
最初その店の看板を見たときは「叙々苑」かと思った。芸能人が何かと話題にする焼肉の叙々苑だ。
だけど、こんな歌舞伎町の「裏」って感じの場所にあの叙々苑があるのか? と思って近づいてよくよく見ると、「叙楽苑」だった。漢字1文字違いだけど……叙々苑とは雰囲気がかなり違う。
・別物感
そもそも、この「叙楽苑」は看板を見る限り中華料理。正確に言えば台湾家庭料理のようだから、焼肉の叙々苑とは料理のジャンルが全く違う。
加えて、外観から漂う雰囲気が全く違う。叙々苑が3つ星ホテルだとしたら、こちらは民宿とでも言おうか。
お世辞にも高級感があるようには見えないが、それだけに “味” がすごい。
共通している点としては「入店するのに敷居の高さを感じる」ってところだが、同じ敷居の高さでも種類が違う。
叙々苑は価格的に入りにくいのに対して、「叙楽苑」はシンプルに入りにくい。その入りにくさを言葉で説明するのは難しいが、お店が2階にあって店内が全く見えないからなのもあるだろうし、歌舞伎町の路地裏という立地もあるだろう。
「こんな場所の店で常連さんばかりだったらどうしよう」的な怖さゆえに、扉を開けるのは躊躇(ちゅうちょ)してしまう人が多いのではないか? “おひとりさま” だと特に。
だが、そこをあえて入ってみることに。恐る恐るドアノブを回して押すと……
誰もいない
私の視界には3つのテーブルが入っているが、お客さんは誰もいない。お店の人もいない。「すみませーん、1人なんですけど入れます?」
声をかけたが反応がない。もしかして誰もいない? いや、お店の人はもっと奥にいるだけかもしれない。
そうだと信じて、もうちょっと奥に入ってみる。そして「すみませーん、すみませーん」と大きめの声で何度か呼びかけたところ……
「はーい」と何度目かで返事があり、女性のスタッフが上から降りてきた。どうやら上の階で調理ができるようで、そこで仕事をしていたらしい。
その女性のスタッフに「どうぞ」と言われるがまま席に促され、メニューを渡される。この時点で私は気づいた。めちゃくちゃアットホームなタイプの店だと。
ただ、メニューを見ても何を選べばいいのか全くわからない。なので「おすすめは何ですか?」と聞いてみると、「酢豚かな〜」とのこと。
「じゃあ酢豚で」「酢豚は2種類あってね」といったやり取りの末に私が選んだのは、「酢豚(1200円)」「卵とエビの炒め物(1200円)」。青島ビール(600円)を飲みながら料理を待った。
・続々とお客さんが
その間に、店の扉が開いて数人のグループ客が入って来た。
やっぱりこういうお店は誰かと一緒に来るもんだよなと思ったのも束の間、グループ客も私同様「すみませーん、すみませーん」と店の奥に声をかけ始めたのだ。
その直後、グループ客の1人が私を見て「ママいるよね?」と聞いてきた。
「いますよ」と返事だけしてビールを飲み続けるのも愛想が無い気がしたので、階段の近くまで歩いて「お母さん、お客さん来てるよ〜」と上の階に声をかける。
するとお母さんが「はーい」と返事して降りてきて、そのグループ客から注文を聞く。
それが終わったと思ったら、別のお客さんがやって来ては「すみませーん! すみませーん!!」
またもや私が階段の近くまで行って「お母さん、新しいお客さん来たよ〜」。
そう、最初に入店した私がメッセンジャー的な役割を務める流れになり、お客さんが来る度に上の階に「お母さん、また来たよ〜」と伝えまくることになったのである。
のちにお父さんもいることがわかったから、「お父さん!」と呼ぶこともあったが、こんなに大声でお店の人を呼び続けた経験はなかなかない。
でも、決して嫌ではない。むしろ、そういったことを進んでやりたくなる空気感がお店にはあったのだ。
それはおそらく、お客さんと店員さんの距離が近いことも関係しているだろう。タブレットやQRコードで注文するのが全盛の時代だからこそ、この距離の近さは店の武器になっている気がした。
ついでに言うと、お客さん同士の距離も近い。私のような中年の “おひとりさま” でも話かけられたくらいだから、相当である。下手したら実家以上にアットホームかもしれない。
私は昔の歌舞伎町を知らないが、そんな私でも「古き良き時代の歌舞伎町が詰まっている」と言いたくなるほどであった。
・家庭的すぎる
また、頼んだ料理はどれも美味しかったし、中華料理チェーンと比べて手作り感が段違い。
飲み屋だと、お酒が進むように濃い味にしているのだろうと感じる店が少なからずあるが、叙楽苑はそういう要素がない。良心的で、何より家庭的な味。
表の看板に「台湾家庭料理」とあったがまさにそれ。言葉に偽りなし。むしろ、色々な意味で家庭感がありすぎるお店であった。
・今回ご紹介した飲食店の詳細データ
店名 叙楽苑
住所 東京都新宿区歌舞伎町1-3-10叙楽苑ビル2F
時間 17:00~翌2:00
定休日 第2・第4日曜日
執筆:和才雄一郎
Photo:RocketNews24.
▼メニューの一部
▼余談だが、叙楽苑から徒歩3分くらいの場所に焼肉の叙々苑があるぞ
和才雄一郎












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