映画『もののけ姫』が2025年10月24日より、期間限定で全国のIMAX劇場にて上映開始した。しかもスタジオジブリ監修の、4Kデジタルリマスター版である。

公開当時(1997年)母親と、同級生と連れ立って見に行った覚えのある筆者。もちろんその後も、幾度となくテレビやレンタルなどで見返してきた。

しかし再び、映画館で同作を見るとどのような気持ちになるのか。28年ぶりに、映画館で『もののけ姫』を浴びてみた。


・あの日の思い出

『もののけ姫』を映画館で見た当時、筆者は10歳かそこら。ジブリと言えば金曜ロードショーでやっている、トトロやナウシカ、ラピュタに魔女宅。ぽんぽこは映画館ではないが、近所の会館でスクリーン上映されていたのを見たような気がする。

火垂るの墓はさて置いて、全体的に世界の厳しさを教えてくれつつも、どちらかと言えばほんわかした優しいアニメを作ってくれる会社という印象だった。

当時はもちろん今のようにネットなんてものは流通しておらず、テレビで宣伝していて話題そうだし、なによりも安定のジブリ。そんな軽い気持ちで、親に連れて行ってもらった。

ちょうど同級生の女の子と、その子の妹も見たいということだったので計4人で、それほど奇麗ではない映画館に見に行った覚えがある。なんとなくタバコの匂いも消え切れていない、そんな館だった。

リラックスして見始めたはいいが、開始数分で戦慄(せんりつ)したことは想像に難くないだろう。同級生の妹に至っては軽くパニックを起こしており、筆者の親に何やら訴えかけていた。

一応皆そろって最後まで席を立たずに見切ったが、小学校低学年の我々には、かなりショックであることに違いなかった。以後、ジブリ作品への向き合い方は激変。

『もののけ姫』に限らず、じっくり熱心にジブリ作品を見るようになる。多くのことを学び、大なり小なり人生にも影響を及ぼし、大人になった今でもずっと大切な存在だ。


・新たな思い出が

そうは言うものの、数えきれないほど繰り返し見ているし、なんならキャラクターたちの台詞も大体覚えているし。擦れた大人になった今、映画館で見たからと言って、心が大きく動くことはなかろうと高をくくっていた。

ところがどっこい。大画面で浴びる『もののけ姫』の破壊力はとんでもなく、なんならば子どもの時に見たよりも衝撃的だった。

それは筆者だけではないはずで、終了後もほぼ満員のIMAX劇場は静まり返り、しばらく誰も立ち上がらなかったことが証明していたように思う。


視覚面で言えば、4Kデジタルリマスターの効果は絶大。新作と言っても過言ではないほど、いやそれ以上で、CGがあふれる現代においても到達できない域がそこにあると感じた。

また物語面でも、改めて心に響いてならない。分断化が進む時世だからこそ、というのもあるのだろうか。アシタカの「共に生きよう。」という言葉が未だかつてなく、ずしんと来た。

不安が募って仕方がない世の中にあっても希望はあるなと、しみじみである。しかしまさか新たな『もののけ姫』の思い出が、令和になって刻まれようとは。

『もののけ姫』を見たことがない、という人のほうが少ないかもしれない。けれども今一度、視聴できる環境にあるならば、このIMAX上映を逃すべきではないだろう。


・今しか感じられないものを

感動冷めやらずでスクリーンを後にしてすぐ、売店へと駆け込んだ筆者。いつものようにパンフレットと、ポスターもあったので手に取り購入して帰路に就いた。

自宅でぱらぱらとパンフレットを眺めていて、はたと気付く。「見たことあるな……?」それもそのはずで、奥付には1997年とある。


つまり当時のもの、そのものではないにせよ、過去作の復刻パンフレットだったのだ。今でも「TOHO animation STORE」などで購入できるし、なんならその件について筆者は当サイトで紹介したこともある。


生憎(あいにく)筆者は引っ越したばかりであるため、段ボールをひっくり返す必要があるが、いずれにしても同じものをもう1冊持っているという訳だ。

道理で見覚えがあると思ったが、それでも『もののけ姫』を映画館で観終わった後に、映画館で同作のパンフレットを購入できるという経験はそうそうないだろう。

公開当時は親にねだってパンフを買ってもらうことをしなかったので、これはこれで貴重な体験だと、少し嬉しくなってしまった。

いつの時代も新鮮な驚きと感動を与えてくれることを、再確認できた映画『もののけ姫』のIMAX上映。あの時子どもだった人も大人だった人も、生まれていなかった人も。

今この瞬間だからこそ味わえる『もののけ姫』を、せひこの機会に堪能してほしい。

参考リンク:『もののけ姫』4Kデジタルリマスター【IMAX上映】
執筆:K.Masami
Photo:Rocketnews24.

▼パンフは自宅に2冊あるくらいでちょうど良い(もう一冊は段ボールの中)

▼当時のグッズも再販してくれないかしら。こだまシャーペンは持っていたなあ

▼ポスターも買いました。新ポスター版の商品も出してほしい