かつて短期の旅行であればビザ無しで行けた中国(※ 日本人の場合)だが、コロナ禍以降は入国条件が非常に厳しくなり、ようやく隔離期間なしで観光客が入国できるようになったのは昨年のこと。そして現在もビザが必須で、中国旅行の大きなハードルとなっている。

そのビザ取得の過程がけっこうハードだという話は、海外旅行好きなら一度は耳にしたことがあるのではないだろうか。とはいえ不可能でないなら、チャレンジしたくなるのが人情というもの。

そんなチャレンジ精神から中国ビザ取得に挑戦した結果……結論を先に述べると「本気で中国へ行きたいなら全然やれる。そうでもないならスーパーダルい」って感じであった。一連の流れをお伝えしよう。

(※ 本記事の内容は2024年6月5日時点の情報です)

・先にチケット取らなきゃダメ問題

現在、中国ビザ申請に必要なもの(観光ビザの場合)は以下のとおり。私の経験から「用意するべき順」に並べてみた。


・往復の航空券
・宿泊先の予約表
・顔写真1枚
・オンラインで記入したビザ申請表をプリントアウトしたもの
・パスポートのコピー
・パスポート原本


まず第一に、中国ビザは「往復の航空券」を購入してからでないと申請できない。

中国ビザ申請サービスセンターのサイトには「(申請材料が全て揃っている場合)出発の1カ月前にはビザの申請を提出したほうが良いでしょう」とあるのだが、それ以前に、航空券がなければ申請材料の最重要項目『ビザ申請表』を作成できない。

そもそも「申請材料を全て揃えることが割とハード」というのがコトの問題であるため、この理論でいうと「1カ月後のチケットを購入してもビザ発給が間に合わない可能性がある」ことになる。

つまり「出発日までにビザが取れるかどうか分からない状態で航空券を購入しなければならない」わけで、多くの人がやる気を失うのはこの段階だろう。

が、しかし。SNSで情報収集すると「申請から1週間程度でビザが発行された」という投稿をいくつも見つけることができる。

しかも公式サイトをよく読み込むと「申請資料が要求通りにすべてそろっている場合、一般には4営業日でビザが発行される」という記述を見つけることができ、先ほどの「出発1カ月前には申請したほうが良い」という話と矛盾する。

結論からいうとSNSで拾った情報は本当で、これは「公式サイトの作りがやや不親切」であるというほかない。結果的に情報弱者や調べる気のない者をふるいにかけている……と言えなくもないだろう。

もちろんケースバイケースだと思うので自己責任でお願いしたいが、現状、出発日まで10日くらいあれば、本気を出せばビザは取れる可能性が高いとみていい。もちろん、なるべくなら余裕のある旅程を組むことが望ましいが。



・写真は自撮りがオススメ

航空券とともに宿泊先の予約証明も必要。ぶっちゃけ言うと、コレに関しては仮予約でも審査はパスできる。どうしても申請時までに宿泊先を決められないという人はキャンセル可能な宿を予約し、予約表を印刷して提出すればOKだ。


そんなことより問題は顔写真である。詳しくは公式サイトをご確認いただきたいが、コレ、規定がメチャクチャ厳しい。ビザ申請表にダウンロードするデータと、プリントアウトした写真の両方が必要。規定を僅かでも満たさなければ、オンライン申請を進めることができない。

何度もの撮り直しのすえ、どうにかOK判定を得た写真がこれ。なんとなく美人っぽいノリで売っている身として、死んでも世に出すわけにいかない仕上がりになった。フォトショップなどで明るさや色調を調整するスキルのある方には “自撮りしてコンビニプリント” をオススメしたい。自信がない方は写真館へGO!



・事前のオンライン申請必須!

さて旅券とホテルと写真を準備し終えたら、いよいよ申請表の記入である。

個人情報、旅行期間、滞在先といった基本的な項目はもちろんのこと、職歴、学歴、果ては家族構成なども記入する必要がある。なぜウチの両親の生年月日を……? という気もしなくないが、先が長いので無心で進めよう。

記入し終えた申請表をダウンロードのうえプリントアウトし、パスポートのコピーをとったらようやく事前準備完了! 郵送申請は受け付けていないので、最寄りの中国ビザ申請センターへ向かおう。すでに疲れ切っている自分がいるが、中国へ行くためなら仕方ない。


