
日本アーティストの中国公演中止が相次いでいる。ゆず、浜崎あゆみなどビッグアーティストのツアー中止がニュースとなり、現在は日本人メンバーがいるK-POPグループなどにも波及しているようだ。業界外の人も注目する話題になったのはその辺りからだと思うのだが……
関係者の間ではもっと前に「そろそろヤバイかも」という噂が囁かれていたのだそうな。中国公演を手掛ける海外イベンターに話を聞いた。
・日本文化に慣れ親しんでいる中国人も多い
「寒いですね」──。挨拶がわりにそう声をかけてきたのは、つい先日まで所属バンドのライブに帯同して香港に行っていた海外イベンターのM氏。帰ってきたのは昨日らしく、現地は21度だったとのことで、その寒暖差にまだ慣れない様子。
M氏によると、中国本土と違って香港は平常運転で、現地のプロモーターとの間で、来年の予定の話も出ている状況なんだそうな。
M氏「中国のライブハウスシーンには日本人アーティストのファンダムがあって、日本よりも中国で知られているインディーズミュージシャンも多いんです。
特に、都会の若い人は日本の文化に慣れ親しんでいる人が多くて、街を歩いていても人は親切ですね。興行することが多いのは香港、上海、広州、北京なので、その辺りでの僕の肌感になりますが。事実、香港の現地関係者とは来年の予定を詰め始めてますよ」
・中国本土での日本人イベント状況
一方、中国の本土はやはり先の予定が決められない状況の様子。現場では「しばらくは厳しい」という見通しになっているという。
M氏「現地プロモーターは、再来年くらいを見てる雰囲気ですね。僕としてはひとまず来年の夏からどう転ぶかという感じで見てます」
──来年いっぱいってMさん結構大変なんじゃないですか?
M氏「仕事面で言うと、弊社は中国だけに依存していたわけではなく、海外公演の場所の1つという感じなので、事業としての影響は正直そこまで大きくありません。ただ、仕方がないこととは言え、各バンドやレーベルのファンをはじめ待ってくれている人に申し訳ない気持ちはありますね。結局大事なのは人なので」
・渡航自粛呼びかけの瞬間
そんなM氏は、中国政府が最初に渡航自粛を呼びかけた2025年11月14日、まさしく内地でイベントの真っ最中だった。中止にはならなかったんですか?
M氏「ギリギリでしたね。我々は13日北京、15日上海、16日成都と無事公演ができて帰国するタイミングで発表を知って。僕たちが最後のライブをやった後、次の日本人公演から全部キャンセルになりました」
──現地の雰囲気が変わったりとかはなかったんですか?
M氏「例えば、街の雰囲気が日本人ヘイトっぽくなったとか、イベントに人が来なくなったといった変化は、少なくとも僕が滞在していた範囲では感じなかったですね。
国がやり合ってるからそこに住む人も嫌いになるという人もいるかもしれないですが、僕が見た限りでは人は人です。政治や国同士の問題と、現地で生活している人たちの感情は必ずしもイコールではないので。その部分は日本と同じだと思いますね。」
──では、逆に渡航自粛前後で変わったことってありますか?
・水面下の変化
M氏「そうですね……リアルに僕が感じられた変化はビザです。どこの国でも一緒なんですけど、外国人のアーティストがライブをする時は政府からビザを発行してもらう必要があるんですね。逆にビザを取ってない場合やっちゃいけないんですが……
渡航自粛の呼びかけが発表されるちょっと前くらいから、ビザの許可が出るのが遅くなったんです。具体的に言うと、9月くらいからビザの許可にかかる時間が普段より2週間くらい長くなりました。この手の変化は、公式発表よりも先に現場に出ることが多いので、僕らとしてはかなり気になるサインでしたね」
──思ったより前ですね。
M氏「そうです。ビザを発行するためには、各都市の公演許可証を国に認可された現地プロモーターに取ってもらう必要があるので、現地プロモーターもその許可関係の異変に気付いていて、『そろそろ何かあるかも』と現場だけの噂になってたんですね。
11月中頃までに中国ライブを消化する方向で調整していたのもその異変があったからでした。現在の状況を予想してたと言うと大げさですが、可能性の1つとして考えて念のためという感じでした。
状況が落ち着いたら、また普通にライブができる日が来ると思ってます。その時にちゃんと戻れるよう、今は粛々と準備するだけですね」
──とのこと。日本人アーティストを海外に送り出すだけでなく、海外アーティストの国内イベントにも長年携わり、海外と日本の橋渡し的存在として現地からの信頼も厚いM氏。そんなM氏がいち早く察知したサインは水面下での攻防戦すら思わせる変化であった。
継続的に中国で日本人アーティストの興行をしていたからこそ気づいた最前線の予感と言えるだろう。ただ文化交流が正常化することを祈るばかりだ。
執筆:中澤星児
Photo:Rocketnews24.
中澤星児


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