
子供の頃、「大人になると食べるくらいしか楽しみがない」と誰かが言ったのを聞いて「そんな馬鹿な」と思ったものだが、大人になった今、その誰かの気持ちがわからないでもない。子供の頃より食の楽しみが身に沁みる。
現に先日、愛するラーメンチェーン「天下一品」と日清がコラボし、まぜそばを新発売したとの情報をネットで見た時、筆者は歓喜に震えた。画面を前に部屋で一人小刻みに揺れる筆者を子供の頃の自分が見たら何と思うかわからないが、これはこれで味のある人生である。
そんな「人生の味」こと「天下一品」の新たな形に触れるべく、筆者は同商品を実食することにした。
改めて説明すると、2025年9月1日に日清食品チルドが発売した同商品の名は、「天下一品 濃厚鶏白湯まぜそば」という。1パック2人前のチルド麺であり、希望小売価格は税別570円となっている。
日清食品グループの公式サイトによれば、「天一」を象徴する「こってり」の味わいを、同店監修のもと、店頭にはないオリジナルメニューのまぜそばにアレンジしたとのことである。「天一」の熱烈なファンとして、これをみすみす見逃す手はない。
このまぜそばが、元の「こってり」ラーメンにはない魅力を見せてくれるかもしれない。そうでなかったにせよ、どんな姿になっても「天一」を愛し抜く。無駄にプロポーズめいた決意とともに、筆者は実物と相対した。
パッケージを開封すると、麺とタレ、加えて味変用の「にんにく薬味風調味料」が入っていた。調理方法は簡単である。まずはタレを袋のまま、器に溜めた熱湯の中で温めておく。
並行して、麺の方も熱湯でほぐしながら茹でる。4分半後、茹で上がった麺をざるで湯切りし、丼に入れる。
タレをかけてよく混ぜ、仕上げに好みの具材を盛りつければ完成である。間を置かず、筆者は麺をすすった。大人の楽しみとはいえ、大人が理性的とは限らないのである。
そして麺をすすった瞬間に、口の中で精妙な調和が始まった。「こってり」ラーメンとは異なる太麺に、「こってり」ラーメンを彷彿させる、独特のとろみのあるタレが絡む。馴染み深い鶏ガラのコクと野菜の旨味が、もちもちとした豊かな弾力に乗って躍り、味覚を喜ばせる。
見事な仕上がりが、舌鼓を誘ってやまない。まぜそばの太麺と「こってり」の味わいが、ここまで緊密にはまるほど相性が良いとは思っていなかった。そこに着目する発想力も、それを実現させる手腕も流石である。この驚きは本商品ならではだろう。
だがしかし、筆者は舌鼓を打ちつつも、わずかな不満を拭えずにいた。とろみがやや物足りない。「彷彿させる」とは書いたが、よく似ていてもやはりそのものではない。あのポタージュのようなドロドロ具合には至っていない。
何故なのかとしばらく考えた結果、まぜそばにはスープがないという当然の事実に遅まきながら思い当たった。大人が賢いとは限らないのである。
目の前の商品が「天一」の看板を背負っているからには、「天一」ファンとしては本能的にあのドロドロ具合を期待してしまう。まぜそばにそれを求めるのが酷だとわかっていてもである。
一方で、このまぜそばに強く惹かれていることも確かに揺るぎない。まぜそばの姿になった「天一」のことも愛している。前述のプロポーズは嘘ではない。プロポーズだったのかは謎だとしてもである。
ともあれきっと日清ならば、いずれ一層驚くべきクオリティを見せてくれるに違いない。ひとまずのところ、「天一」の新たな形に対する所感は以上にして、その時に再び筆を執ることにする。
かくしてまた一つ、食の楽しみが増えた。部屋で一人頷く筆者を、子供の頃の自分が見たら何と思うか知らないが、これはこれで出会いに満ちた人生である。
参考リンク:日清食品グループ 公式サイト ニュースリリース
執筆:西本大紀
Photo:RocketNews24.
▼店頭で見慣れた「にんにく薬味」風の調味料も、まぜそばとの相性良し
西本大紀









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