当サイトの記事を熱心に読んでくれている読者なら、もしかしたら覚えているかもしれない。私がウーバーイーツ(UberEats)で発見した油そば屋「珍宝亭」を。

1番人気は「珍宝味玉油そば」だということや、直接お店に向かっているときに警官から職質されたエピソードについて紹介してきたのだが……その珍宝亭に異変があった。

なんと、ウーバーイーツ上でどれだけ探しても珍宝亭が表示されなくなったのだ。これはもしかして閉店!? イヤな予感がした私は現場に急行した。

・現場で見たもの

単刀直入に結論を言おう。かつて珍宝亭があった場所は、まったく別のお店になっていた


もう少し詳しく言うと、こういうことだ。珍宝亭はあくまで出前アプリで表示される店名で、リアル店舗では別の名前で営業していたのだが、現場に行ってみると看板には全く知らない店名が書かれていたのである。アプリ上で表示されなくなったことと合わせて考えると、閉店した……ってことだろうか?

ただ、生粋の珍宝亭ファンとしては諦めきれない。あの油そばはマジで美味いんだ。どこかでまた店名を変えて営業しているのではないか? そう思いながら周囲を見渡すと、近くに営業中の中華料理店があった。


珍宝亭のすぐ近くだから、なにか知っているかもしれないと思い即入店。すぐに男性スタッフが「いらっしいませ」と声をかけてくれた。「テイクアウトもやってますか?」と聞いてみると、「大丈夫ですよ〜」とのこと。

アクセントから考えると、中国出身のスタッフだろうか? 見るからにおおらかで、話しかけやすそう。とはいえ、いきなり聞くのもアレなので、メニューを見て気になった唐揚げなどと注文。

料理ができ上がり、持ち帰りの唐揚げなどを手渡してくれたところで質問してみることに。



「すみません、つかぬことをお聞きします。こちらのお近くにラーメン屋さん兼カレー屋さんがあったと思うのですが、今どうなっているかご存知ですか?」


店員さん「なんていうお店ですか?」


「看板に書かれていたのは☓☓☓って名前です。デリバリーとしては『珍宝亭』として営業されていたんですが……」


――記憶を掘り起こしているような表情の店員さん。心当たりがあるのだろうか? どっちだ? 一体どっちだ? ……と思っていたら、ついに店員さんが口を開いた。


店員さん「すみません、ちょっと分からないですね」


――この瞬間、珍宝亭の手がかりは消えた。無念。諦めきれない……が、これ以上スタッフに聞いても営業の邪魔になるだけだろう。

私は「わかりました。ありがとうございます」とお礼をいい、購入した品を持って店を出た。



手にした袋からはいかにも中華って感じの良い匂いが漂っているが、それで気が晴れるものではない。

珍宝亭の1番人気メニュー「珍宝味玉油そば」を味わうことがもうないのかと思うと、なんとも言えない寂しさが込み上げてくる。


今でもはっきり覚えているぞ。「珍宝味玉油そば」のデカいチャーシューを。あれに食らいついたときの幸福感を。

トロトロの半玉と混ぜて、テカテカになった状態で食べると激ウマってことも覚えているし、妻と2人でシェアして食べた日のことも覚えている。育児に疲れて晩ごはんの準備が面倒なときにはよく「今日は珍宝味玉油そばにする?」と妻に聞いたもんだ。


そんな珍宝亭の思い出をかみしめるように、家までの道をひたすら歩く。あぁ、珍宝亭……あぁ、珍宝亭……。一体どこに行ってしまったというのか?


おわり


執筆:和才雄一郎
Photo:RocketNews24.