが、これからも可能な範囲で足を運び、自分の目と舌で確かめていきたいと思う。

ということで、読者のみなさん。今後ともリクエストをよろしくな!


執筆:大島あさ未
Photo:RocketNews24. / Chat GPT