ことし2025年6月に公開された映画『国宝』がスゴいという話は、もちろん前々から聞いてた。知人たちも続々と観に行っては、その感想をちらり、ちらりと教えてくれた。


絶対に映画館で観た方が良いという人もいれば、そのうちテレビやネットで配信されるだろうから、それを待っても良いのでは? という人も。いろんな意見があって当然である。


一方の私は……まだ観ていなかった。観た方がいいな……とは思っていたが、どうも重い腰が持ち上がらず。しかし、つい昨日、ちょうど時間が空いたのでサクッと観に行ってきた。

私の空き時間は夜。しかし、職場である新宿付近で『国宝』が上映されている映画館を調べてみると、非常に行きにくい時間帯にしか上映されていないことがわかった。


まず、朝や昼。もうその時間は仕事している。もしくは22時や23時すぎ。約3時間の長い映画が終わった頃には、もう電車も終わっている。どうやって帰れば……みたいな。


しかし、TOHOシネマズ日本橋なら19:30〜22:40で観られるようだ。すぐさま当日の朝にネットで予約した。すると、私を含めて予約している人は3人しかいなかった。


映画館に入ると、3人どころか、意外と多くの人が詰めかけていた。さすがに満席ではないが、3〜4割くらいの席は埋まっていたように見える。ゆとりある鑑賞ができる感じの空き具合だ。


そして映画が始まった。ネタバレになるので内容に関してはなにも書かないことにする。なお、大きなポップコーンとコーラを用意して鑑賞したが、集中していたのか、上映中はほとんど手をつけなかった。



見終えた直後は、疲れ切っていたというか、呆然としていた。正直、ズコーン! と脳天を叩かれるような衝撃ではなかった。「まぁ……すごかったな……」といった感じ。


そう思うと同時に、そんなに興奮していない私に対し、私自身が「世間の感覚と私の感覚が完全にズレてしまっているのかな……」なんてショックを覚えたのも事実。


トボトボと、冬の風がピューピュー吹く街を歩き、電車に乗って家に帰った。



帰宅中も、帰宅後も、国宝のことを考えていた。あらためてあらすじを読んだり、キャストを調べたり……そんなことをしていたら、いよいよ疲れ果てていつの間にか寝ていた。


起きてからも頭の中は国宝。あのキャラが言ったあのセリフが、頭の中でリフレインしている。おこがましいのは承知の上だが。私も舞台に上がる身として、思うことが多々あった。


習い事(朝活)の練習中も、なんとなく国宝のことを思い出していた。そして気付いた。これ、もしかして「余韻」というやつでは? もしそうなら、余韻の強さ、ハンパないぞ……と。


私にとって、国宝という映画は、かなりあと効きの映画だった。芸事とは何か、極めるとは何か、プロの仕事とは、美しさとは、魅せ方(見せ方)とは、そして……人生とは。


相当に “遅ればせながら” ではあったが、今のうちに観ておいてよかったと思うし、映画館の大きなスクリーンで観て本当に良かったと痛感している。


そして今もまだ、『国宝』のことを考えている。


参考リンク:映画『国宝』公式サイト
執筆:GO羽鳥
Photo:RocketNews24