
常日頃、冷やしラーメンのことを考えている。ラーメン大国と呼ばれて久しい我が国だが、意外にも冷やしラーメンはあまり定着していないように思う。
底知れぬポテンシャルを秘めていながら、人々の馴染みのメニューにまで上り詰めてはいない。冷やしラーメン好きとしては日夜そのことに心を痛めている。もっと自分の将来のことなどを考えた方がよいのかもしれないが、つい冷やしラーメンに心がとらわれてしまう。
しかし、このたび2024年7月8日に、そんな憂いの日々を終わらせうる新商品が颯爽と登場した。その名も「日清氷撃ラ王 柚子鶏塩」である。
名前が表す通り、同商品はカップラーメン「ラ王」の「冷やし版」である。公式サイトによれば、「ラ王」ブランド史上初の試みとのことだ。加えてその試みに至った理由として、「夏の暑さが厳しさを増す中、年々冷やしラーメンの需要が高まっている」との内容が書いてある。
筆者はその文章を読みながら、首が取れて彼方に吹き飛んでいきそうなほど頷いた。そう、そうなのである。需要は高いはずなのである。「夏と言えば冷やしラーメン」くらいになってもいいはずなのに、なし崩し的に冷やし中華にその座を奪われている。
おかしい。こんなことがあっていいはずがない。もっと世界の戦争などに憤った方がよいのかもしれないが、とにかく今こそ体制変革の時である。「氷撃ラ王」にゲームチェンジャーとしての可能性を見出した筆者は、激情とともに同商品を購入した。価格は税込285円だった。
入手した実物のパッケージには、調理方法が記載されていた。通常のカップラーメンのように熱湯とかやくを入れて6分待ったあと、湯切りをし、さらに冷水で締めてから、氷150グラムと液体スープを入れ、最後にもう一度冷水を注いで完成である。
「やや面倒臭いな」と思った読者の方もいるだろうが、正直筆者も同感である。とはいえ、二の足を踏むつもりなど更々ない。自宅に氷を量るための道具がなかったので、わざわざデジタル計量器を購入したほどには気合い十分である。その点お含みおき願いたい。
途中、液体スープの「フタの上で温めないでください」という旗上げゲームめいたトラップに惑わされたりしながらも、「氷撃ラ王」の完成にこぎつけた筆者は、出来上がった光景を前にして息を呑んだ。
あまりにも、想像以上に、涼やかだったからである。透き通るようなスープが、そこに浮かぶ氷の輝きが、凝り固まったカップラーメン観を打ち砕く。まさしく「氷撃」である。
そして、これぞ冷やしラーメンである。何とも美麗な風情につられて箸を取り、麺をすすると、口に広がった味わいは一層その思いを強くさせた。
スープに溶け込んだ鶏ダシの旨味が、豊かな柚子の香りをまとい、確かな塩味の推進力を得て、喉越しの良い麺に乗って吹き抜ける。ああ、これだ。この爽やかさとコクが冷やしラーメンの醍醐味だ。この清らかに冴え渡る風味を求めて食べるのだ。
流石の「ラ王」と言うべきか、「冷やし」に舞台を移したとて、一切クオリティは揺らいでいないし抜かりない。「柚子鶏塩」というチョイスも絶妙で、「氷撃ラ王」のデビューを印象付ける上で最適であると思うし、冷たさも相まって夏の暑い日に打ってつけでもある。
密かに「氷が溶けることによって味が薄くなりはしないか」と心配していたのだが、食べ進めるにつれて風味がわずかに落ちるのは感じたものの、クオリティに大きな影響はないレベルだった。「澄んだ味わいに夢中になって箸が進むので全く気にならない」とも言える。
強いて欠点を挙げるとするなら、やはり準備に少々手間がかかる点だろうか。しかしそれを補って余りある仕上がりであることは自信を持って保証できる。興味の湧いた方は是非この機会に、臆せず冷やしラーメンの世界に足を踏み入れてみてほしい。
逆に言えば、もしその欠点を克服した「冷やしカップラーメン」が現れれば、もはや敵なしということでもある。日清食品には大いに期待せざるを得ないし、「冷やしカップラーメン競争」が巻き起こることも夢見ずにはいられない。
これから先、冷やしラーメンの世界にどんな未来が待っているのか。楽しみで夜も寝られない。もっと宇宙の謎などについて考えた方がよいのかもしれないが、こればかりは仕方ない。
参考リンク:日清食品 公式サイト
執筆:西本大紀
Photo:Rocketnews24.
西本大紀










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