ダイエットについて調べれば調べるほど、わからなくなる。


糖質を減らせ。いや、炭水化物は必要だ。脂質を減らせ。タンパク質を摂れ。筋トレしろ。有酸素運動しろ。水を飲め。


いったい、何が正解なのか。


そんなことを考えていた時──私のすぐ近くに「体重を落とすプロ」がいることに気がついた。


私が通っている「新宿レフティージム」のトレーナーにして、現役プロキックボクサーの松永隆(まつなが りゅう)選手である。


・体重コントロールの魔術師

この男、とにかく体重の振れ幅がすごい。


試合後、好きなものを食べまくってダラけている時期には、ブクブクに浮腫みまくって体重が60kg台後半まで増えることもある。


しかし試合となれば55kgまで落とす。あるいはそれ以下。


その差、少なく見積もっても、およそ15kg。


もちろん、そのすべてが脂肪というわけではない。水分やむくみ、計量に向けた特殊な体重調整なども含まれる。


とはいえ、約15kgの幅を何度も行ったり来たりしながらプロのリングに立っている男なのである。


そんな、“体重コントロールの魔術師” といっても差し支えない人間に、「結局、どうやったら痩せるんですか?」と聞いてみた。


・実は私も過去、1カ月で10kg以上落とした

その前に書いておきたい。なぜ私が松永選手の話を聞こうと思ったのか。


私自身、新宿レフティージムのダイエットプランに挑戦したことがあるからだ。そして実際に、1カ月で10kg以上の減量に成功した。※しかもその後、リバウンドなし


もちろんこれは私個人の結果であり、誰でも同じように痩せるという話ではない。


だが少なくとも私は、「本当に体重ってこんなに変わるんだ」ということを自分の体で経験した。


さらに松永トレーナーが指導した女性会員の中には、なんと1カ月で約15kgの減量に成功した人もいるという。


こちらもかなり特殊なケースだ。


本人が非常に熱心で、週4〜5回ほど、時にはそれ以上ジムに通い、松永選手のパーソナルトレーニングに加えて通常レッスンや自主練にも取り組んでいたという。


つまり「松永式なら1カ月15kg痩せる」という話では決してない。


しかし、


私 → 1カ月で10kg以上減。
女性会員 → 1カ月で約15kg減。
そして松永選手本人 → 約15kgの体重幅を行ったり来たり。


少なくとも私の周囲で、これほど「体重を落とす」ということに関わっているジムならびに人は、新宿レフティージム and 松永選手以外にいない。


ならば聞くしかないだろう。ダイエットの極意とは何なのか。



・まず「プロの減量」と「ダイエット」は別物

最初に、非常に重要なことを書いておく。松永選手が試合前に行う「減量」と、一般の人が行う「ダイエット」は別物である。


松永選手の普段の体重は約62kg。試合では55kgまで落とす。


試合が近づくにつれて食事量を調整しながら練習を続け、最終的には発汗なども利用して契約体重に合わせる。


試合直前には夜の食事をほとんど取らないこともあるという。


さらに驚いたのが、増えすぎた体重を戻す時の話。


試合後に食べまくって体重が増えた際、松永選手はエアロバイクを使うことがある。


過去には何時間も漕ぎ続け、半日ほどで体重が約8kg落ちたことまであったという。


だが、これは絶対にマネしてはいけない。


短時間で落ちた体重の多くは水分などによるものであり、脂肪が半日で8kg消えたわけではない。


そもそも、よく訓練されたプロ格闘家が計量に向けて行う特殊な体重調整である。


では、普通の人間が痩せたい場合はどうすればいいのか?


