武器であると同時に美術品としても評価される日本刀。「天下五剣」は数多ある日本刀の中でも史上最高傑作と謳(うた)われる5振りだ。様々な伝説を持つこの5振り。中でも『大典太光世』の伝説は異彩を放っている。その伝説とは……

姫の病を癒した霊剣──。伝説すぎィィィイイイ! そんな霊剣が2024年3月26日から石川県立美術館で展示されている。国宝な上に、前田利家を先祖とする旧加賀藩主・前田家の家宝でもある刀だけに展示は激レア! というわけで金沢まで観に行ってみた!!

・バスは6番乗り場だって

北陸新幹線の開通で都内からでも3時間かからない金沢。7時に家を出た私(中澤)は11時に金沢駅に着いたから、やろうと思ったら日帰り行けるなこれ。

石川県立美術館は駅からは離れた兼六園の辺りにある。東口出てずっと行った先だ。バス乗り場の警備員さんに聞いたところ、石川県立美術館に行くバスは6番乗り場らしい。

・あえて歩いてみた

しかし、せっかく金沢に来たので歩いて行ってみることにした。街の雰囲気は基本のんびりしている。北陸応援割の影響か、観光客っぽい集団をよく見かけるが、穏やかな空気を変えるほどではない。


道すがら良い感じの神社もあった。新幹線の駅がある街と史跡が同居している感じは良いね。空も広い。

で、兼六園までやって来た。軽く観光しながら歩いて1時間くらい。普通に歩いたら20~30分というところだろうか。逆に言うと、適当に歩いていても見どころが見つかる街なように感じた。


・胸キュンスポット発見

特に、大典太光世を見ようという人にとっては和オーラが漂うスポットがポツポツあるから歩くのも良いかもしれない。個人的には石浦神社が良かった。金沢最古の宮で、織田信長公・菅原道真公を祀った社殿もある。ひー。


そんな石浦神社と兼六園の間の坂を上っていくと、石川県立美術館があった。飽きない旅路でした。



・57年ぶり

大典太光世が展示されている「加賀藩前田家の名刀ー天下五剣の名宝「大典太光世」が石川にー」は2階の展示室のようである。階段を上ってみると……

等身大刀剣男士のパネルが。『刀剣乱舞』には詳しくないため、大きい方が大典太光世ということしか分からないが、小さい男の子キャラも展示されている刀のひと振りなのだろう。

そう、本展示では、大典太光世(「国宝 太刀 銘 光世作(名物大典太)光世 」)だけでなく、国宝の富田江(「国宝 刀 無銘義弘(名物富田江)江義弘」)と重要文化財の前田藤四郎(「重文 短刀 銘 吉光(名物前田藤四郎)吉光」)も展示されている。石川県立美術館によると、この3振りが一堂に展示されるのは旧・石川県美術館以来57年ぶりのことだという

・この形式ならではの良さ

個人的にこの展示形式ならではの良さに感じたのは、見比べられる点。特に富田江と見比べると、大典太光世のデザイン的な異質さが分かりやすい。刃紋の乱れとしなやかさという日本刀らしい美しさを持つ富田江に比べ……

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大典太光世は叩き潰すのかと思うくらい刀身の幅が太く重量感がある

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また、「樋(ひ)」と呼ばれる日本刀の刀身に彫られる細長い溝がやたらデカく、ぼっこり掘られている。今回の展示はかなり近くで見られるもののため、見比べた時に素人目にも大典太光世の異質な存在感がより際立っているように思う

美しさだけではなく、そんな異質なオーラがあるからこそ、姫の病気を治した霊剣の伝説にもロマンを感じずにはいられない。当時の人もこういった気持ちだったのかも。



・前田家では藩主以外は手をふれることができなかった

なお、伝説について詳細を説明すると、様々な権力者の手を渡り歩いた大典太光世が、豊臣秀吉から前田利家に下賜された時の話。利家の四女・豪姫が病気になった際、利家が大典太を秀吉から借りて豪姫の枕元に置くとすぐに病気が治り、秀吉に返すと病気が再発し、それを繰り返したため、三度目に秀吉が利家に与えたと伝えられている。

石川県立美術館によると、前田家では特別の霊力をもった刀として、藩主以外は手をふれることができなかったらしい。そのため、県立美術館でも展示されたのは、1983年の開館時、そして北陸新幹線の金沢開業を記念した2015年の特別展「加賀前田家 百万石の名宝」の2回のみなのだとか。

ちなみに、展示室は撮影禁止なので、記事で使用している画像は特別に石川県立美術館に提供いただいたもの。しかし、実際行ってみるとこの画像の距離感よりもっと近くで見られる。多分20cmくらい。ガチで目の前だった

ゆえに、現地でしか感じられないものは確実にあると思う。展示期間は5月26日までと長いので気になる方はぜひ足を運んで感じて欲しい。その霊力を。



・今回紹介した博物館の情報

店名 石川県立美術館
住所 石川県金沢市出羽町2−1
営業時間 9:30~18:00(展示室への入室は17:30まで)
展示期間中の休館日 2024年4月16日~4月20日

参考リンク:石川県立美術館「加賀藩前田家の名刀-天下五剣の名宝「大典太光世」が石川に-
執筆:中澤星児
Photo:Rocketnews24.
画像提供:石川県立美術館
※基本的に当サイトの画像はスクショやキャプチャなど、あらゆる手段による転載は禁止です。その上で、今回の刀は公益財団法人前田育徳会の所蔵品であり、画像は石川県立美術館から特別に提供されたものなので、転載等は絶対におやめください。

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