・意外と優しい世界

ってことで国際展示場駅へやってきた。東京の中国ビザ申請センターは東京ビッグサイトからほど近い、有明フロンティアビル内にある。

駅から徒歩5分くらい。

入り口で番号の書いた紙を渡され、モニターに自分の番号が表示されるのを待つ。20ほどある窓口はフル稼働状態。これほどの苦労をしてでも中国へ行きたい人、結構多いんだなぁ。

30分ほど待って順番がきた。手際よく書類を確認する窓口の人(中国人)。幸いにも、私の書類に致命的な不備はなかったようだ。私が質問の意味を取り違えたことによる記入ミスがいくつかあったが、手書きで修正するよう指示され、ことなきを得た。

こんなことを言っちゃアレだけど、ビザ取得にあまりに労力がかかるため、私は少しだけ「積極的にビザを発行する気がないのでは?」と感じていた。が、私の記入ミスを修正ペンで丁寧に消してくれる窓口の方を見ているうち、決してそんなことはないのだと気づく。先方にビザを発行する気はある。ただ、手続きが異様にめんどくさいだけだ。



・が、突然のピンチ

そんなこんなで順調に完了するかに見えた私のビザ申請。ところが……ここで予想外のピンチに見舞われてしまった。

なんと、私の職業たる「ライター」を、窓口の方がご存知ないらしいのである。また私が会社員ではなくフリーランスであることも、さらに事態をややこしくした。フリーライターってそんなに珍しい仕事なの!?


窓口の人「ライターとは何ですか?」

──文章を書く仕事です

窓口の人「あなたは作家ですか?」

──そう言われると、そうかもしれません

窓口の人「どんな文章を書いていますか?」

──インターネットネットニュースを書いています

窓口の人「インターネットニュースとは何ですか?」

──こんな感じのヤツです(と、言いながらロケットニュースのサイトを見せる)

窓口の人「……あなたは作家ではないですね」

──そう言われると、そうかもしれません

窓口の人「どんな内容の文章を書いていますか?」

──ええと、色々な内容の記事を書いています

窓口の人「具体的に言ってください」

──たとえば食べ物とか、音楽とかを紹介する記事を……

窓口の人「あなたは会社員ですか?」

──いや、だから違いますて


……といった押し問答が20分ほど続き、あわや申請却下か……!? という緊張感が漂ったものの、最終的に「私は食べ物と音楽を紹介する仕事をしています」という宣誓文のようなものを書類に書き込むことで、私はどうにかピンチを脱することができたのだった。メッチャ汗出たわ。食べ物と音楽を紹介する仕事って何やねん。

窓口の方はおそらく全員中国人だと思われ、皆さんかなり日本語が達者であられるのだが、ちょっと複雑な話になると通じない場面がある。説明しにくい職業の方は、あらかじめプレゼンの仕方を考えておくことが望ましい。



・本気の奴だけかかってこい

いやはや一時はどうなるかと思ったが、申請は無事に受理され、私は窓口にパスポートを預けて帰路についた。

私のビザ受取日は申請日の5日後。「4営業日でビザが発行される」という情報は正しかったらしい。

そして私は再びビザ申請センターを訪れた。仕方ないこととはいえ、1週間に2度も国際展示場に行くって結構しんどい。

再び番号の書いた紙を渡され、今度は1時間近く待った。今回申請した観光ビザ(普通申請・シングル)の料金7750円を支払い、パスポートを受け取る。

かくして私は、晴れて中国ビザを取得したのだった。


今回の一件を振り返った感想は「めっちゃめんどくさいけど、やろうと思えばやれる」である。思えば最も時間をさいたのは事前の情報収集であり、もしまた申請をすることがあれば、次回は断然スムーズに行えるはずだ。また、このような手続きが煩わしいという方は代行業者を利用するテもある。

ちなみに……ここまで熱弁しといてナンだが、近い将来、中国は日本人の短期入国に対するビザ免除政策を再開するとの見方が濃厚である。本記事で記した内容も、そのうち過去の情報となるだろう。

そんなワケなので「あえて今、絶対に中国に行きてぇ!」という強い想いがないのであれば、何もわざわざビザ取得チャレンジを行う必要はないかもしれない。現場からは以上だ。

参考リンク:中国ビザ申請センター
執筆:亀沢郁奈
Photo:RocketNews24.

▼中国ビザ申請センター内にはコピー機、証明写真撮影機(有料)が設置されているほか、近くにコンビニもあるので、ある程度の不備であれば現場で補うことが可能。でも「ビザ申請表の記入忘れ」とかのレベルだと、ちょっと厳しいかもしれない。場合によっては出直す勇気も必要だ。