ここからが本題だ。


・極意その1「一番は飯」

松永選手に、「キックボクシングをやっていない普通の人が痩せるなら、何が一番大事?」と聞いてみた。


答えは即答。


「一番は飯ですね」


やっぱり、そこなのだ。


もちろん運動も必要。しかし、運動だけで体重を落とそうとすると、初心者の場合は強度や時間の調整が難しい。


体重が重い状態でいきなり激しく走れば、膝や足首などを痛める可能性もある。


そこで松永選手が最初に考えるのが、「食べる量を減らす」ことである。


ものすごく普通。だが、結局これが一番大事なのだという。


・極意その2「ヘルシーだから大量に食べていい」ではない

ここが松永式の面白いところ。


ダイエットというと、鶏胸肉! サラダ! 玄米! 野菜! プロテイン!……と「何を食べるか」に意識が向きがちである。


もちろん食事内容は大切。


しかし松永選手がまず見るのは、もっと単純に「どれだけ食べているか」。


いくらヘルシーなものを選んでも、大量に食べれば量は増える。


だったら、まず全体量を少し減らす。量を減らすのがどうしても嫌なら、今度は食事内容をクリーンなものに変える。そのどちらか、であるという。


・極意その3「お菓子もアイスも食べていい」

そして私が意外だったのが、これ。松永選手はダイエット中でも、「お菓子を絶対禁止」とは考えていない。


アイスだって食べる。しかも氷菓ではなく、クリーム系のやつだ。


重要なのは、好きなものを完全に禁止することではなく、全体量を抑えること。


いきなり、


「ラーメン禁止!」
「お菓子禁止!」
「アイス禁止!」
「白米禁止!」


とやってしまえば、ストレスが溜まって続かなくなる可能性がある。だったら少し食べればいい。


松永選手自身、夜に甘いものが欲しくなった時、「アイス1個食べて満足して寝られるなら、それでもいい」という考え方だという。


もちろんアイスを推奨しているわけではない。でも、この「逃げ道を残しておく」という発想は、個人的にものすごく納得できた。


・ラーメンや牛丼を「ガッツリ」をやめる

では、何から変えるのか。松永選手の話をものすごく簡単にまとめると、


「ガッツリ食べるのをやめる」


である。


たとえば朝からラーメン。昼に牛丼大盛り。夜もガッツリ。そんな生活をしているなら、まずそこを変える。


だからといって、炭水化物を完全に抜く必要もない。


おにぎり1〜2個などにして、量を調整する。その代わり、どうしても甘いものが欲しければ少し食べる。


「すべてを100点にする」のではなく、「今より全体的に少なくする」


松永選手の話を聞いていると、この考え方が何度も出てきた。


・極意その4「週3〜4回、軽くでも動く」

食事とセットになるのが運動だ。松永選手が一般の人に勧めるなら、可能であれば週3〜4回程度。毎回、死ぬほど追い込む必要はない。軽い運動でもいい。


そして面白かったのが、運動には「カロリーを消費する」以外の効果もあるという話。


どういうことかというと……


運動している時間は、食べられないのだ。


これは盲点だった。


夜、家でヒマにしている。酒を飲む。お菓子を食べる。何となく冷蔵庫を開ける。


そんな時間をジムに変えれば、その間は食べない。いや、食べられない。しかも体を動かしている。


ジムじゃなくてもいい。散歩でもいい。「ヒマだから食べる」という時間を減らすだけでも、かなり違ってくるという。


・松永式「超シンプルな1日の食事」

では、松永選手なら具体的に何を食べるのか。運動する日を想定して、かなり単純化した一例を聞いてみた。


朝:おにぎり1個
昼:おにぎり+サラダ+味噌汁など
運動1〜2時間前:大福など
夜:ヨーグルトやプロテインなど軽いもの


めちゃくちゃシンプル。


ちなみに、おにぎりの具について聞いたところ、昆布でも明太子でもいいし、そこまで細かく神経質になる必要はないという。


運動前の大福は、小さくてもある程度エネルギーがあり、運動に備えられるから。


夜はなるべく軽くする。


