油そば屋「珍宝亭」。以前に本サイトで「1番人気のメニューがネーミング的に超危険だとご紹介したのだが、まだまだ謎が多い店である。なにより、店名が気になりまくる。

そこで当編集部は、「珍宝亭に関しては追加調査が必要」だと判断。お店の実態を把握するため、私は取材にあたっていた……が! 結果的にとんでもない悲運に泣くことになったのだ。以下で報告しよう。

・珍宝亭とは?

以前の記事を知らない人のために簡単に説明しておくと、「珍宝亭」とはウーバーイーツにある店名。お店自体は、東京の中野区弥生町にあるらしい。

この珍宝亭、デリバリーだけじゃなくテイクアウトにも対応している。繰り返す、珍宝亭は持ち帰り可だ。ってことは、テイクアウトのために店を訪れるお客さんもいるわけで、ウーバーイーツ上ではお店の地図も表示される。


かなり便利……と思いきや、そのウーバーイーツマップが使いにくいのなんの。Googleマップとはケタ違いの不便さで、土地勘の無い私には場所がいまいち分からない。

あとで分かったことだが、実際にテイクアウト注文すると正確な住所がバッチリ表示される上に、地図の使いやすさも格段に向上する。しかしそんなことを知らない私は、「1度食べたことあるからまぁいいか」と考え、注文せずに店の場所を特定しようと頑張っていた。これがそもそもの間違いだった。

そして2番目のミスは、夜にチャリで店に向かったこと。チャリだと徒歩より格段に速いのだが、ある程度進んだのちにポケットからスマホを取り出し場所を確認するのはかなり面倒くさい。


それでもなんとか「大体このへんかな?」というエリアは目星をつけた。が、あたりには飲食店が多く特定できるまでには至らない。必然的に、私は周囲を何度も行ったり来たりした。そのとき……! 警察官から声をかけられたのだ。


警察官「お兄さん、ちょっといいですか?」


「はい」


警察官「今どちらに向かってます? ご自宅に帰るところですか?」


「いや、晩ごはんを買いに」


警察官「スーパー?」


「いえ、テイクアウトです。『珍宝亭』っていう」


警察官「珍宝亭?」


──その瞬間、私と警察官の間に微妙な空気が流れた。と同時に、私は警察官が何か重大な誤解をしないか心配になってきた。もし誤解があった場合、職質の時間が長くなるかもしれないし、最悪「ちょっとパトカーまで来て」となるかもしれない。

ゾッとした私は、不穏な空気をかき消すように出来る限り喋りまくった。


「珍宝亭って、油そば屋なんですよ。ちょっと前にウーバーイーツで頼んだら、美味しくて。テイクアウトもやってるみたいなので、店の場所を確認しておこうと思った感じです。この近くにあるはずなんですけど、地図が分かりにくくて。あ、そういえばちょうどいいです。お巡りさん、店の場所ってご存知ないですか?」


──と言いながら、私はスマホの画面をお巡りさんに見せた。すると……


警察官「うーん。まぁ、たしかにこのあたりですね。ちょっとその前に自転車の登録番号を確認させてもらっていいですか?


──いや、軽く流すなや! と心の中で叫んだが、珍宝亭のことを深堀りされなくて逆にラッキーだったのかもしれない。警察官が無線で番号照会しているのを聞きながら、私はそう思った。



数分後、警察官は「ご協力ありがとうございました」と言って解放してくれた。ただ、自転車を押している私の背中に視線を感じる。おそらく、警察官は「こいつマジで何してんの?」と思いながら見ているのだろう。

これ以上怪しまれたら面倒だ。私はウロウロするのをストップして、「恐らくここかな?」という店に飛び込んだ

そこは割とガチ目なインド料理屋。「珍宝亭」とはどこにも書かれていないが、ウーバーイーツ上の店名と実店舗の名前が一致しないことなんて山ほどある。また、以前お伝えしたように、1つの店で様々な料理をデリバリーしているケースも同じく山ほどある。

つまり、名前が一致しているかどうかは、あまりアテにならないのだ。状況的には地図だけが頼りで、あとはカン。そのカンが、「見つけたかも」と言っている。

確信半分、「マジで店を探しているだけだよ」と警察官に分かって欲しい気持ち半分で、私は店の扉を開けた。すぐさま、店員さんが「お1人さまですか?」と聞いてくる。なんだか申し訳なさを感じながら、私は言った。


「すみません、テイクアウトをしたいんですが……。こちらって、ウーバーイーツで『珍宝亭』という名前のお店だったりします?


店員さん「ち、ち……なんですか?」


「珍宝亭です」


店員さん「ちょっと分からないので、店長を呼んできます


──とんでもないことになってしまった。私の珍宝亭への情熱が、警察官とインド料理屋の店員さん&店長さんを巻き込んでしまっている。ただ、この店が珍宝亭であれば万事解決。来い! 来い! と祈りながら、私は奥から現れた店長さんに再び尋ねた。


「こちらのお店って、ウーバーイーツでは『珍宝亭』という名前で営業されてたりします?」


店長さん「いや、やってないです」



「え?」という空気に耐えきれなくて、私はとりあえずカレーをテイクアウトすることにした。いま振り返れば店の写真くらい撮っておけばよかったと思うが、ショックでその余裕はない。

会計を済ませると、すぐさまカレーを前カゴに入れてペダルを踏む。香辛料の香りが鼻に飛び込んできた。食欲がそそられまくる匂い。「家に帰ったら最高のカレーが待ってるぞ〜」ってことだけを考えるようにして、私はチャリを漕ぎ続けた。


おわり


執筆:和才雄一郎
Photo:RocketNews24.
ScreenShot:Uber Eats(iOS)
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▼なお、数日後に私はリベンジを果たし、珍宝亭の場所が判明。私が勘違いした店から数十メートル離れたところにあり、偶然にもカレー屋としての顔も持っていた。

▼今回もまた油そばは普通に美味い!

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