そして、どうしても甘いものが欲しかったら、少量のアイスなどで満足するのもアリ。


朝や昼のおにぎりに、サラダや汁物などを加えれば、よりバランスを取りやすい。


「ダイエット食を作らなければ!」と考えると面倒くさくなるが、これならコンビニでもできる。


・水は「2リットル」にこだわらない

もうひとつ気になったので、「水を1日2リットル飲めってよく言うけど、あれはどうなの?」とも聞いてみた。


松永選手自身は「必ず○リットル」と決めてはいないという。


そもそもキックボクシングの練習をすれば大量に汗をかくので、自然と水分を摂る。


ただし、仕事などに集中して水分補給そのものを忘れてしまう人なら、意識して飲んだ方がいい。


飲み物をシンプルにするなら、水やお茶。


これまた、特別な魔法はなかった。



・1カ月と3カ月では、やり方も違う

松永選手がトレーナーを務める新宿レフティージムには、「超ダイエットプラン」というコースがある。


ここで大切なのは、「全員に同じことをやらせるわけではない」ということ。


1カ月で集中的に体重を落としたい人と、3カ月かけて落としたい人では当然やり方が違う。


実際、現在松永選手が指導している会員の中には、3カ月で10kg減を目標にしている人もいるという。


期間に余裕があるなら、短期集中のような厳しい食事にする必要はない。


普段の食事内容を見直しながら、週3回程度のパーソナルトレーニングを行う。


一方、先ほど紹介した「1カ月で約15kg減」の女性会員は、週4〜5回以上のペースで非常に熱心にトレーニングしていた。


同じ「10kg、15kg痩せたい」でも、その人の体格、生活、期間、運動量によって方法は変わるのである。


・15kgを行き来する男が最後に言ったこと

考えてみれば不思議である。目の前にいる松永隆という男は、


食べまくる。
太る。
60kg台後半になる。
そして試合が決まる。
食事を調整する。
練習する。
55kgまで落とす。
戦う。
試合が終わる。
また食べる。


──ということを繰り返している。


約15kgの体重幅を行ったり来たり。


もはや体重の操縦士である。


そんな男に「ダイエットの極意」を聞いたら、とんでもない裏技を教えてくれるのかと思っていた。しかし先述の通り、出てきた答えは、


「一番は飯」


だった。おさらいすると、


食べる量を少し減らす。
ガッツリ食べない。
でも、好きなものを全部禁止する必要はない。
そして週に何回か体を動かす。
ちゃんと寝る。


それだけ。


ものすごく地味である。


だが、私自身が新宿レフティージムのダイエットプランで1カ月10kg以上落とした経験があるだけに、この「地味な答え」には納得しかない。


結局、魔法なんてないのだ。


食べる量をコントロールして、動く。


そして、それを続ける。


約15kgを何度も行き来してきた現役プロキックボクサーが最後に行き着いた答えがそれなのだから、少なくとも私は信じてみようと思う。


・松永隆選手、次戦決定!

ちなみに今回話を聞いた松永隆選手は、新宿レフティージムのトレーナーでもあるが、正真正銘の現役プロキックボクサー。


プロ戦績は9勝9敗。そして次戦は、2026年9月12日に新宿FACEで開催される、「Z RACING PARTS presents UNRIVALED-5 ~FACE final~」に出場予定。


対戦相手は真弘館の武寛選手。スーパーバンタム級、3分3回戦で行われる。


普段、私もジムでお世話になっている松永選手。10勝9敗になるか、9勝10敗になるか。ものすごく重要な19戦目である。


彼のことだから、減量の心配はない。あとは試合で勝つだけだ。がんばれ、まっちゃん!


参考リンク:RISE公式 選手プロフィール「松永隆」、次戦「UNRIVALED-5 ~FACE final~」、新宿レフティージム「超ダイエットプラン」、新宿レフティージム
執筆:GO羽鳥
Photo:RocketNews24

▼こちらが松永選手、次戦のポスター

▼ジムの料金表。超ダイエットコースもある


▼ふだんの練習のもよう